夢じゃなかった！？

エスリアール王城 出会い

出張はシュッと転移魔法で2

「学院長、本日、私の魔法講義は先程Ａクラスが最後でしたし、是非とも編入前の出張面接官は私に行かせて頂けませんか？」

「ふむ…。Ｓクラス担任、筆頭魔法講師の実力なら問題ないか。何より早く報告を受けられるしな。今回の面接官はブラム先生に任命しよう。」
「ありがとうございます。」

「つきましては、エスリアール君一つ確認させて下さい。数日間、帰城している間に何か魔法は使いましたか？」
「ええ、使いましたがそれが何か？」

「では、転移可能です。君の使った魔法から魔力の痕跡こんせきを目印にこれから転移してきます。」
「そんな！？数日も前の魔力の痕跡を辿たどるなど不可能です！」

「普通なら、そうでしょう。しかし、私は魔力感知が得意ですから。ほら、仮にも筆頭魔法講師の名は伊達じゃないということで可能というわけです。君の魔力特性は既すでに担任として知り尽くしていますし、探しやすいので助かります。」

「では、学院長として命ずる。エスリアール国王に先触れでお知らせしてから転移し、出張面接官として赴き、二人の人となりや魔法属性の確認をして戻り次第、報告するように。」
「はい。お任せ下さい。早速準備でき次第、行って参ります。」

ラナは退室し、準備を急ぐ。


学院長室でルヴァニレットは担任のブラムが水を得た魚のように生き生きと面接官として準備に向かう後ろ姿を見送ることになり、これからあの担任によって面接を受ける二人に同情したのであった。



フフフ…。やはり、マークしておいて正解でした。予想以上の面白い展開にワクワクしますね。国を出てこちらで講師の職に就いて本当に良かった。何も変わらない退屈な日々には飽き飽きしていましたからね。


筆頭魔法講師室に寄って、魔力属性を識別する水晶球を持てばこの編入案内状と合わせて準備はほぼ完成です。先に、エスリアール国王に先触れの伝達魔法でも送っておきましょう。媒体はこの国を象徴する聖獣のブルードラゴンにでもしましょうか。

「我の言の葉を記憶し、彼の者に伝えよ。トランスミッション。

“エスリアール国王陛下、恐れ入りますが私、ラナ・ブラム筆頭魔法講師がこれより編入面接に伺います。城内の何処かに転移致しますので、突然の来訪をお許しください。問題なければ、媒体に触れて頂きたい。それを合図に参ります。”」

手のひらにある魔方陣から縮小サイズの媒体が現れて伝達の言葉を記憶し、送る相手の元へ光の速さで飛んでいった。

さてと、この筆頭魔法講師室に結界を展開してからリングを一つ外して返事を待ってから転移しましょうか。

装飾品として、魔力抑制具を常時着装着することにはだいぶ慣れましたが、こうも数が多いと、私の品位を損なうので不本意ではありますが、怪しまれない為に仕方ありませんね。偽る身としては日々我慢です。

結界内でただの装飾品ではなかったリングを一つ外したブラムの魔力は、封印を解除された分だけ魔力は上昇し、体も少し軽くなる。

このまま行くより、わかりやすく学院指定ローブを着て行きましょう。確かこの辺りに…ありました。クリーン魔法をかけて…。

！媒体に接触がありました。問題ないようですね。
では、参りましょう。
集中して、ルヴァニレット・エスリアールの魔力痕跡を探る。その間たった20秒。

…見つけました。
転移魔法を展開し、魔方陣が頭上と足元に現れブラムの姿はなくなった。