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彗星発、永劫回帰線(マーサズ・ヴィニャード・ブレイクスルー・スターショット) ⑩ スターショットの光芒・攻防・興亡(前夜)
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■ 中国大陸 アラシャン盟エチナ旗(承前)
エチナ旗の食肉物流基地シビー・ハーン駅前には反政府組織ネルグイが招集した遊牧民が銃撃戦を展開していた。
「緑を返せ。オアシスを返せ!」
彼らは横断幕を広げ、駆け付けた地元警察軍をなぶり殺している。
「故郷を返せ! 俺たちから略奪した土地を返せ!!」
女も子供も身の丈に合った銃器で警察車両をハチの巣にしたり、ドイッチェラント系商店を破壊する。
警察官の装備品に不足はない。おっとり刀でなく、首都ゲルマニアでみっちり訓練を受けた猛者たちが応戦している。
だが、一発も当たらないとはどういう事だ。一人、また一人と味方は数を減らしていく。
防衛線はじわじわと、だが着実に後退している。
シビー・ハーン警察はコンテナヤードの正門にパトカーを連ねた。さらにありったけの護送車を横一列に並べてバリケードを築いた。その区画はとりわけ重要な貨物を扱う場所で、普段は国家社会主義女性同盟(NSフラウェンシャフト)の党員向けの荷物を捌いている。それだけに普段なら警戒厳重であるはずだが、今日は党指導者ゲルトルート・ショルツ=クリンクの生誕祭とあって誰もいない。シビー・ハーンの傀儡は瀟洒な邸宅でかまびすしい騒音をまき散らしているのだろう。
「まったく。NSの女どもときたら!」
警察署長グリンダ・シュタインヘイガーは操車場奥の政治将校宿舎を恨めし気に眺めた。異世界分裂難民たちの反乱は風物詩になっているが、例年より勢いを増している。そして、特筆すべきは男性が矢面に立っている事だ。女たちは第二次世界大戦に嫌気がさして、「大分裂」を引き起こした。その効果は個々人に対して選択的に働いたのではなく、包括的なものであったため、不随意的に転移した輩が騒ぎを起こしている。主流派はナチスドイツのシンパだ。それは可及的速やかにエーデルヴァイス海賊団が始末した。除去できない層がいる。
男性たちだ。
ドイッチェラントはナチスの母子援助運動を継承しているから、育児出産を大切にする。
厳しい産児制限のもと、世界戦争を招いた教訓から男性の権利は著しく削がれているが、最低限必要な文化生活は担保されている。その彼らが育児を放り出して銃を構えているのだ。
途轍もなく奇妙な事が起きている。
グリンダは異変を余すところなく世界首都ゲルマニアに伝えた。
■ TWX1369
枢軸特急はバヤンノール市からいったん、異世界隧道に入った。炎天下のゴビ砂漠を迂回してエチナ旗に入る。
「重水素の確保は大丈夫かしら?」
ハーベルトは偏頭痛をこらえながら訊いた。望萌もぐったりしている。空調は適温だし、火照った素足を冷やしてくれるウイルキンソン靴下も順調だ。彼女たちの衰弱は暑さでなく重水素二量体病の進行に起因する。
「ええ……いつもより、かな~り多めに積んでます。よっこらしょ」
彼女はよろめきながら席を立った。眠そうな目で壁伝いに歩く。見かねたハウゼル列車長が肩を貸した。
「あなた。大丈夫?」
「ええ……何とか……積荷目録の閲覧はわたしの虹彩認証でないと」
望萌は這う這うの体で制御卓に就いた。あくびを噛み殺しながら初期画面を叩く。
「だめよ! あなた。後桜鳩天皇陛下に対独協力行為をお願いしましょう。もっと重水が必要だわ」
ハーベルトはさっそく、白紙委任状をフル活用して、大東亜共栄圏に貨物輸送を依頼した。
「重水をじゃぶじゃぶ増やして癒せるうちはいいわよ。対処療法が効かなくなったら……」
望萌がタンク車のロックを解除して、車内に重水を循環させる。新緑の候を思い出すような噴霧が天井から降ってきた。閣下が「あーっ」と伸びをする。萎れていた祥子と風吹が生気を取り戻し、望萌もガバッと跳ね起きる。
「ねぇ。ハーベルト。ボクたちは甦ったよね。どうして病気は治らないの?」
