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彗星発、永劫回帰線(マーサズ・ヴィニャード・ブレイクスルー・スターショット) ⑫ はじめての……
しおりを挟む■ 策克口岸貿易管理公社 社会主義女性同盟政治将校専用貨物駅
ネルグイの男たちのうち、数名が枕木に足を取られて転倒する。そこへ、後列が躓いて将棋倒しが発生した。
ガガ、ギゴケン♪
ガガ、ギゴケン♪
黒板を爪で擦過するような音とチューブラーベルの乱れうちを混合し、二日酔いでフラフラになった頭に注ぎ込む。プレートアーマーを着たメロディが脳内を闊歩し、悪寒と吐き気が君臨し、自殺願望すらも踏みにじってしまう。
まさに悪魔の早鐘だ。
ソースコード世界において、西日本旅客鉄道がローカル線で採用している接近メロディ「旧さざなみ」。それを盛大にガナるはTWX1369。
そんな騒音に追い立てられて、ネルグイは散り散りになった。
「枢軸特急トワイライトエクリプスが14番線に参ります。危ないですから、地獄の一丁目にお下がりください~~。ガガギゴケン♪」
「ハーベルト……楽しそうだね……」
祥子は冷ややかな目で眺めつつ、銃剣を装着した。
ボクは本当に人を殺すことになるんだ。この手で。
今まで何度も発砲してきた。しかし、刃で人を殺めるのと銃で射殺する事は雲泥の差がある。殺した手ごたえがはっきりとわかる。
生殺与奪権が自分の手にあると思うと震えが止まらなくなってきた。
肘から先がブルブルと震顫して脂汗がポタポタと滴り落ちる。制御が効かない。まるで腕だけに別人格が宿ったようだ。
ずっと眺めていると先端がニュッと飛び出した。眼球に突き刺さる。もちろん錯覚だ。
祥子に悲鳴にハーベルトは自分を取り戻した。
「祥子!」
肩を貸そうとする手が払いのけられた。
「いいよ。ハーベルト」
祥子はふらつく身体を立て直し、洗面所で手を洗った。白い洗面台に血が点々とついている。鏡の隅に赤い色が見えた。
「え?」
彼女が二の腕をふりあげると、肘から手の甲にかけて真一文字に切れていた。
「あなたは安静にしてて。わたしだけで殺る」
ハーベルトが銃を取り上げようとすると、祥子は頑として拒んだ。
「ボクはオトコだ。殺れる!」
必死の形相で銃を掴み取る。
「意固地ね」
しかたなく、ハーベルトは応急手当を施した。「いいよ!」と包帯を拒絶する祥子。重水素は未来ある少女の心身をを確実に蝕んでいる。
◇ ◇ ◇
ガガ、ギゴケン♪
無色透明角栄軍の前途を連合急行が塞いだ。
「うわあああ!」
「おい。オドゴンフー。貯水槽じゃなくて戦車が出てきやがった!
「この野郎。一杯食わせやがったな!
「うわー。死ぬ」
「もう死ぬ!」「すぐ死ぬ」「きょう死ぬ」「今、死ぬ」
ネルグイの男たちはパニック状態にある。シビー・ハーンの街はずれ。砂漠地帯にSd.Kfz.251兵員輸送車が潜んでいる。
6型。上級士官用の無線機搭載指揮車両タイプである。
「ん? 戦車だと?」
オドゴンフーは耳を疑った。
次の瞬間、駅舎の向こうに火柱が立った。
列車に挟まれた空間に地獄絵が繰り広げられる。車庫が爆散し、屋根が吹きとび、肋材が捻じ曲がる。焙られた破片が容赦なく降りそそいだ。
めいめいが引き金に自暴自棄をこめて、絞る。その想いは、小粒の雨となって跳ね返った。
「がが、ぎご、げぇええええ~~んっっ!」
明朗快活なソプラノが押し寄せてくる。悶絶しているネルグイに大きな影がさした。彼らはヒィっと短い悲鳴をあげる。その巨大な塊は男達を直撃するかと思いきや、一向に堕ちてくる気配がない。ネルグイの一人がそっと瞼をあげると、砲弾が宙に浮いていた。見たこともない戦車が蠢いている。同長のキャタピラーに傾いだ煙突のような砲身が載っている。ガソリンエンジンとディーゼルの二重奏が異形の奇怪さを際立たせる。翼を背負ったマネキン人形が不気味な笑みを浮かべた。本当にすっぽんぽんだ。申し訳程度の布で局部を覆っている。
ベトン弾はフランス軍マジノ要塞線の分厚いコンクリートを貫通する徹甲弾である。重さは約七トン。ドラム缶ほどの太さがある。ハゲ天使が人差し指を振ると、砲弾が軽々と追随する。
「totoderlebendig(生きるか死ぬか)? ガガぎごゲ~ん♪」
男たちは一も二もなく降伏を選んだ。
「あっそぅ☆」
砲弾が人垣のど真ん中に突き刺さった。ネルグイが蜘蛛の子を散らすように逃げる。幸い、不発の様だ。
「ハーベルト。砂漠の向こうだ。あっち!」
