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向こう見ずな天の川(アンナスル・アルワーキ) ① フライング開戦!? リメンバー・サンタモニカ!!
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■京都府八幡市 石清水八幡宮
Genius is one per cent inspiration and ninety-nine per cent perspiration.
天才とは1パーセントのインスピレーションと99パーセントの発汗である
校倉涼子は天才のひらめきを授かろうと三十分近くもエジソン記念碑に跪いている。しかし、いくら刮目して意識を集中しようとも焦りが募るばかりでいっこうに考えがまとまらない。その間にも右太ももが五分おきにブルブル震える。
「うっさいわね!」
彼女はプリーツスカートのジッパーをおろして内ポケットから携帯咆哮端末を取り出した。咳払いで認証すると画面に可愛らしいキツネが新着巻物をくわえて待っていた。
「新しい咆哮が25件あります」
そのすべてが聖イライサニス学園総合文芸部の名義になっている。
校倉涼子が蜂狩市からわざわざ鳩ケ峰駅まで蛍絆特急を乗り継いでやってきたのも、文芸部長の咆哮から逃れるためだった。だが、山頂駅付近に参拝者向けの咆哮/熱病ネットワークノードが設置されたらしく、圏外表示にならない。
舞台脚本の提出期限はとっくに過ぎている。文芸部長が演劇班をなだめすかして締切を引き延ばしている。しかし、舞台装置の着工が今夕に迫っており、資材や要員の手配を考えると舞台監督や演出家の意向を組みながら即興で執筆するわけにもいかない。きちんとした決定稿を渡せと劇団員から再三要求されている。本来ならば彼女はとっくに降板させられていたはずだが、文芸部にはまともな戯曲が書ける者がいなかったため、しかたなく生き延びている。彼女にはとっさのひらめきで締め切りを乗り越えてきた実績がある。今回も瀬戸際まで追い詰められ、何とかなると楽観していた。しかし、創作の女神ムーサはついに降臨せず、エジソンに肖ろうと思い立った。
「ああああ、なんでこんな大役引き受けちゃったんだろう」
涼子は栗毛色の髪を掻きむしった。茜色に染まる本殿から吹く風は既にしっとりとした夜露を感じさせる。彼女は校章の入ったボストンバッグから黒い三分丈スパッツを取り出して、アンダースコートに重ねた。
社殿北東の若宮殿社から長蛇の列が二つ、涼子の近くまでのびている。厄除開運祈祷を受けようとする若い女性のカップルだ。祀られているのは応仁天皇の皇女で心身健康をつかさどる女性の守護神だ。並んでいる女性たちはリボン状の清め衣に結婚成就の祈願を書きいれている。
「田實ヒナ(18)♡倉沢ヨエコ(17)かぁ……いいなぁ」
涼子は清め衣の個人情報を盗み見て、つい咆哮ネットワークをエゴサーチしてしまう。出てくるわ出てくるわ、あられもない姿の二人が投稿サイトに自撮画像を溢れさせている。
「見るんじゃなかった。がっくし……」
自己嫌悪に陥りながらインフォプレナーを着拒しようとした。その矢先に着メロが鳴り響いた。端末に翡翠ミナの名前が躍る。特大ゴチックフォントで脚本を催促している。文字がぶつかり合い、パッと燃え上がった。
「もう、わかってるんだからぁ。一筆も書けてません!」
今度こそ涼子は覚悟を決めて本当のことを話そうとした。はじけそうなほど震える端末を汗ばんだ手で握りしめ、呼吸を整える。
ごめんなさいの最初の一文字が乾いた咽頭に張り付いて、なかなか出てこない。躊躇していると後ろから蹴られた。視界が真っ暗になり、鼻から脳天に激痛が走った。
「あんたさぁ。さっきからウザいんだよね」
