ジェシカの夢

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神に問うた

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次に目が覚めると自分のベッドの上だった。そこには自分の体が横たわっていた。顔は青ざめて、手足は真っ白になっている。ところどころに浮腫が出ている。それを一目見て察した。これは私の遺体だ。私は死んでいるのだ。見回すと祭壇に献花されていてろうそくが灯っている。そして大勢のすすり泣きが聞こえてくる。そして、見たくは無かったのだけど、いやがおうでも視界に飛び込んでくるものがある。アクセルやエヴァの写真だ。黒い縁取りがある。遺影はどれも見覚えがある顔ぶれだ。やはり、本当に死んでしまったのだ。もう、どうあがいても、何をやっても無駄だ。終わりを受け入れよう。そして葬儀が始まるまで少し眠っていようと、目を閉じ眠りについた。

* * 
ジェシカの葬儀が始まった。
しかし、遺体は死後硬直が激しくほとんど動かない状態なので生前の姿を写したものを使い、祭壇の前で棺の中に納められて参列者たちから手向けの歌を送られ、それが一通り終わったところで蓋が閉められ霊安室に移された。
しかし、葬儀といっても親しい友人達による簡素なもので、遺族であるジェシカの母親は既に他界しているため、喪主は父親が務めた。
また、父親は高齢だったためジェシカの死後の諸々の手続きは全て妻に任せ、自身は葬儀に出席し、その後は家で休んでいたのだが、数日後から容態が悪化しそのまま帰らぬ人となった。ジェシカの死によって夫婦揃って天涯孤独の身となってしまったのだった。ジェシカはその事については何とも思わなかった。ただ、せめて誰か一人だけでも傍に来て欲しかったのだが、誰も来ることは無かった。
そして、ジェシカの納骨が行われることとなった。
だが……ジェシカの母親は病気で亡くなっており墓の場所が分からず、結局父親の遺骨と同じ場所で埋葬されることになった。それでも、ジェシカは寂しくなどなかった。なぜなら彼女には友達がいるから……。だから、悲しくなんて無い。寂しくも無いはずなのに、目から流れる涙は止まらない。
(ねぇ、神様? どうしてこうなったんですか?)
ジェシカは答えてくれないであろう質問を神に問うた。それは誰にも聞かれることなく消えていく。
そのはずだった…… すると、どこからともなく返事が来たのだった……その声は優しく慈愛に満ちた声色であった。
【私が、あなたを巻き込んだせいでこんな結末になってしまった。許して欲しい】
そんな優しい言葉をかけてくれる人物を彼女は知っていた。忘れたくても忘れられないほど、脳裏に深く刻みつけられている。彼女は恐る恐る声の主を呼んだ。
――
アクセル? 彼女は自分が見ているものは現実ではないとすぐに分かった。何故ならそこにいるはずが無いから……そして夢であることを確信した彼女は再び眠りについた。……しかし…… 彼女はまた夢を見た。今度はもっと生々しいリアルなものだった。彼女が見たもの、それは母親の姿だ。
母親の亡骸が棺の中に移されようとしている所だった。ジェシカはそれを見ていたのだが何故か動けずその場に棒立ちしていた。やがて、父親が棺の上に土を掛け始めたその時、ジェシカの意識は薄れていった。
その後ジェシカが目覚めた場所は見知らぬ天井ではなく自宅のベットの上だったが……そこには先程見たはずの母親の遺体は無かった。そればかりか自分の遺体さえも無くなっていたのだ。代わりに、母親が生前よく着ていたワンピースだけが丁寧に畳まれ枕元に置かれていた。恐らく着替えさせるために置いてくれたのだろう。
そしてジェシカが寝ている間も彼女の葬儀は粛々と執り行われた。そして、最後に墓へ入れる時に彼女からあるお願いをしたのだった。それは、墓石の裏を掘り起こして貰うというもので彼女は、それが何かわかっていた。
墓の底からは、母親の形見とも言える日記が出てきたがその内容はあまりにも衝撃的なものばかりだった。それは、今まで自分がしてきた事への懺悔の記録だった。
それを読んでいるうちに、自分が如何にして生きてきたのかを知った彼女は次第に罪悪感を感じ始めた。そして、自分のせいで亡くなった人達のことを思い浮かべ謝罪の言葉を口にする。
ごめんなさい。
本当に私は愚かな人間でございました。
どうか私を許してください……。
それは贖罪では無いのかもしれない。でも今のジェシカにとってはそうすることしか出来ないのであった…………。これから始まる百億年。考えることすら不可能な歳月が希釈してくれる。時の流れに身をまかせすがるしかない。それもまた、愛かもしれない。
そして時は流れる。
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