般若と椿

ほーたん文子

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 昔々、二つの大きな国が大昔から戦争をしていました。どれくらい長くかというと、戦争の原因を誰一人として覚えていないほど。
 そんな中、戦場とはほど遠い辺境の小さな村に、ある娘がおりました。娘が微笑むと、足下の花は恥じらってしおれてしまうほど美しく、困っているなら人も動物も手助けするほど心優しい娘でした。
 村の人々は口を揃えて「あの子はなんて清らかで素晴らしいんだろう」と褒めちぎり、両親はいつも誇りに思っていました。
 のどかな村に穏やかな村人たち、厳しくもあたたかい両親と共に暮らす娘は、それはそれは幸せでした。
 しかし突然に、そして無惨に幸福は覆されました。
 ある満月の晩、敵国の兵士が村を急襲したのです。家々に火が放たれ、村人は見境なく次々に殺されました。とうに眠りについた娘の家も例外ではありません。扉を蹴破って入り込んだのは、三人の兵士でした。飛び起きた両親は娘を守ろうとしましたが、無駄な足掻きでした。父と母は槍に一突きされ、串刺しにされて絶命しました。娘は胸を一閃され、溢れかえるほどの血を流して失神しました。

 細い目をぎらぎらさせて家中の金目の物をせっせと盗む痩身の男。

 大きな口をにやにやと歪ませながら時々ひくつく母を辱め、体中を剣で刺す太った男。

 頭をゆらゆら、へらへらさせながら、父の四肢を臓器を捩りきる長身の男。

 薄れる意識の中、三人の男とその光景を瞳に灼きつけた娘は、つよくつよく、復讐を誓ったのでした。
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