もっともな質問だ。日本人の死生観に照らせば、再生は若返りと健康体を取り戻すイメージがある。
「遺伝病を取り除くようにはいかないわ。病原を探ろうにもシュワニーシーは滅びてしまった」
やるせない表情で祥子を睨むハーベルト。
「大東亜共栄圏には仙薬があるといいます。不老長寿を約束してくれる養老乃瀧という場所もあるとか」
旅なれたハウゼルが耳より情報をもたらした。
「ええ。でも後桜鳩女皇陛下はそれどころじゃない。熱力学第二法則を倒して八紘一宇が実現した暁には臣民にもお与えくださるでしょうけど」
ハーベルトが言うには、幾何学的に無限の平行線は無限の彼方で交わるのだという。大東亜の天皇がめざす所は異世界を含めた平和的な――女性が主導するからにはあくまでも穏便な世界統一だ。それには無限大の時間を必要とする。後桜鳩は仙薬だか養老だかを秘匿しておきたいのだろう。
「だったら、最初っからソレをぶっかけりゃいいじゃん!」
話を聞いて祥子がくちばしをはさんだ。
「国防軍情報部外国課が存在証明したのは最近のことよ。連合側と和睦した今となっては、藪蛇になりかねない」
「そうよ。ハーベルトの言う通り、下手をすると連合と大東亜共栄圏の戦争になるわ」
望萌が早々に結論付けた。自動列車制御装置はエチナ旗総合指令所の減速信号を検知した。まもなく、シビー・ハーン河岸駅だ。
■ 策克口岸貿易管理公社
とうとう恐れていた事態がおきた。バリケードが突破され警官隊は総崩れとなった。痒みの我慢限界に達したオドゴンフー達は苦痛の矛先を集中させ、一点突破を図った。爆散したトラックのタイヤがグリンダ・シュタインヘイガーの頭上を飛び越えていく。その雄景がネルグイに火をつけた。凄まじい銃撃が堰を切るようにバリケードを粉砕し、男たちが屍を踏み越えていく。その先にあるものは最新鋭の枢軸輸送超特急だ。バダインジャラン砂漠緑化計画は佳境を迎えており、プロジェクトの推進に必要な資材が惜しげもなくつぎ込まれている。
TWX1369。戦闘指揮車。
「ああああああああ! 防衛線を突破されました!! 閣下どのお」
女署長の情けない声がハーベルトのヘッドホンに響いた。彼女は無電を遮断し、冷たい言葉を放った。
「放っておきましょう」
「だって、ハーベルト!」
打てば響くように祥子が食らいつく。まったく、この子はいつになったら鋼鉄の規律を理解できるのか。ハーベルトは内心、殺意をおぼえた。
「現地は乱戦状態よ。そのただなかに突入したらどうなるとおもっているの? あなたも軍属なら戦略を学んだらどうなの?」
バサバサッと音をたてて「孫氏の兵法ドイッチェラント訳」が飛んできた。
乱戦状態は自然と事態収拾するものである。整い始めたところへ、自軍の「型」を持ち込み、有利な条件を整えよ。これが必勝法だ。
「だって、グリンダさん死んじゃうよ。まだ、ボクのお姉さんぐらいの人なのに」
祥子が警察署長のプロファイルを盾に制圧戦を主張する。
「前を向きなさいと何度!!!!」
出た。必殺ハーベルト閣下お叱りの声。そして、そこに接近警報が被るのが習わしである。
「軌道上に遮蔽物あり。危険です。軌道上に……」
ハウゼル列車長が急停車を命じた。ガクンと机が揺れる」
「メッセージが入っています!」
望萌がメインスクリーンにでかでかと表示した。300ポイントほどのゴチックフォントが流れ去る。
「策克口岸貿易管理公社より緊急提言。構内の重火器使用はご遠慮ください。繰り返します……」
「どういうことなの?」
閣下はイラつきながら、ニーナに尋ねた。
「セルロースナノファイバー(CNF)の量子溶剤が届いているんです。非常に不安定で沸点が低くて……」
「着いたとたんにこれかよ!」
上品な閣下らしからぬ罵詈雑言が飛び出す。
「どういう素材で、どういう用途なの?」
ハウゼル列車長が優先順位を行う。前進あるのみの運行管理規約に照らし合わせて、破壊すべきものは破壊する。
「緑化計画のメインテーマなんですよ。セルロースナノファイバーは試作型軌道エレベーターの素材になるんです」
「つまり、その。ゴビ砂漠に豆の木を……あの童話の樹です。じっさい、ビーンスターク作戦と本部では呼んでます。大きな塔を建てるんですよ」
それを聞いてハウゼルは決断を下した。
