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パニックムービー
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ふたご山にそびえたつ女神が逆光に照らされて、地球儀が回ると給水塔があらわれた。
【ジョーダン・アピール監督】狼の仮面 ~狼出没中。あなたは無事生き延びられるか!?狼パニックムービー
狼のマスクを被った人間が狼を装って人を襲い金品を奪うという事件が起こった。被害にあった人間は全員死亡している。警察だけでは対応できないと判断が下され、政府は対策に乗り出した。しかしいくら待っても狼が現れる気配はない。これは政府が秘密裏に狼の駆除を行っていたのだ。
そんな中、とある男がネットオークションで狼に変身する薬を落札してしまう。
その夜、男の自宅に現れたのは一匹の子犬だった。男は警察に通報する。だがやって来た警察官は、男を犯人だと勘違いし射殺してしまった。男は死に際に自分の罪を暴露する。それは自分の罪ではなかった。男は無実の罪で逮捕され死刑宣告を受けたのだった。
翌朝、ニュースサイトに衝撃的な記事が掲載された。狼に姿を変えた男性が、人間に襲いかかっている映像が世界中に配信されたのだという。男は警察署から逃げ出したあと自宅に籠城しており、その間に撮影されたものだった。動画はSNSを通じて拡散され、たちまち全世界の注目を集めることとなる。
数日後、一人の若い女性の元に差出人不明の手紙が届く。手紙の内容はこうだった。
《狼になれ》 女性はその指示通り実行した。
すると、次の日から狼の目撃例が急増した。そして一週間後、世界中で一斉に暴動が発生した。
狼に襲われた人々のうち生存者はゼロ。
生き残った者たちの証言で判明したのは、狼の外見が、男性から女体化したかのような容姿で全身真っ黒な体毛で覆われており、体長二メートル近く、口は大きく裂け鋭い牙が並んでいるという。その姿はまさに「怪物」。そして人肉を好んで食らう。また人間の言葉でコミュニケーションを取ることができ知能は高く、高度な科学知識を有し、銃や戦車などを意のままに扱うことが可能。しかも魔法のように一瞬で姿を消すこともできる。
さらに驚くべきことに、「狼化現象」を引き起こした人物の中にはかつて人類史上最悪の魔王として君臨した者がいた。彼は異世界より召喚された救世主によって打ち倒され封印されたが、長い年月を経て復活したのだ。
世界は絶望と混乱に陥るかに思われたが、しかし一人だけ狼から身を守れる方法が存在した――それが変身薬『ウルティマ』だ。これを飲めば一時的にだが誰でも狼に化けることができるようになる。ただし効果が切れると反動が来るので注意が必要だという。その日、世界各国で狼化現象が確認されると、人々は狼から逃れるために次々とこの薬を購入し服用していった。そして、世界中の狼は姿を消したのである。
しかし数年後、世界各地で同時に発生した原因不明の狼の大発生。それに紛れて、何者かの手引きにより密かに大量の薬が製造されていたことが、世界各地から寄せられた証言で発覚した。
その製造場所こそが、日本に実在する小さな製薬会社だったのである。
そして、今から五年前。突如起こった世界的狼の大量失踪事件は、狼の全滅と共に終結することとなった。
その事件の渦中に居ながらも無傷であった青年が一人。彼の名前は、草薙御堂といった。
御堂が狼に襲われることはなかった。なぜなら彼もまた狼だったからだ。
しかし彼の狼としての能力は極めて低く、普通の人間と変わらない程度しかなかった。狼に変身するどころか、獣としての本能が目覚めることすらなかった。それなのになぜ彼が襲われなかったのか。それは彼の身体的特徴が狼に似ていたからである。つまり狼に見えれば良かったのだ。そのため狼の毛皮と耳を模したカチューシャ、さらには尻尾が生えるような水着を纏った美女の写真が掲載されたファッション雑誌を所持していた。その写真が、狼に襲われることがなかった最大の要因である。狼が大嫌いだったという女性カメラマンから譲られたものらしい。狼に襲われた時に備えて用意していたのだが……まったくの無意味に終わった。狼たちは、この男の正体を知らない。だから彼には手を出さなかったのである。しかし正体を知った時、彼らは間違いなく牙を剥くだろう。なぜなら狼は狡猾な生き物なのだ。もし狼の群れと遭遇してしまったら……。果たして御堂は狼に変貌することなく生き残れるのか? 狼は絶滅したはずだった。だが実際は、水面下でひっそりと息を潜めて暮らしていただけだった。この世に生きる全生物の頂点に立ち、全ての生物を支配せんとする魔性の王。その王が目を覚ましたとき世界は滅亡へと導かれるという。
「……俺が?」
俺はそんなことしない、と言いかけて、慌ててその言葉を呑み込んだ。ここでその台詞は逆効果だと気づいたのだ。相手はすでに狼に変化している。嘘は通用しないだろう。ならば、せめて相手の勘違いを助長させるしかない。そう思いなおした御堂が口にしたのは。
「ああ、そうだよ」
だった。
「狼だぜ」
あえて肯定することで、相手に「狼は実在したんだ!」と思い込ませようとしたのだ。そしてあわよくばこの場で仲間に引き入れようと目論んでいたわけだが……。どうやら失敗のようだ。相手は完全に理性を失ってしまっている。