「ウチらのこと、隠し撮りしててさぁ、調づいてんじゃねえよ」
曳航学園のブレザーを着た女子高生、田實ヒナと倉沢ヨエコが交互に涼子の頭を踏む。ヒナが髪をむんずと掴んで顔をあげさせた。
「あんたさぁ。ヨリを戻そうってんなら、お門違いだよ」
ヒナがグーパンチを涼子の腹に見舞う。
「違うっ……ぺ、ぴョ!」
反論する前にヨエコのビンタがさく裂した。血の混じった唾がセーラー服を濡らす。ヨエコが砂まみれのインフォプレナーを拾い上げた。画面では翡翠ミナが静かに喚き散らしている。ヒナが端末を石灯籠に叩きつけ、ヨエコのローファーが液晶を割った。
「このババァと復縁したいんだろ? おまえ、さっきからずっと祈ってたじゃん」
「若宮様の神徳は縁結びだよ。テメー、荒らしかよ!」
ヒナとヨエコが大の字になった涼子を踏み荒らす。完全なる言いがかりであるが、涼子に弁解する気力も体力も残されていなかった。やがて彼女が意識を手放すと、曳航学園の二人は元の列に戻った。並んでいた女たちは一部始終を静かに見守っており、二人分のスペースもちゃんと開けていてくれた。
「ありがとうございます♡」
ヒナが打って変わって笑顔で礼を述べると、後ろの女がにっこりと会釈した。そして、何事もなかったかのように和気あいあいと談笑をはじめた。
■ 京都府八幡市 飛行神社
男山が西日をさえぎる時刻。
ギリシャ風の神殿をバックにTWX1369が蒸気をたなびかせている。その周囲では世界首都ゲルマニアから到着したばかりの鉄道連隊が臨時の信号場を突貫工事している。もちろん、外套効果が参拝客の目を遮っている。飛行神社はとても変わった神社だ。神主一族は日本の航空機開発にゆかりがあり、飛行機事故の犠牲者を慰霊するために私財を投じて創建したという。
「トラピスト・ワンの裏地球に不時着したら、ここに出てきちゃったのよ。訳が分からないわ」
ハウゼルは秘密警察の事情聴取に目を白黒させながら応じている。
「列車長、要するに連合国海軍の反乱者が召喚門を強制開錠して、ここに至ったと。フムン。私にはさっぱりだ」
太った女警部と入れ替わりに鑑識課員が機関車を調べ始めた。科捜研の女性たちが計器類を調整しながら「信じられないわぁ」を連発している。
彼女たちの統一見解はこうだ。ラーセン・マグナコアの崩壊にギリギリのところで歯止めがかかった結果、余剰な確率変動が生じた。それらがラーセン・マグナコアの自然治癒力とせめぎあった妥協点として、異世界の創造につながったのではないか。
つまり、世界の崩壊に費やされるはずだったエネルギーが行き場を失って、新世界の建設に注がれた、と、こういうことらしい。
「それにしても、地球七個分とはオトロシイ」
女警部がタオルで汗を拭きながら警察手帳を繰った。
例によって大変動のつじつま合わせが行われ、コード2017に系外惑星が七つ見つかったと発表されたことになった。
「異世界隧道が39光年先まで延伸した……、と。開戦前にとんでもないことになりましたね」
女警部が三権分立をおかしそうになったので、ハウゼルがやんわりと政治的発言を諫めた。彼女は汗をかきながら本署に戻っていった。
「それで、望萌と純色の処遇はどうなるのかしら?」
すっかり回復したエリスが心配そうな顔をする。
「なるようになるわよ。後は野となれ大和川の諸君、という格言もあるわ」
「弔電を打たれたいの? それとも枢軸に下品なオンナは不要かしら?」
宇宙人はムッとして、列車長の足元を穴が開くほど睨みつけた。無理もない。殺伐とした雰囲気は事件が
未解決なせいだ。ヨーゼフはすぐ先のベルナール湖に潜んでいる。本初始祖世界とコード2047は密接な関係にあり、いつ何時、こちら側に侵攻してこないとも限らない。魔法龍になる直前までヨーゼフは枢軸との共闘を望んでいたが、大総統エルフリーデはピシャリと拒絶した。終末期異論人と連合国との二正面作戦は間近に控えて、不穏分子を抑え込む余裕はなかった。
