シリーズ、世にも得体の知れない物語②

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第六章『捜査』

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「私達を閉じ込めた人物は、どうして鍵をかけなかったんだと思いますか」
私は刑事さんに向かって問い掛けてみた。「私達が逃げ出さないと思っているんですかね、それとも私達に解かせることが目的だとか……」
そう言い終えてから、私自身も馬鹿げたことを口にしたものだと思った。答えを期待して聞いたわけではないが「ふむ、それも可能性の一つかもしれないね」と意外にも真剣な面持ちの返答があって思わず目を丸くした。
その後で私が質問すると、刑事さんはゆっくりと話し出す。「我々がこうして無事に解放された理由は一つしかない」それは私の考えていたものと一緒であった。「犯人は我々を殺すことができなかった、ということでしょうね」
「私も今まさに同じことを考えていました」
「ほう」刑事さんが興味ありげにこちらを見たので私は「もし本当にそういうことならですが……」と切り出してみることにする。
「実は今回のこの事件……殺人ではないのかもしれません」そう言うと驚いたのか、それとも私のことを疑っているのか、じっと見つめてくる。「どういうことですかな」
私が一連の出来事について思いつくままに語ると、その度に彼は何度も相槌を打ってくれたのだった。
「確かに君の言っていることはもっともな話だ」私は驚いて聞き返す「……納得できるんですか?」
「もちろんですよ」と言ってから私の方へと体を近づけてくる。
「第一発見者の証言がありますからな、彼が嘘をついているのでなければ、あの現場に残されていたのは死体だけではなかった、ということになります。君の言葉を借りれば、あれが『生きた人間』だったとすれば辻妻が合うんですよ」そう言って私の顔をのぞきこんでくる。
しかしそんな都合のいいことがありうるのだろうか、私は考え込んだ。「つまりですね」彼は続ける。「君は『あの場に現れた少女が、あの日、亡くなったはずの人間の子供であるならば話は別なのではないか?』と言いたいのでしょう」
私は「はい」と答える。
「その仮説の根拠は何なのですか?」そう聞かれたので、少女の髪が黒くないことを挙げてみせたが、彼の中ではそれが引っかかるようで難しい表情で何かを考えているようだった。「髪色については、どう説明されるのですかな」
それに関してはいくつか理由を思いついたものの自信が持てるほどのものでもなく説明をするのは憚られた。「まだわからないことも多いんです、それに……」と私はそこで一度口をつぐんだ。これは口にすべきかどうか迷ったのだ、自分が犯人であると思われる可能性があるのではないかと不安を感じたからである。それでも刑事さんの真っ直ぐに私を射抜いている視線を感じてしまうと観念する他は無かったのだが……。「まだ誰にも言っていないんですけど、私……霊感みたいなものがあるらしくって……」
そう言った瞬間、「ふふっ」という声とともに刑事さんの体が僅かに揺れていた。
そして次の瞬間には「あははははっ」と笑い出したので、さすがに私も驚き慌ててしまう。「な、なぜ笑うのでしょうか」
彼はひとしきり笑い終えると目尻に浮かんでいた涙を拭うと息を整えて、すまないと謝りながらも笑いの発作に耐えきれないといった感じである。
それから呼吸がある程度落ち着いたところで口を開いたのだけれど、「いや、すまないすまない」と再び軽く笑ってから続けた。「別に君をバカにしているわけではありません。ただあまりにも突拍子もない話でしたのでつい、ねぇ」と言ってまた思い出してくすくすと笑っていた。
私もつられて吹き出しそうになるのを抑えて「そうなると思っていましたよ」と強気な態度で返した。しかしすぐに冷静さを取り戻すと「でも真面目な話、私の発言を信じてくださるとはとても思えませんでしたから、言うべきか悩んでしまったんです」と言う。それに対して
「まあその点は大丈夫だと信じてほしい」と言って、それからさらに付け加えた。「それに今の話を聞いた限りにおいては、君は事件とは関係ないと思われます」
「ありがとうございます」
私が頭を下げるのとほぼ同時に車のブレーキランプが光って車が止まった。どうやら到着らしい。「では我々はこれで失礼します」と言ってから刑事さんは車外に出る。続いて私も出ようとした時、背中越しに「最後にもう一つ聞いてもいいかな」と声を掛けられる。
振り返ると、彼の顔つきは先程までの穏やかなものとは違っていた。
「はい」と返事をしたものの、一体何を聞かれるのだろうかと緊張してしまう。
「君はこの事件に関して、どこまで知っているのかね?」
「ほとんど何も知りません」そう答えると「では教えてくれないか、どうしてあそこに居たのかということについて」と返ってきた。
私は首を横に振ると「わかりません」と正直に言った。
「そうか、わかった」そう言った後で彼は続けてこう言った。「では、くれぐれも慎重に行動するようにね」
私は「はい」と答えて車を降りると丁寧にお辞儀をした。
「ご苦労様でした」と刑事さんの声を聞いて顔を上げると、そこには既に誰も居なかった。
駐車場を出てから歩道に出ると、空はすっかり暗くなっていた。
「さっきの刑事さんは、きっと幽霊が見えたんだ」
私は呟くと、ふっと笑ってから家路につくことにした。
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