もう一人のハゲ天使がオペラグラスを放り投げた。ハーベルトと呼ばれたハゲはそれを受け取り、覗き込む。
「咆哮/熱病ネットワークが見える。いつもの宇宙人ね。わたしのオモチャ、持って来てくれた?」
ハーベルトが促すと、TWX1369の貨車がスロープをおろした。シートが外され、怪戦車が続々と地響きを立てる。
「ご注文のカール自走臼砲です」
小柄な女子戦車兵が両くるぶしを打ち鳴らして敬礼した。パリッとしたチュニックが揺れ、清楚な白が見え隠れする。臼砲は文字通り臼のように寸胴な大砲だ。とても重い砲弾が急峻な弾道をえがき、敵の真上に落ちる。
配達された車両は三台。エーファ、ラーン、フレイア。北欧女神の名前がついている。
積み降ろし作業の横で鉄道連隊が貨物駅の修復を行っている。ネルグイ達は衛生兵の治療を受けつつ、その場でSSに尋問されている。
ハーベルトが一号車ナンナの車上から指揮を執る。「ルメル機甲師団に比べたら豆戦車だけど、わたしにはこれで充分♪」
彼女は難工事を突貫してくれた鉄道連隊に感謝を述べた。
シビー・ハーン郊外。ゴビ砂漠
Sd.Kfz.251兵員輸送車。
「何だと?! 『痒み止め』が持ち去られた、だと?」
オドゴンフーは壁を蹴りながら悔しがった。発疹が全身に広がっている。茹蛸のような肌に血が滲み、座ることもできない。
チャンスンの報告によれば、枢軸軍は地下トンネルを掘って貨物列車を避難させたという。やたらと景気よく爆発が続いていたわけだ。
「おい! ババー。策は有るのかよ?」
オドコンフーが血だらけの背中を向けて呻く。そのやつれ果てた姿をマドレーヌは滑稽に思った。熱力学第二法則に抗おうとして必死で墓穴を掘っている。
哀れなものだ。何の薬効もないセルロースナノファイバーを治療薬だと言われれば、命すら賭す。
赤紫色にただれた皮膚は悪化すると壊死に向かう。人間を含めて生きとし生けるものは死にゆくさだめだ。マドレーヌはそれこそが人類の向かうべき終局だと感じだ。生命活動の補色をなす宿命量子色。
しかし、そこで停止してしまっては、手あかにまみれた存在論だ。そこでマドレーヌは着想にひねりを加えた。
光は異なる媒質に入射した際、波長を変える。すなわち屈折した光は変色する。人間の本質も生死の対流を繰り返すのではなく、これまでにない媒質を透過すべきではないのか。そこに曙が見えてくる。
「ええ。戦車隊の後ろにトラックの列が続いてるでしょう。積荷は十中八九、CNF。エチナ旗を陸路で強行突破する気よ。そうはさせない」
マドレーヌがそういうと、オドゴンフーはますます機嫌を損ねた。
「気休めもいい加減にしろよ。お前の塗り薬だって効果が薄れてきたじゃねーか」
するとマドレーヌはしれっと言い返した。
「あんたの仲間がしくじった結果でしょう」
「主導したのはお前じゃねーか!」
売り言葉に買い言葉。オドゴンフーは息も絶え絶えに反論する。すると、マドレーヌは女性らしい行動に出た。
「ハァ? あんた、もういいわ」
容赦なく突き放す。
「ハァ?」
何か言いいかけたオドゴンフーを大声で遮る。
「黒水城の地権者だし、遺跡の正体もうすうす感づいてたみたいだから、高次知能集団に誘ってやったけど。お前、ウザいし……」
スカートをたくし上げて、ブルマの後ろポケットに手を入れる。オドゴンフーが何事かと振り返った。マドレーヌの掌か明滅した瞬間、彼の意識が遠のいた。
■ シビー・ハーン市内 シビー・ハーンロード
駅の西側には街のを南北に貫く街道が走っている。装甲車部隊は砂塵を巻き上げ、強行突破を図る。
「このまま、シビー・ハーンロードを北上してモンゴル側に入れば、しばらく行くと十字路があるの。そこを右折して東にずっとダランサドガトまで進んで。ノムコンまで南下して、ガシュンスカイットを通れば、ウランスハイに抜けるわ」
ハーベルトが東北飯店の敷地内に部隊を停め、翡翠タブレットで進路を確認していると爆撃機誘導員から第一報が入った。大通りを一キロほど北上した場所に正体不明の地下トンネルが掘られているというのだ。
「えっと、地図でいうと嘉隆特別商務賓館の裏手当たりかしら?」
ハーベルトが確認を求めると、ヒュッという裏声のような音が聞こえた。身体が熱くなり、胸に刺されたような激痛が走る。
「コンバットコントローラー隊と接続が失われました」
タブレットの三分の二を真っ赤なステータス表示が覆っている。
身を二つ折りにして苦しむハーベルトを更なる苦痛が襲った。祥子に蹴り転がされたのだ。