二人の剣呑なやり取りをよそに、異世界逗留者の二人は歌合戦を興じている。
今のところ、彼女たちに出来る事はない。ベルナール湖の索敵は危険だ。残り少ない爆撃誘導員を補充する余裕もない。
「山崎おりて淀川を~~わ~たる向うは男山~♪」
ハーベルトが呑気に歌うと、祥子が後半を口ずさんだ。
「行幸ありし先帝の かしこきあとぞ忍ばるる~、って、66番まであるんだよねぇ」
「そうよ、帝政日本の鉄道唱歌は沿線の風景を情緒たっぷりに謡っているの」
「最後まで歌い終わる前に発車できるかしらん」
「シュターツカペレの現場検証はしばらくかかるわ。それともお風呂に入りましょうか?」
ハーベルトが含み笑いをしながら、祥子のスカートに手をかける。
「嫌だよ。ボクはフロは……。あっ、そうだ!」
祥子は遠くを流れる淀川のせせらぎに目を向けた。自分からセーラー服の襟に爪をたて、水着の肩ひもをあらわにする。
「泳ぐのはいいの? 変わった女の子ねぇ。あっ、待ちなさい!」
ハーベルトの頭上にプリーツスカートの残骸が降ってきた。急いで翼をひろげ、白い点になった祥子を追いかける。
「待ちなさい。そっちは木津川よ。ベルナール湖が近いわ」
ふうわりと向かい風にのって祥子を追い越す。木津川の流域に丸木で組んだ橋が見えてくる。
「ねぇ。ハーベルト。棒みたいなのがいっぱい浮いてるよ」
祥子は溢れそうな川面を指さした。
「それは流れ橋よ。わざと流されるように作ってあるの。でも、変ねぇ」
ハーベルトは咆哮/熱病ネットワークを経由してアーネンエルベに気象情報を請求した。今夜の天気は快晴である。木津川流域に豪雨は観測されていない。
「これは?!」
彼女が気付いた、と、同時にハウゼルから緊急連絡が入った。
「ハトガミネ周辺にリンドバーグ・ウォール。局所的確率変動。ワールドクラス・カラーブルー! 連合国です!!」
「リメンバー・サンタモニカ? うそ、まだ開戦予定時刻じゃ……」
Genius is one per cent inspiration and ninety-nine per cent perspiration.
天才とは1パーセントのインスピレーションと99パーセントの発汗である
校倉涼子は天才のひらめきを授かろうと三十分近くもエジソン記念碑に跪いている。しかし、いくら刮目して意識を集中しようとも焦りが募るばかりでいっこうに考えがまとまらない。その間にも右太ももが五分おきにブルブル震える。
「うっさいわね!」
彼女はプリーツスカートのジッパーをおろして内ポケットから携帯咆哮端末を取り出した。咳払いで認証すると画面に可愛らしいキツネが新着巻物をくわえて待っていた。
「新しい咆哮が25件あります」
そのすべてが聖イライサニス学園総合文芸部の名義になっている。
校倉涼子が蜂狩市からわざわざ鳩ケ峰駅まで蛍絆特急を乗り継いでやってきたのも、文芸部長の咆哮から逃れるためだった。だが、山頂駅付近に参拝者向けの咆哮/熱病ネットワークノードが設置されたらしく、圏外表示にならない。
舞台脚本の提出期限はとっくに過ぎている。文芸部長が演劇班をなだめすかして締切を引き延ばしている。しかし、舞台装置の着工が今夕に迫っており、資材や要員の手配を考えると舞台監督や演出家の意向を組みながら即興で執筆するわけにもいかない。きちんとした決定稿を渡せと劇団員から再三要求されている。本来ならば彼女はとっくに降板させられていたはずだが、文芸部にはまともな戯曲が書ける者がいなかったため、しかたなく生き延びている。彼女にはとっさのひらめきで締め切りを乗り越えてきた実績がある。今回も瀬戸際まで追い詰められ、何とかなると楽観していた。しかし、創作の女神ムーサはついに降臨せず、エジソンに肖ろうと思い立った。
