ジェシカの夢

YHQ337IC

文字の大きさ
8 / 9

突然告げられた言葉

しおりを挟む
「えぇ何ですか?私にわかることでしたら」
そう答えると、エヴァはとても真面目な顔をしながら口を開く。それは今までとはどこか違った口調のような気がしたから……なんと言えばいいのか分からないけれど。でも確かに違う…… エヴァの表情はどこか寂しげにも見えて…… ジェシカの心臓が大きく鼓動する……それは恐怖からなのか不安からなのか……ただ分かるのはエヴァの唇が動くのを待つしかない、というだけで。そしてようやく開いた口から出た言葉は「ジェシカちゃん……あなた、恋をしているわよね?」と。
言われた瞬間、息をするのを忘れていたような気がする、いや実際に止まっていたと思う。それほどまで驚いたし戸惑ったから……そしてそれと同時に嬉しかったんだとも思う、私がアクセル様の事を好きになっているんだということを、それが分かってもらえたことが。
だけどそれは同時に悲しくもあることだと思うから……きっと言えない。
「きっと、いいえ、絶対そうよ。ジェシカちゃんは恋をしてる。でもね…びっくりしないでね。実は私たちみんな死んでいるの。ここはあの世なの」
突然告げられた言葉は思いもよらないものだった。まさか死んだって言うんですか!? 驚きを隠せず口を開けてしまうが、それを見ても尚、表情を変えるどころか微笑みを浮かべながら口元をナプキンで拭う。
そしてその笑みの理由を私はすぐに知ることになる……それはまたエヴァさんの一言によって。
「あ、ちなみに言っておくけどね、これはただのお節介でもないし悪戯でもないわよ?本当に私たちはあの世にいるんだから。でもね。死は誕生のはじまりなの」どういうことだろう……理解ができない、何を言っているんだこの人は。でもエヴァさんの声色はいつもと違い優しい声に聞こえたのは間違いではなかった。
「えっと……ちょっと待って下さい、よくわかりません」
「うんそうでしょうね。いきなりこんな話をしても理解できるわけがないわよね」
エヴァさんの言葉を聞きながら考える。でも答えが見つからない……。
ただ黙っているだけじゃなくて少しでも情報を手に入れようと必死に考えた。考えるだけ無駄だった。エヴァの頭上に輪っかがある。それが何を意味してるか言わずもがなだ。それでも考えずにはいられない。
どうしよう……どうすればいいんだろうか。そんな時だった、不意にテーブルの下に置いた右手の上に暖かいものが重なる。視線を向けるとそこにいたのは大きな黒い犬。いつの間に来たんだろう……さっきまでは確かにいなかったのに。それにとても大きい…… 私よりも少し大きめくらいの大きさはあると思う、もしかしたらもっとあるかもしれない……そう思った瞬間、犬が人語で吠えた。「私はベラだ。ジェシカよ、お前は私を苦しめた。アクセルやエヴァや大勢の妖精を不倫で苦しめた。お前は私も苦しめた。だから、冥府魔道に落ちてもらったのだ。ここは地獄だ。エヴァの言う通り確かに全員死んでいる。しかし死は終わりではない。お前は罪を償うのだ。不倫の罪を。そしてこの地獄で百億年の刑期を務めあげれば転生できるワンチャンあるかもしれないぞ。」
ジェシカは己の置かれた境遇を知り、青ざめた。そして本当に恐ろしくなって言葉を失った。「私がそんな大罪を犯していたなんて…ごめんなさい……」
そう口にするとベラの毛に覆われた手を両手で包み込むように掴む。するとベラは満足げに「よし」と言うとその体を霧散させた。
それと同時に周りの風景も少しずつ変化していくのを感じた。
最初は少しの違和感だったが次第に景色自体が薄らいでいくのを見て、もうそろそろお別れだと知る……その事に胸を痛めながら私はエヴァを見上げた。
「みんなもありがとうね。これから独房に入ったらしばらく会えなくなるけど、二度と会えなくなるわけじゃないから…百億年後にまた会いましょうね」
そう言ったエヴァの頬を一筋の雫が流れるのが見えてしまった。そんな姿を見てしまえばこちらも涙が出てしまう。きっとこの人は心根のいい人なんだろうと。
それなら尚更早くここを出てあげたい。
だってこんなに綺麗なんだから…… そうして意識がだんだん薄れていき、目の前の風景が真っ暗になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...