「燃やしてもいいですね」
すると、スレンが壁際の銃を取った。キラリと銃剣が輝く。
ハーベルト閣下に向け、彼女は凄んだ。
「燃やしたらぶっ殺すよ」
エチナ旗の食肉物流基地シビー・ハーン駅前には反政府組織ネルグイが招集した遊牧民が銃撃戦を展開していた。
「緑を返せ。オアシスを返せ!」
彼らは横断幕を広げ、駆け付けた地元警察軍をなぶり殺している。
「故郷を返せ! 俺たちから略奪した土地を返せ!!」
女も子供も身の丈に合った銃器で警察車両をハチの巣にしたり、ドイッチェラント系商店を破壊する。
警察官の装備品に不足はない。おっとり刀でなく、首都ゲルマニアでみっちり訓練を受けた猛者たちが応戦している。
だが、一発も当たらないとはどういう事だ。一人、また一人と味方は数を減らしていく。
防衛線はじわじわと、だが着実に後退している。
シビー・ハーン警察はコンテナヤードの正門にパトカーを連ねた。さらにありったけの護送車を横一列に並べてバリケードを築いた。その区画はとりわけ重要な貨物を扱う場所で、普段は国家社会主義女性同盟(NSフラウェンシャフト)の党員向けの荷物を捌いている。それだけに普段なら警戒厳重であるはずだが、今日は党指導者ゲルトルート・ショルツ=クリンクの生誕祭とあって誰もいない。シビー・ハーンの傀儡は瀟洒な邸宅でかまびすしい騒音をまき散らしているのだろう。
「まったく。NSの女どもときたら!」
警察署長グリンダ・シュタインヘイガーは操車場奥の政治将校宿舎を恨めし気に眺めた。異世界分裂難民たちの反乱は風物詩になっているが、例年より勢いを増している。そして、特筆すべきは男性が矢面に立っている事だ。女たちは第二次世界大戦に嫌気がさして、「大分裂」を引き起こした。その効果は個々人に対して選択的に働いたのではなく、包括的なものであったため、不随意的に転移した輩が騒ぎを起こしている。主流派はナチスドイツのシンパだ。それは可及的速やかにエーデルヴァイス海賊団が始末した。除去できない層がいる。
男性たちだ。
ドイッチェラントはナチスの母子援助運動を継承しているから、育児出産を大切にする。
厳しい産児制限のもと、世界戦争を招いた教訓から男性の権利は著しく削がれているが、最低限必要な文化生活は担保されている。その彼らが育児を放り出して銃を構えているのだ。
途轍もなく奇妙な事が起きている。
グリンダは異変を余すところなく世界首都ゲルマニアに伝えた。
■ TWX1369
枢軸特急はバヤンノール市からいったん、異世界隧道に入った。炎天下のゴビ砂漠を迂回してエチナ旗に入る。
「重水素の確保は大丈夫かしら?」
ハーベルトは偏頭痛をこらえながら訊いた。望萌もぐったりしている。空調は適温だし、火照った素足を冷やしてくれるウイルキンソン靴下も順調だ。彼女たちの衰弱は暑さでなく重水素二量体病の進行に起因する。
「ええ……いつもより、かな~り多めに積んでます。よっこらしょ」
彼女はよろめきながら席を立った。眠そうな目で壁伝いに歩く。見かねたハウゼル列車長が肩を貸した。
「あなた。大丈夫?」
「ええ……何とか……積荷目録の閲覧はわたしの虹彩認証でないと」
望萌は這う這うの体で制御卓に就いた。あくびを噛み殺しながら初期画面を叩く。
「だめよ! あなた。後桜鳩天皇陛下に対独協力行為をお願いしましょう。もっと重水が必要だわ」
ハーベルトはさっそく、白紙委任状をフル活用して、大東亜共栄圏に貨物輸送を依頼した。
「重水をじゃぶじゃぶ増やして癒せるうちはいいわよ。対処療法が効かなくなったら……」
望萌がタンク車のロックを解除して、車内に重水を循環させる。新緑の候を思い出すような噴霧が天井から降ってきた。閣下が「あーっ」と伸びをする。萎れていた祥子と風吹が生気を取り戻し、望萌もガバッと跳ね起きる。
「ねぇ。ハーベルト。ボクたちは甦ったよね。どうして病気は治らないの?」
もっともな質問だ。日本人の死生観に照らせば、再生は若返りと健康体を取り戻すイメージがある。
「遺伝病を取り除くようにはいかないわ。病原を探ろうにもシュワニーシーは滅びてしまった」
やるせない表情で祥子を睨むハーベルト。
「大東亜共栄圏には仙薬があるといいます。不老長寿を約束してくれる養老乃瀧という場所もあるとか」
