夢じゃなかった!?

Rin’

文字の大きさ
213 / 599
エスリアール王城 出会い

夢渡りには御用心?!2

しおりを挟む
シャラン… シャラン… シャラン…♪


“そう騒ぐな。寝覚めが悪いことこの上ない。”


“はぁ……今できたこれを使うか。”


“娘、本来、我の眷族が渡りをつけるか、特別なしるべを持つ者以外はここへ出入りができぬのだ…。

む?!…おるではないか。だが、その身ではながの渡りは厳しかろう。

これもえにしか…。
仕方ない、特別にそれをやるから今宵こよいね。”

私を案じるかのように鳴り続ける鈴の苛立いらだつ怖い声…けれど親切なことに何かくれると言う。

それに、私じゃない誰かを心配している?
さっさと帰れとか言い方はキツイけど優しいんだきっと。微妙に古めかしい話し方…。

「お騒がせして、すみませんでした。ありがとうございます。」

コポポ…。

自分はきっと立ち入ってはいけない所に来てしまったのかもしれない。声だけの存在に申し訳ない思いで謝罪の言葉を述べた。


恐る恐る目の前に現れた光る何かを右手で掴んだ瞬間、突然水中を移動させられた。


わわ、引っ張られる?!速いんですけど!

水神さまにもらった もらった♪

しるべだ しるべだ♪

ひいさま ひいさま♪

いざや いざや 帰ろう 帰ろう♪

あーめは降る降る 恵みのあーめ♪


ぐんぐん右手から花園まで通ったであろう特に目印もない道なき道を導かれる。

そして水面へ浮上し始めた。どれだけ深い水底だったのかという位浮上は続き、やっと水面が視界に入る。

勢いが止まらない~!


ザッバァッーー!!


飛沫しぶきをあげて勢いのまま水面上に飛び出した私は、さながらイルカよろしく空に向かって大ジャンプ。

上がるところまで上がりきった後に待っているのは…。
「やっぱり!?」

お、お…落ち~~~っ!


浮遊感から一気に落下する前にやけにスローモーションで眼下に見えたいくつもの滝と緑に囲まれた湖。こんな場所知らないし!

今度は水の中に落ちるっ!!

そう構え、身を固くしたがいつまでも水没する衝撃は訪れなかった。


ザーーーーーーザーーーーーーザーーーー


ピチョン…  ピチョン…  ピチョン…


おかしい…色々おかしいぞと思いながら目を開けるとそこは!?

見慣れた天井だった。



「夢………水……。はぁ…。」


「何だか疲れる夢だった。」

起きようとして右手に違和感を覚えた。


ん??硬い感触?


「これって…夢で目の前にあったあれ?」


「こんな形してたんだ。綺麗…。ってちょっと待って。夢で掴んだかもしれない物が何で起きてからも手にあるの?!もしかして、今も夢?!」

夢かどうかの確認といえば、自分のほっぺたをつねるしかない。

ムニッ

「い?!痛い…。ってことはここは、現実?」

じーんと痛む頬をさすりながら改めて右手の石を見た。

透明な宝石?雫形しずくがたのキラキラとした石は夢が現実と何かしらの繋がりを示すかのようだった。異世界って不思議なことも当たり前だったりするのかな。

朝食後にお兄ちゃん…シオンさんに聞いてみよう。それまでは保留だ。



ザーーーーーーーーーーザーーーーーーー

ザーーーーーーザーーーーーーザーーーー


「…雨?」

考えがまとまった途端に、耳に入ってきた音。

異世界に来て初めての雨音あまねに誘われて薄暗い早朝、右手に石を握ったまま窓辺に向かって歩いていく。

吊るされた逆さのてるてる坊主の顔を書いたのは自分だが、心なしか逆さにやったで!と
笑顔でどや顔しているように見えるのは何故だろう。

窓の外は粒の大きい雨が降り注いでいて、右手の石はとりあえず転がらないよう空の洗面器の中に置いてから窓を開けた。


ガチャ、キィィ…

ピチョン ピチョン ピチョン

ザーーーーーーーザーーーーーーー

窓を開けると優しい雨音と雨の日特有の水気を含んだ空気と土や緑の香りが部屋に流れ込んでてるてる坊主も揺れた。

「あ、濡れたら顔が大変だ。にじんじゃう。」

急いで外して、偶然か本当に役目を果たしてくれたのかは疑問だったけれど、テーブルの上にいたわるように移動しておいた。

「お疲れ様でした。ありがとうございました。」

雨の日に出かけるのは気が滅入るけれど、ただのんびり眺めたり雨の音を聞くのは嫌いじゃない。

「夜から雨、降ってたのかな。それとも朝からかな。」


…だからあんな夢を見たのだろうか?

ザーーーーーーーザーーーーーーー


いい音。心なしか木々や草花、光る生き物達もこの雨を喜んでいるかのようだ。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...