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ビフォア・ジ・オープニング
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■ ビフォア・ジ・オープニング
高次知性集団と人類の集合知は、今ふたたびの邂逅を果たそうとしていた。連合国奥の院――その内実は宇宙帰還を果たそうと企むL―5協会である――は、リンドバーグの壁際に三本の宇宙樹を植え、錦の御旗を掲揚した。
てっきり、人類がZ旗を掲げるものと考えていた集団は肘鉄を食らう格好となった。
「お前たち地球に生まれた命の兄弟たちは、惑星規模の単細胞生物に進化してヤンガードライアス彗星に忠誠を誓わなければならない。それ以外に生き残る道はない」
ティモシー・リアリー教授が受け取った穏やかな脅迫文は、人類に嫋やかな進化を促すものと集団は楽観していた。。
しかし、ドイッチェラント本国ババルウ地方に端を発したヴァイアーン幻想教団――秘密結社の流れを組む宗教団体は、スマイルメッセージを良しとしなかった。アメリカ皇帝を僭称した男の子孫を本当に祀り上げ、連合国の支配構造を武装蜂起によって覆した。
これはエイリアン集団にとって大きな誤算だった。
スマイルメッセージを曲解されることと、組織だった抵抗は想定済みで、その際はイリュージョン生命体による直接侵攻を視野に入れた。危機に瀕した人間は本能的に超越者を求める。それは精神的支柱を創り出すことで、アドレナリンの大量分泌による破壊活動から脳細胞を護る役割を果たしてる。集団は宗教的破局と救済を演出して、人間を傅かせようと目論んでいた。
それすらも、宇宙樹を開花させる大胆不敵な行動に色あせてしまった。
スマイルメッセージに含まれているたった一行。
「日本人は君たちの惑星で最も進化した種族だから、君たちの仲間を保護してくれるだろう」
これが集団のお膳立てをひっくり返してしまった。日本人――川端エリスは伏兵であり、帰還の水先案内人になるはずだった。そういう意味合いで送り込んだはずの保護者が率先して人類の庇護者になろうとは。。
そして、もう一つ。大きな番狂わせが生じた。
メタン生命体の参戦である。
ドイッチェラント帝国特命総統全権代理 トロイメライ・ハーベルト・フォン・シュリーフェン閣下は、異世界の破壊も辞さない豪胆な作戦で、宇宙人と秘密結社の野望を華麗に粉砕した。
■ 崩落の渦中で
「いっけー。スーパーカリフォルジリスティック・エクスピアリドーシャス!!」
ハーベルトはTWX1369のリクライニングシートをほぼ水平に倒した。天に向かって唾を吐くという言葉があるが、彼女はそれを体現している。
天空にたなびく貴婦人の後ろ髪。ヤンガードライアス彗星は地球生命史を刺激して知的生命体の魂を収穫するために、地質学的な年月を費やした。
ちょうどそれを五次元世界から俯瞰すると燃え上がる氷柱にそっくりだ。
三次元を時間軸方向に積分すると氷柱に見える。半透明な直方体の内部には様々な因果関係が複雑に絡み合っている。その横っ腹に人魂がのめり込んでいる。ヤンガードライアス彗星だ。
そのすぐ傍にもうひとつ、チロチロと青白い炎が噴き出した。
オルロフ・ダイヤモンドが抱えている矛盾した由来。二つの起源説が衝突し、破裂した。
パッとすみれ色の奔流が氷柱の傷口を焼き切る。
列車移動式大陸間弾道弾SS-24スカルペ。
サンアンドレアス断層を穿った弾道ミサイルは本初始祖世界から未知数の恐怖を汲み上げた。
「離脱しよう。よそ者はもうたくさんだ」
「栄光の日々よ、ふたたび」
怨嗟の声が氷柱から湧き上がる。
コード1986世界のカルフォルニアはもっとも成功した自治体の一つだ。合衆国経済の牽引役を担っていた。
「カルフォルニアは不当に搾取されている」
「どうしてカルフォルニアだけが」
不当な扱いに対する不満から、独立機運がくすぶっていた。
そこにハーベルト閣下がつけ入った。
「次の停車駅は本初始祖世界。本初始祖世界。ソースコード・トウキョウ!」
望萌がおろしたてのアンダースコートをひるがえすと、残留思念たちが色めき立った。
日系人収容人員の恨みをまだ見ぬ世界への望郷にかえ、枢軸特急を牽引する。
そして、そこにカルフォルニア独立派の総意が相乗りした。
「「「「ソースコード・トウキョウ。ソースコード・トウキョウ!」」」」
「スーパーカリフォルジリスティック・エクスピアリドーシャス!!」
サンアンドレアス断層がバキバキと崩れ、バハ・カルフォルニア島の虚構が現実のものとなった。
