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――こっちでもこんなに星が綺麗に見える日ってあるんだ。
スーツが汚れてしまうのも構わず、大きく伸びをしながら土手に寝転がる。
久しぶりに嗅いだ、緑の匂い……
なんだか懐かしくて、ここが故郷から遠く離れた都内近郊だと忘れてしまいそうだ。
帰り間際、さんざん上司のお説教を浴びせられて、駅構内のコンビニで缶ビールとナッツを買い、まっすぐ誰も待っていない家に帰るのが嫌で、こうして寄り道をしている。
ビールとつまみと私……
――私は、おっさんか。
つっこんでくれる相方もいない私は、また、グビっとビールをあおり、芝の上にもう一度寝転がる。
上司のお説教が頭の中で永遠、繰り返され、酔いのせいもあってか急に涙が溢れてくる。
(くそー、私はこんな思いしたくて東京に出てきたわけじゃないんだぞ)
上京するまでの私はデパートもおしゃれなカフェもない、ど田舎で独り、東京でスマートに暮らしている自分を想像しては、明るい未来設計図を描いていたものだ。
それが上京して1年、早くもあんなに憧れていた東京に挫折しかけているなんて……
親や地元の友達には盛大に送り出されてしまった手前、なかなか愚痴もこぼせない。
どうにか理由をつけて、実家に帰れるよう頼んでみようかな……
急に弱気なった私にビールは、これでもかと体内を侵食し始める。
(あー、もう今日は最悪ここで寝ちゃってもいいか。こんな泥酔女に声をかける猛者もいないだろう。ストッキングも破けちゃってるしなぁ)
ゆらゆらと揺れながら上半身だけ起き上がり、僅かに残っていた乙女心でストッキングの破れ目を確かめる。
――コツーン!
私の頭頂部に何か硬いものがぶつかった。
「痛ったー!」
即座に頭を触って確かめる。
どうやら、出血はしなかったようだ。
酔いのせいで頭に隕石でも降ってきたのかと思った……
けれど降ってきた隕石が頭に当たるなど、宝くじの一等当選確率よりも低いと聞く。
頭の衝撃で急激に酔いが冷め、降ってきた小石を手に私は辺りの様子を確かめる。
すると、おどおどと何かを探す怪しげな男性が1人――
「ちょっと! もしかしてあんた?」
見るからに弱々し気な男性に、私は戦闘態勢で臨んだ。
「うわわっ。すみません。石当たってしまいましたか! お怪我ありませんでしたか?」
「――ったく。夜だから誰もいないとでも思ったの? まさか! 私目掛けて投げたとか?」
「そんなっ。すみません。誰もいないかと思って小石蹴ってました」
……嘘くさっ
小石蹴ってるなんて、マンガでいじけたシーンの比喩でしか見たことないわ。
どうやったらそんな取ってつけたような嘘を……
「本当なんです。あの、小石で遊んでました……あのっ。小さいときに『自分ルール』みたいなもの作って学校の帰り道とか遊んだことありませんか?」
「ん?何それ」
「ほら『これだっ』て決めた石を学校から家までの道をずっと蹴って無事に到着できれば、いいことがあるみたいな。やったことありませんか?」
――プッ
予想の遥か斜めをいく答えに思わず噴き出す。
「やっぱりおかしいですよね。本当にすみませんでした!」
「あるよ、私も」
「へ?」
「その自分ルールみたいなので遊んだこと」
「えっ、本当ですかぁ!やっぱり石ですか?」
――何の話だよ、これ。
無言で突っ込みを入れつつ、
スーツが汚れてしまうのも構わず、大きく伸びをしながら土手に寝転がる。
久しぶりに嗅いだ、緑の匂い……
なんだか懐かしくて、ここが故郷から遠く離れた都内近郊だと忘れてしまいそうだ。
帰り間際、さんざん上司のお説教を浴びせられて、駅構内のコンビニで缶ビールとナッツを買い、まっすぐ誰も待っていない家に帰るのが嫌で、こうして寄り道をしている。
ビールとつまみと私……
――私は、おっさんか。
つっこんでくれる相方もいない私は、また、グビっとビールをあおり、芝の上にもう一度寝転がる。
上司のお説教が頭の中で永遠、繰り返され、酔いのせいもあってか急に涙が溢れてくる。
(くそー、私はこんな思いしたくて東京に出てきたわけじゃないんだぞ)
上京するまでの私はデパートもおしゃれなカフェもない、ど田舎で独り、東京でスマートに暮らしている自分を想像しては、明るい未来設計図を描いていたものだ。
それが上京して1年、早くもあんなに憧れていた東京に挫折しかけているなんて……
親や地元の友達には盛大に送り出されてしまった手前、なかなか愚痴もこぼせない。
どうにか理由をつけて、実家に帰れるよう頼んでみようかな……
急に弱気なった私にビールは、これでもかと体内を侵食し始める。
(あー、もう今日は最悪ここで寝ちゃってもいいか。こんな泥酔女に声をかける猛者もいないだろう。ストッキングも破けちゃってるしなぁ)
ゆらゆらと揺れながら上半身だけ起き上がり、僅かに残っていた乙女心でストッキングの破れ目を確かめる。
――コツーン!
私の頭頂部に何か硬いものがぶつかった。
「痛ったー!」
即座に頭を触って確かめる。
どうやら、出血はしなかったようだ。
酔いのせいで頭に隕石でも降ってきたのかと思った……
けれど降ってきた隕石が頭に当たるなど、宝くじの一等当選確率よりも低いと聞く。
頭の衝撃で急激に酔いが冷め、降ってきた小石を手に私は辺りの様子を確かめる。
すると、おどおどと何かを探す怪しげな男性が1人――
「ちょっと! もしかしてあんた?」
見るからに弱々し気な男性に、私は戦闘態勢で臨んだ。
「うわわっ。すみません。石当たってしまいましたか! お怪我ありませんでしたか?」
「――ったく。夜だから誰もいないとでも思ったの? まさか! 私目掛けて投げたとか?」
「そんなっ。すみません。誰もいないかと思って小石蹴ってました」
……嘘くさっ
小石蹴ってるなんて、マンガでいじけたシーンの比喩でしか見たことないわ。
どうやったらそんな取ってつけたような嘘を……
「本当なんです。あの、小石で遊んでました……あのっ。小さいときに『自分ルール』みたいなもの作って学校の帰り道とか遊んだことありませんか?」
「ん?何それ」
「ほら『これだっ』て決めた石を学校から家までの道をずっと蹴って無事に到着できれば、いいことがあるみたいな。やったことありませんか?」
――プッ
予想の遥か斜めをいく答えに思わず噴き出す。
「やっぱりおかしいですよね。本当にすみませんでした!」
「あるよ、私も」
「へ?」
「その自分ルールみたいなので遊んだこと」
「えっ、本当ですかぁ!やっぱり石ですか?」
――何の話だよ、これ。
無言で突っ込みを入れつつ、
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