夢じゃなかった！？

マジェストーラ国立魔法学院 編入

水の都セルリアン～贈られた餞3

「えーと、どうしますシオンさん？」

「…祝福巡りは残すところ三ヵ所だが、アーヤはどうしたい？残りも回る？」

(突発的な事態となった今…全てこれから回るとなると帰りの幌馬車に間に合うかどうか怪しくはなるが。ノワールのいる祝福場に関心もあるだろう。この際予定などいくらでも変えればいい。)

「私は…大したことしてない身ではあるんですけど、正直ちょっと色々あったのでこれ以上回らなくてもいいかなと思います。」

(う～ん、ノワールの祝福場も興味あるけど、他を見て回るにもちょっと疲れた気がするんだよね。)

「それなら、帰りの幌馬車の時間も近いし祭りは切り上げるとしようか。」

「帰りの心配でしたら、街まで私が転移でお送りましょうか？アーヤさんのことです見事祝福を集められているのでしょう？せっかくの祝福巡り全て回ってみたくはありませんか？」

「偶然にも祝福印は集まってますけど、さっきまでの一件でお祭りって感じじゃなくなってしまって。その、我慢とかしてるわけではないです。先生はお忙しいですし、わざわざ送って頂かなくても大丈夫ですよ？」

「ブラム先生のお気遣いは嬉しいのですが、学院へ戻らないといけませんし、アーヤもこう言ってます。幌馬車でこのまま城下街に向かいます。」

「そうですか。もちろん無理にとは言いませんよ。お二人の希望が第一ですから。」


「１日中祭りを見て回るのではなく、城下に寄るご予定があったのでしたら、そろそろ移動しなくてはいけませんな。では私とノワールはここでお別れですね。」

「何はともあれノワールが見つかり良かったです。」

「オーナーさんのお手伝い頑張ってねノワール。」

「ありがとうございます。デュカーレ様、アーヤ様。おや？…ノワールどうしました？」


二ャーオ　


ノワールがアーヤの足元へ小走りで近寄り、上目ずかいに鳴いた。


“姫ひいさま、ノワールが何か伝えたいみたいにゃ。”

(何だろう？あ、お別れの挨拶とか？ふふ、かわいいんだからノワールってば。)

屈んでノワールの目線にしゃがむ。何か話したいのかもしれないと思い、近づくノワールを見ていたアーヤ。ノワールの鼻先がぐっとアップになったと思ったその時…。


二ャーオ　　

(何かな？……ん？)


ペロ


？！

「んん？！」

それは一瞬の出来事でアーヤを始め誰もが予想だにしなかったことだった。ノワールはしゃがんだアーヤの膝に片手をついて二本足で立ち上がり、そのまま口元に近い頬に口づけ…ペロリ。

通訳していた水稀、他の面々もノワールの行動に目を見開いて驚く。アーヤも己の身に起きたことを理解するまで固まった。