旅なれたハウゼルが耳より情報をもたらした。
「ええ。でも後桜鳩女皇陛下はそれどころじゃない。熱力学第二法則を倒して八紘一宇が実現した暁には臣民にもお与えくださるでしょうけど」
ハーベルトが言うには、幾何学的に無限の平行線は無限の彼方で交わるのだという。大東亜の天皇がめざす所は異世界を含めた平和的な――女性が主導するからにはあくまでも穏便な世界統一だ。それには無限大の時間を必要とする。後桜鳩は仙薬だか養老だかを秘匿しておきたいのだろう。
「だったら、最初っからソレをぶっかけりゃいいじゃん!」
話を聞いて祥子がくちばしをはさんだ。
「国防軍情報部外国課が存在証明したのは最近のことよ。連合側と和睦した今となっては、藪蛇になりかねない」
「そうよ。ハーベルトの言う通り、下手をすると連合と大東亜共栄圏の戦争になるわ」
望萌が早々に結論付けた。自動列車制御装置はエチナ旗総合指令所の減速信号を検知した。まもなく、シビー・ハーン河岸駅だ。
■ 策克口岸貿易管理公社
とうとう恐れていた事態がおきた。バリケードが突破され警官隊は総崩れとなった。痒みの我慢限界に達したオドゴンフー達は苦痛の矛先を集中させ、一点突破を図った。爆散したトラックのタイヤがグリンダ・シュタインヘイガーの頭上を飛び越えていく。その雄景がネルグイに火をつけた。凄まじい銃撃が堰を切るようにバリケードを粉砕し、男たちが屍を踏み越えていく。その先にあるものは最新鋭の枢軸輸送超特急だ。バダインジャラン砂漠緑化計画は佳境を迎えており、プロジェクトの推進に必要な資材が惜しげもなくつぎ込まれている。
TWX1369。戦闘指揮車。
「ああああああああ! 防衛線を突破されました!! 閣下どのお」
女署長の情けない声がハーベルトのヘッドホンに響いた。彼女は無電を遮断し、冷たい言葉を放った。
「放っておきましょう」
「だって、ハーベルト!」
打てば響くように祥子が食らいつく。まったく、この子はいつになったら鋼鉄の規律を理解できるのか。ハーベルトは内心、殺意をおぼえた。
「現地は乱戦状態よ。そのただなかに突入したらどうなるとおもっているの? あなたも軍属なら戦略を学んだらどうなの?」
バサバサッと音をたてて「孫氏の兵法ドイッチェラント訳」が飛んできた。
乱戦状態は自然と事態収拾するものである。整い始めたところへ、自軍の「型」を持ち込み、有利な条件を整えよ。これが必勝法だ。
「だって、グリンダさん死んじゃうよ。まだ、ボクのお姉さんぐらいの人なのに」
祥子が警察署長のプロファイルを盾に制圧戦を主張する。
「前を向きなさいと何度!!!!」
出た。必殺ハーベルト閣下お叱りの声。そして、そこに接近警報が被るのが習わしである。
「軌道上に遮蔽物あり。危険です。軌道上に……」
ハウゼル列車長が急停車を命じた。ガクンと机が揺れる」
「メッセージが入っています!」
望萌がメインスクリーンにでかでかと表示した。300ポイントほどのゴチックフォントが流れ去る。
「策克口岸貿易管理公社より緊急提言。構内の重火器使用はご遠慮ください。繰り返します……」
「どういうことなの?」
閣下はイラつきながら、ニーナに尋ねた。
「セルロースナノファイバー(CNF)の量子溶剤が届いているんです。非常に不安定で沸点が低くて……」
「着いたとたんにこれかよ!」
上品な閣下らしからぬ罵詈雑言が飛び出す。
「どういう素材で、どういう用途なの?」
ハウゼル列車長が優先順位を行う。前進あるのみの運行管理規約に照らし合わせて、破壊すべきものは破壊する。
「緑化計画のメインテーマなんですよ。セルロースナノファイバーは試作型軌道エレベーターの素材になるんです」
「つまり、その。ゴビ砂漠に豆の木を……あの童話の樹です。じっさい、ビーンスターク作戦と本部では呼んでます。大きな塔を建てるんですよ」
それを聞いてハウゼルは決断を下した。
「燃やしてもいいですね」
すると、スレンが壁際の銃を取った。キラリと銃剣が輝く。
ハーベルト閣下に向け、彼女は凄んだ。
「燃やしたらぶっ殺すよ」
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