「気を付けて! 来るよ。マドレーヌだ」
祥子は銃剣をしっかりと構え、翼を開いた。ハーベルトの顔に生暖かいブルマが被さり、スカートが視界を塞いだ。
94式装甲列車は嘉隆特別商務賓館に敷設された引込線から出現した。そして、高射砲でコンバットコントローラーを一掃した。
「ラファームシノワはもう鉄道連隊を持っているの? 一体どうやって?」
望萌は進化のスピードに驚きを禁じ得ない。もともと烏合の衆だったシノワが急成長できる理由に異星人の関与が予測されるが、人材の育成は一朝一夕で出来るものではない。
「ぽっと出の新米に量子ブラックホール掘削機を扱えるはずがないわ。建築工学はフラウンホーファーの専門外だったはず」
ハーベルトは痛む胸を押さえながら、翡翠タブレットをタップした。誘導員の偵察写真に気になる一コマがあった。94式装甲列車のボディにシミのような紋様が記されている。指でスワイプすると見たこともないシンボルが記されていた。
「赤字に黄色い五つ星? こんな国旗は枢軸にも連合にもないわ。いいえ。三千世界のどこにも見当たらない」
ハウゼル列車長が覗き込む。
「あるのよ」
マドレーヌがハーベルトの後頭部にカロリーメーターを突き付けた。
■ 東北飯店 駐車場
屈強なモンゴロイドたちが腕力にモノを言わせて剣を揮う。
「皮膚病患ってたんじゃないのか?!」
祥子は素早く相手の切っ先をかわし、回り込む。相手も静止してはいない。
即座に立ち位置を変え、互いに時計の長針と短信が一体化して文字盤で踊るように回転を繰り返す。翼を使って敵の内懐に入り込めば楽に勝てそうだ。しかし、跳躍する瞬間に背中のガードが失われる。
他の異世界逗留者達も苦戦を強いられている。場内にはCNFを搭載した輸送トラックと臼砲が同居しており、迂闊に発砲できない。そして、94式装甲列車がぐるりとホテルを取り囲んでいた。いきおい、白兵戦になる。
ネルグイたちは打って変わって、積極攻勢を仕掛けてくる。彼らはいつどうやって皮膚病を克服したのだろう。
マドレーヌは運命量子色医学とも呼べる応用分野を築いていた。掻痒の行きつく先は憤怒である。しかし、それを中和する慈悲は治療に結び付かない。必要とされる成分は抑制だろう。
そこでマドレーヌは嫉妬を追加した。ネルグイにQCDを照射し、強化人間に進化せしめた。
憤怒と嫉妬の化学反応式は何をもたらすだろうか。それらが一度に押し寄せると強烈な独占欲が生まれる。より多く、いち早く。渇望と焦燥はささいな疼痛など塗りつぶしてしまう。
その激情は、ふつふつと祥子にも伝わってきた。
彼女は朦朧としながらも、ギリギリの優勢を維持している。剣を取り落とさせようと祥子が突きや払いをあの手この手で試みる。
だが、相手の指は片時とも剣を放そうとしない。
欲しい、惜しい、羨ましい、悔しい、ひもじい、さもしい、あさましい、さみしい、妬ましい、腹立たしい。
彼我の感情は澄んだ雪解け水のように自然の傾斜に従い、宇宙の理に則って、然るべき位置に蓄積した。
ぐるぐると世界が堂々巡りする。
自分の欲しい究極は何だ。
男性の身体。藤野祥子であって藤野祥子でない核心――真髄を移植できる肉体。
いや、それも違う。外科手術で克服できる。
もっと、自分の努力や幸運の待望では絶対に手に入らないもの。
他人の心。
いや、違う。人間の心は思慕や脅迫や金や恐怖や薬物で支配できる。要求すること自体が禁止されていること。
――それは、他人の生命だ。
「わかったぞ! ボクは死ぬんだーー」
彼女が深層心理の沈殿物に銃剣を突き立てる。
ブスリ、と刺さる。そのまま一気に体重をかけて、ぐっと押し込む。
ガシャンと混雑した世界が割れ――。
暗澹たる闇に透過光がほとばしる。
暗黒が左右に押し開かれ、血走った目が飛び込んできた。
「ぐはあっ!!」
チャンスンが白目を剥いて絶命した。
「「「「サブリーダー!」」」
ネルグイはたちどころに戦闘を止め、遺体のそばに駆け寄った。
「「「ひ? ひあああああ???」」」
変わり果てたチャンスンを一目見るなり、ネルグイは発狂した。サブリーダーの五体が一つ欠けていたからだ。
そして、そのもっとも重要な部分は――
――
祥子の銃剣に突き刺さっている。
「――?!」
祥子は接吻できそうな距離から死人に見つめられ――。
リンドバーグの壁が発動した。
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