「狼は滅びなければならない!」
叫びとともに放たれた狼パンチは空を切り、壁に激突した。コンクリートの塊が砕け、破片が宙に舞い上がる。
【ジョーダン・アピール監督】狼の仮面 ~狼出没中。あなたは無事生き延びられるか!?狼パニックムービー
狼のマスクを被った人間が狼を装って人を襲い金品を奪うという事件が起こった。被害にあった人間は全員死亡している。警察だけでは対応できないと判断が下され、政府は対策に乗り出した。しかしいくら待っても狼が現れる気配はない。これは政府が秘密裏に狼の駆除を行っていたのだ。
そんな中、とある男がネットオークションで狼に変身する薬を落札してしまう。
その夜、男の自宅に現れたのは一匹の子犬だった。男は警察に通報する。だがやって来た警察官は、男を犯人だと勘違いし射殺してしまった。男は死に際に自分の罪を暴露する。それは自分の罪ではなかった。男は無実の罪で逮捕され死刑宣告を受けたのだった。
翌朝、ニュースサイトに衝撃的な記事が掲載された。狼に姿を変えた男性が、人間に襲いかかっている映像が世界中に配信されたのだという。男は警察署から逃げ出したあと自宅に籠城しており、その間に撮影されたものだった。動画はSNSを通じて拡散され、たちまち全世界の注目を集めることとなる。
数日後、一人の若い女性の元に差出人不明の手紙が届く。手紙の内容はこうだった。
《狼になれ》 女性はその指示通り実行した。
すると、次の日から狼の目撃例が急増した。そして一週間後、世界中で一斉に暴動が発生した。
狼に襲われた人々のうち生存者はゼロ。
生き残った者たちの証言で判明したのは、狼の外見が、男性から女体化したかのような容姿で全身真っ黒な体毛で覆われており、体長二メートル近く、口は大きく裂け鋭い牙が並んでいるという。その姿はまさに「怪物」。そして人肉を好んで食らう。また人間の言葉でコミュニケーションを取ることができ知能は高く、高度な科学知識を有し、銃や戦車などを意のままに扱うことが可能。しかも魔法のように一瞬で姿を消すこともできる。
さらに驚くべきことに、「狼化現象」を引き起こした人物の中にはかつて人類史上最悪の魔王として君臨した者がいた。彼は異世界より召喚された救世主によって打ち倒され封印されたが、長い年月を経て復活したのだ。
世界は絶望と混乱に陥るかに思われたが、しかし一人だけ狼から身を守れる方法が存在した――それが変身薬『ウルティマ』だ。これを飲めば一時的にだが誰でも狼に化けることができるようになる。ただし効果が切れると反動が来るので注意が必要だという。その日、世界各国で狼化現象が確認されると、人々は狼から逃れるために次々とこの薬を購入し服用していった。そして、世界中の狼は姿を消したのである。
しかし数年後、世界各地で同時に発生した原因不明の狼の大発生。それに紛れて、何者かの手引きにより密かに大量の薬が製造されていたことが、世界各地から寄せられた証言で発覚した。
その製造場所こそが、日本に実在する小さな製薬会社だったのである。
そして、今から五年前。突如起こった世界的狼の大量失踪事件は、狼の全滅と共に終結することとなった。
その事件の渦中に居ながらも無傷であった青年が一人。彼の名前は、草薙御堂といった。
御堂が狼に襲われることはなかった。なぜなら彼もまた狼だったからだ。
しかし彼の狼としての能力は極めて低く、普通の人間と変わらない程度しかなかった。狼に変身するどころか、獣としての本能が目覚めることすらなかった。それなのになぜ彼が襲われなかったのか。それは彼の身体的特徴が狼に似ていたからである。つまり狼に見えれば良かったのだ。そのため狼の毛皮と耳を模したカチューシャ、さらには尻尾が生えるような水着を纏った美女の写真が掲載されたファッション雑誌を所持していた。その写真が、狼に襲われることがなかった最大の要因である。狼が大嫌いだったという女性カメラマンから譲られたものらしい。狼に襲われた時に備えて用意していたのだが……まったくの無意味に終わった。狼たちは、この男の正体を知らない。だから彼には手を出さなかったのである。しかし正体を知った時、彼らは間違いなく牙を剥くだろう。なぜなら狼は狡猾な生き物なのだ。もし狼の群れと遭遇してしまったら……。果たして御堂は狼に変貌することなく生き残れるのか? 狼は絶滅したはずだった。だが実際は、水面下でひっそりと息を潜めて暮らしていただけだった。この世に生きる全生物の頂点に立ち、全ての生物を支配せんとする魔性の王。その王が目を覚ましたとき世界は滅亡へと導かれるという。
「……俺が?」
俺はそんなことしない、と言いかけて、慌ててその言葉を呑み込んだ。ここでその台詞は逆効果だと気づいたのだ。相手はすでに狼に変化している。嘘は通用しないだろう。ならば、せめて相手の勘違いを助長させるしかない。そう思いなおした御堂が口にしたのは。
「ああ、そうだよ」
だった。
「狼だぜ」
あえて肯定することで、相手に「狼は実在したんだ!」と思い込ませようとしたのだ。そしてあわよくばこの場で仲間に引き入れようと目論んでいたわけだが……。どうやら失敗のようだ。相手は完全に理性を失ってしまっている。
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