最弱スキル《回避》で異世界最強になる死にゲーマスターの話

まこる

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はじまり

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「ここでローリングで、攻撃弾いて、剣ぶっ刺したら......よし、これでレベル1縛りはクリアだな」

彼は今、死にゲーをやっている。その中でも、アクションRPGと呼ばれるジャンルだ。

「......もうすぐこのゲームも遊び尽くしちゃうな」

彼はコントローラーに視線を落とした。ずいぶん使い古したコントローラーが、彼の死にゲー歴を物語っている。

「......ご飯まだかな」

彼は25歳実家暮らしのニートである。両親はまだ彼のことを人間扱いしてくれるが、酷いのは兄家族だった。

「ちょっとトイレ......」

ゲーミングチェアから立ち上がり部屋から出ると、兄とばったり会った。兄はかなりヤンチャな人で、10代で結婚してもう子供がいる。

金髪に褐色肌。いくつかのピアスがニートを威嚇する。

「あ? お前まだ生きてたのかよ」

「うん......あ、そういえば、心愛ちゃんは何才に」

そこまで言いかけると、兄は彼の胸ぐらを掴んで軽く持ち上げた。

「テメェ、心愛の名前を呼ぶんじゃねぇよ。穢れんだろうが」

「ご、ごめ......ごめん......」

涙目になりながら謝ると、兄は彼を離して、苦しくて四つん這いになった背中を踏みつけた。

「テメェは一生ゲームやってりゃいいんだよ。このクソデブが」

「ごめんなさい、ごめんなさい......」

頭を両手で覆って縮こまった姿は、負け犬の一言で片付いてしまうほど無様だった。

そして兄は、トドメに一言を残していった。

「お前、生きてる意味ねぇだろ。さっさと死ねよ」

その言葉は刃と化し、彼の心に深く突き刺さった。

兄は満足して1階のリビングに降りていった。それを確認して、彼は廊下の床を叩いた。

「クソ......! 」

そんなことでストレス発散になるわけもなく、彼は大人しく用を足して部屋に戻っていった。

しばらくゲームを続けていると、部屋の扉がいきなり開いた。

入ってきたのは、兄の娘である生意気な子供。心愛である。

「わぁゲームやってる。キモデブーー! 」

すると心愛は手に持っていたコップ一杯の水を、彼のゲーム機に向かってぶちまけた。

「あ! ちょっと! 」

「キャハハハ! 」

コップを放り投げて、無性にイラつく笑い声をあげ、心愛は部屋を出ていった。

「......もう」

床に軽く水たまりができており、タオルでもないと拭くことができない。

ゲーム機にかかった水滴をティッシュで拭き取り、テストプレイをしてみたが、少し動作が悪くなっている。水が内部に侵入してしまったのだ。

「前から......悪くなってたし......」

コップを拾い上げながらそう自分に思い込ませた。どうしようもなくこみ上げる怒りを収めるためだ。

すると、ドアをドンドンと強く叩く音が聞こえた。ドアに近づいて恐る恐る開けてみると、そこには心愛と手を繋いだ兄の結婚相手、つまり義理の姉が居て、怒りの表情で彼を見ていた。

「ちょっとあんた、心愛に近づいたでしょ。近づかないでって前から言ってるよね? 」

「え? いや、心愛ちゃんの方から......」

「しかも、心愛に水かけたんでしょ。マヂでありえないんだけど」

見ると、心愛はびしょ濡れとまでは行かなくとも、確実に濡れていた。おそらく、自分で水を浴びたのだ。彼を貶めるためだけに。

「いや、そんなことしないですよ......」

「じゃあその手に持ってるコップなに? 」

「あッ、これは......」

「もういい。旦那に言うから」

「え!? それは......! 」

そこまで言うと、彼女は扉を強く閉めてしまった。

兄に報告される。それはすなわち、兄の拳が飛んでくることを意味している。

彼は絶望して、ドアから部屋を振り返った。すると、バチッという嫌な音が聞こえた。

ゲーム機の裏にあったコンセントにも水がかかっており、水たまりに漏電していた。

「あッ!! 」

ヤバいと思って慌てたのがまずかった。彼は足汗で滑って転び、電気の流れる水たまりに顔面から胸部にかけてダイブした。

そこで彼の人生は終わった。
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