第三巻「酔夢/エーテル風速四十万光年」
高次知性集団と人類の集合知は、今ふたたびの邂逅を果たそうとしていた。連合国奥の院――その内実は宇宙帰還を果たそうと企むL―5協会である――は、リンドバーグの壁際に三本の宇宙樹を植え、錦の御旗を掲揚した。
てっきり、人類がZ旗を掲げるものと考えていた集団は肘鉄を食らう格好となった。
「お前たち地球に生まれた命の兄弟たちは、惑星規模の単細胞生物に進化してヤンガードライアス彗星に忠誠を誓わなければならない。それ以外に生き残る道はない」
ティモシー・リアリー教授が受け取った穏やかな脅迫文は、人類に嫋やかな進化を促すものと集団は楽観していた。。
しかし、ドイッチェラント本国ババルウ地方に端を発したヴァイアーン幻想教団――秘密結社の流れを組む宗教団体は、スマイルメッセージを良しとしなかった。アメリカ皇帝を僭称した男の子孫を本当に祀り上げ、連合国の支配構造を武装蜂起によって覆した。
これはエイリアン集団にとって大きな誤算だった。
スマイルメッセージを曲解されることと、組織だった抵抗は想定済みで、その際はイリュージョン生命体による直接侵攻を視野に入れた。危機に瀕した人間は本能的に超越者を求める。それは精神的支柱を創り出すことで、アドレナリンの大量分泌による破壊活動から脳細胞を護る役割を果たしてる。集団は宗教的破局と救済を演出して、人間を傅かせようと目論んでいた。
それすらも、宇宙樹を開花させる大胆不敵な行動に色あせてしまった。
スマイルメッセージに含まれているたった一行。
「日本人は君たちの惑星で最も進化した種族だから、君たちの仲間を保護してくれるだろう」
これが集団のお膳立てをひっくり返してしまった。日本人――川端エリスは伏兵であり、帰還の水先案内人になるはずだった。そういう意味合いで送り込んだはずの保護者が率先して人類の庇護者になろうとは。。
そして、もう一つ。大きな番狂わせが生じた。
メタン生命体の参戦である。
ドイッチェラント帝国特命総統全権代理 トロイメライ・ハーベルト・フォン・シュリーフェン閣下は、異世界の破壊も辞さない豪胆な作戦で、宇宙人と秘密結社の野望を華麗に粉砕した。
■ 崩落の渦中で
「いっけー。スーパーカリフォルジリスティック・エクスピアリドーシャス!!」
ハーベルトはTWX1369のリクライニングシートをほぼ水平に倒した。天に向かって唾を吐くという言葉があるが、彼女はそれを体現している。
天空にたなびく貴婦人の後ろ髪。ヤンガードライアス彗星は地球生命史を刺激して知的生命体の魂を収穫するために、地質学的な年月を費やした。
ちょうどそれを五次元世界から俯瞰すると燃え上がる氷柱にそっくりだ。
三次元を時間軸方向に積分すると氷柱に見える。半透明な直方体の内部には様々な因果関係が複雑に絡み合っている。その横っ腹に人魂がのめり込んでいる。ヤンガードライアス彗星だ。
そのすぐ傍にもうひとつ、チロチロと青白い炎が噴き出した。
オルロフ・ダイヤモンドが抱えている矛盾した由来。二つの起源説が衝突し、破裂した。
パッとすみれ色の奔流が氷柱の傷口を焼き切る。
列車移動式大陸間弾道弾SS-24スカルペ。
サンアンドレアス断層を穿った弾道ミサイルは本初始祖世界から未知数の恐怖を汲み上げた。
「離脱しよう。よそ者はもうたくさんだ」
「栄光の日々よ、ふたたび」
怨嗟の声が氷柱から湧き上がる。
コード1986世界のカルフォルニアはもっとも成功した自治体の一つだ。合衆国経済の牽引役を担っていた。
「カルフォルニアは不当に搾取されている」
「どうしてカルフォルニアだけが」
不当な扱いに対する不満から、独立機運がくすぶっていた。
そこにハーベルト閣下がつけ入った。
「次の停車駅は本初始祖世界。本初始祖世界。ソースコード・トウキョウ!」
望萌がおろしたてのアンダースコートをひるがえすと、残留思念たちが色めき立った。
日系人収容人員の恨みをまだ見ぬ世界への望郷にかえ、枢軸特急を牽引する。
そして、そこにカルフォルニア独立派の総意が相乗りした。
「「「「ソースコード・トウキョウ。ソースコード・トウキョウ!」」」」
「スーパーカリフォルジリスティック・エクスピアリドーシャス!!」
サンアンドレアス断層がバキバキと崩れ、バハ・カルフォルニア島の虚構が現実のものとなった。
第三巻「酔夢/エーテル風速四十万光年」
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