「ああああ、なんでこんな大役引き受けちゃったんだろう」
涼子は栗毛色の髪を掻きむしった。茜色に染まる本殿から吹く風は既にしっとりとした夜露を感じさせる。彼女は校章の入ったボストンバッグから黒い三分丈スパッツを取り出して、アンダースコートに重ねた。
社殿北東の若宮殿社から長蛇の列が二つ、涼子の近くまでのびている。厄除開運祈祷を受けようとする若い女性のカップルだ。祀られているのは応仁天皇の皇女で心身健康をつかさどる女性の守護神だ。並んでいる女性たちはリボン状の清め衣に結婚成就の祈願を書きいれている。
「田實ヒナ(18)♡倉沢ヨエコ(17)かぁ……いいなぁ」
涼子は清め衣の個人情報を盗み見て、つい咆哮ネットワークをエゴサーチしてしまう。出てくるわ出てくるわ、あられもない姿の二人が投稿サイトに自撮画像を溢れさせている。
「見るんじゃなかった。がっくし……」
自己嫌悪に陥りながらインフォプレナーを着拒しようとした。その矢先に着メロが鳴り響いた。端末に翡翠ミナの名前が躍る。特大ゴチックフォントで脚本を催促している。文字がぶつかり合い、パッと燃え上がった。
「もう、わかってるんだからぁ。一筆も書けてません!」
今度こそ涼子は覚悟を決めて本当のことを話そうとした。はじけそうなほど震える端末を汗ばんだ手で握りしめ、呼吸を整える。
ごめんなさいの最初の一文字が乾いた咽頭に張り付いて、なかなか出てこない。躊躇していると後ろから蹴られた。視界が真っ暗になり、鼻から脳天に激痛が走った。
「あんたさぁ。さっきからウザいんだよね」
「ウチらのこと、隠し撮りしててさぁ、調づいてんじゃねえよ」
曳航学園のブレザーを着た女子高生、田實ヒナと倉沢ヨエコが交互に涼子の頭を踏む。ヒナが髪をむんずと掴んで顔をあげさせた。
「あんたさぁ。ヨリを戻そうってんなら、お門違いだよ」
ヒナがグーパンチを涼子の腹に見舞う。
「違うっ……ぺ、ぴョ!」
反論する前にヨエコのビンタがさく裂した。血の混じった唾がセーラー服を濡らす。ヨエコが砂まみれのインフォプレナーを拾い上げた。画面では翡翠ミナが静かに喚き散らしている。ヒナが端末を石灯籠に叩きつけ、ヨエコのローファーが液晶を割った。
「このババァと復縁したいんだろ? おまえ、さっきからずっと祈ってたじゃん」
「若宮様の神徳は縁結びだよ。テメー、荒らしかよ!」
ヒナとヨエコが大の字になった涼子を踏み荒らす。完全なる言いがかりであるが、涼子に弁解する気力も体力も残されていなかった。やがて彼女が意識を手放すと、曳航学園の二人は元の列に戻った。並んでいた女たちは一部始終を静かに見守っており、二人分のスペースもちゃんと開けていてくれた。
「ありがとうございます♡」
ヒナが打って変わって笑顔で礼を述べると、後ろの女がにっこりと会釈した。そして、何事もなかったかのように和気あいあいと談笑をはじめた。
■ 京都府八幡市 飛行神社
男山が西日をさえぎる時刻。
ギリシャ風の神殿をバックにTWX1369が蒸気をたなびかせている。その周囲では世界首都ゲルマニアから到着したばかりの鉄道連隊が臨時の信号場を突貫工事している。もちろん、外套効果が参拝客の目を遮っている。飛行神社はとても変わった神社だ。神主一族は日本の航空機開発にゆかりがあり、飛行機事故の犠牲者を慰霊するために私財を投じて創建したという。
「トラピスト・ワンの裏地球に不時着したら、ここに出てきちゃったのよ。訳が分からないわ」
ハウゼルは秘密警察の事情聴取に目を白黒させながら応じている。
「列車長、要するに連合国海軍の反乱者が召喚門を強制開錠して、ここに至ったと。フムン。私にはさっぱりだ」
太った女警部と入れ替わりに鑑識課員が機関車を調べ始めた。科捜研の女性たちが計器類を調整しながら「信じられないわぁ」を連発している。
彼女たちの統一見解はこうだ。ラーセン・マグナコアの崩壊にギリギリのところで歯止めがかかった結果、余剰な確率変動が生じた。それらがラーセン・マグナコアの自然治癒力とせめぎあった妥協点として、異世界の創造につながったのではないか。
つまり、世界の崩壊に費やされるはずだったエネルギーが行き場を失って、新世界の建設に注がれた、と、こういうことらしい。
「それにしても、地球七個分とはオトロシイ」
女警部がタオルで汗を拭きながら警察手帳を繰った。
例によって大変動のつじつま合わせが行われ、コード2017に系外惑星が七つ見つかったと発表されたことになった。
「異世界隧道が39光年先まで延伸した……、と。開戦前にとんでもないことになりましたね」
女警部が三権分立をおかしそうになったので、ハウゼルがやんわりと政治的発言を諫めた。彼女は汗をかきながら本署に戻っていった。
「それで、望萌と純色の処遇はどうなるのかしら?」
すっかり回復したエリスが心配そうな顔をする。
「なるようになるわよ。後は野となれ大和川の諸君、という格言もあるわ」
「弔電を打たれたいの? それとも枢軸に下品なオンナは不要かしら?」
宇宙人はムッとして、列車長の足元を穴が開くほど睨みつけた。無理もない。殺伐とした雰囲気は事件が
未解決なせいだ。ヨーゼフはすぐ先のベルナール湖に潜んでいる。本初始祖世界とコード2047は密接な関係にあり、いつ何時、こちら側に侵攻してこないとも限らない。魔法龍になる直前までヨーゼフは枢軸との共闘を望んでいたが、大総統エルフリーデはピシャリと拒絶した。終末期異論人と連合国との二正面作戦は間近に控えて、不穏分子を抑え込む余裕はなかった。
二人の剣呑なやり取りをよそに、異世界逗留者の二人は歌合戦を興じている。
今のところ、彼女たちに出来る事はない。ベルナール湖の索敵は危険だ。残り少ない爆撃誘導員を補充する余裕もない。
「山崎おりて淀川を~~わ~たる向うは男山~♪」
ハーベルトが呑気に歌うと、祥子が後半を口ずさんだ。
「行幸ありし先帝の かしこきあとぞ忍ばるる~、って、66番まであるんだよねぇ」
「そうよ、帝政日本の鉄道唱歌は沿線の風景を情緒たっぷりに謡っているの」
「最後まで歌い終わる前に発車できるかしらん」
「シュターツカペレの現場検証はしばらくかかるわ。それともお風呂に入りましょうか?」
ハーベルトが含み笑いをしながら、祥子のスカートに手をかける。
「嫌だよ。ボクはフロは……。あっ、そうだ!」
祥子は遠くを流れる淀川のせせらぎに目を向けた。自分からセーラー服の襟に爪をたて、水着の肩ひもをあらわにする。
「泳ぐのはいいの? 変わった女の子ねぇ。あっ、待ちなさい!」
ハーベルトの頭上にプリーツスカートの残骸が降ってきた。急いで翼をひろげ、白い点になった祥子を追いかける。
「待ちなさい。そっちは木津川よ。ベルナール湖が近いわ」
ふうわりと向かい風にのって祥子を追い越す。木津川の流域に丸木で組んだ橋が見えてくる。
「ねぇ。ハーベルト。棒みたいなのがいっぱい浮いてるよ」
祥子は溢れそうな川面を指さした。
「それは流れ橋よ。わざと流されるように作ってあるの。でも、変ねぇ」
ハーベルトは咆哮/熱病ネットワークを経由してアーネンエルベに気象情報を請求した。今夜の天気は快晴である。木津川流域に豪雨は観測されていない。
「これは?!」
彼女が気付いた、と、同時にハウゼルから緊急連絡が入った。
「ハトガミネ周辺にリンドバーグ・ウォール。局所的確率変動。ワールドクラス・カラーブルー! 連合国です!!」
「リメンバー・サンタモニカ? うそ、まだ開戦予定時刻じゃ……」
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