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Op.2 帰還と始動 Tempo di Marcia
第一マーチ(前編)
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顧問と幹部の協議の結果、課題曲Ⅲ、自由曲は白夜の暁で決まり、指揮はクソ兄貴こと黒木宥亮に依頼することに決まった。
………交渉は当然のように俺が持つことになった。
その日の夜。久々にまともな夕食の準備をした。やはり部活に出ていると出ていないとでは消耗の度合いが桁違いだ。
メバルの煮付け、白米、白菜の浅漬け、玉葱と豆腐とワカメの味噌汁、キャベツ(生)。
…………和食、最っ高。
しっかり平らげて気の滅入る用事に入る。兄に連絡するのは実は久しぶりだった。
「もしもし?宥大か。どした?」
「実は……………………………………………………」
一通り事情を説明する。さあ返答や如何。
「ごぉめん俺無理っすわ。今年は特に本業が忙しゅうてなあ。」
「マジかよ………」
兄が一端に仕事があるという事実に喜んでいいやら悲しんでいいやら。
「あー、うまいこと行けば紹介してやらんでもない。」
「幹部に確認してみる。」
「おうおう。」
一旦電話を切った。次に連絡を入れるのは部長の金村だ。
「もしもし?金村?」
「クロ先輩!どうなさったんですか?」
中略。
「なるほど。お兄さんの信頼されている方ならきっと大丈夫だと思います。近藤先生には私から連絡入れるのでお兄さんによろしくお伝え願えますか?」
「よっしゃ。やっとこう。」
「ありがとうございます!」
「いえいえ。では。」
「はい!失礼します。」
さて出番ですクソ兄貴。
「兄貴?その指揮者候補の方ってどちら様で?」
「ん?ああ、嫁だよ嫁。」
あまりにさらりと言われたものだから認識するのに時間がかかった。
は?嫁?ってか俺から見たら義理の姉?
「えっちょっ待っ………kwsk。」
…兄の話によると、
兄の嫁、もとい奥さん、黒木凜音さんは大学で指揮とピアノをメインでしていたとのこと。子供が出来て大きくなるまでは主婦として生活する予定だったらしく、正直今は予定がガラ空きなのだという。
もう既に兄が連絡を入れていたらしく、二つ返事で引き受けてくれたということで、顧問との間で連絡先の交換と予定の相談をしてもらった。
「色々とすまんね。」
「なーに、構わんさ。あ、そうだお前もう飯食ったか?嫁が少しばかり作り過ぎたっぽいんだが…ついでに別の用もあるし。」
「わかった。今から行く。」
「んじゃ後で。」
兄が態々呼ぶとは一体どんな風の吹き回しだろうか。まあ近所だし(徒歩15分)行ってみることにした。食事を終えていることはまあ言わなくていいだろう。どうせまだ入る。
大学在学中から稼いできた兄だけあって(というのも結構な数のコンクールを制しているらしい。)あっさりと一軒家を構えていた。恐ろしいことだ。
ベルを鳴らすと兄が出てきた。
「おうおう来たか。入れ入れ。」
「お邪魔します。」
「凜音。これが弟。明日から世話になる。」
「始めまして。いつも兄がお世話になってます。黒木宥大と申します。宜しくお願いします。」
「君が宥亮の弟くんか。始めまして。凜音です。宜しく!」
快活でしっかりしてそうな人だ。少し明るめの髪は肩に軽くかかるくらいで緩く波打っている。人を惹き付けるタイプのようだ。
「じゃあ取り敢えず飯にすっか。座りな。」
三人でテーブルに座る。
「いただきます。」
メニューはエビチリとカルボナーラとサラダ。さっきとは真逆のメニューだ。凜音さんの腕は大したもので、かなり美味しかった。兄よ。末永く幸せに…
食事を終えて話題はコンクールへ。
「白夜の暁ってさ、スコアある?」
「あります。ちょっと待ってください。」
こんなこともあろうかと鞄の中にスコアを入れておいた。
「ん。ありがと。」
その瞬間凜音さんの目が倍近くの大きさに見開かれた。スコアに真剣に目を通していく。傍からみるこちらが緊張する。
読み終えて凜音さんがふう、と息をつく。もうさっきまでの凄まじい空気は消えていた。
「宥亮。」
「ん?」
「なんなのあなたの弟くん凄いじゃない!これ書いたのいつだっけ15歳?ありえない凄すぎるんだけど!天才?化物?こんな曲書けるなんてマジ半端ないわー。」
一気に捲し立てる凜音さんに兄弟揃って呆気にとられた。
「あ、あ、ありがとう、ございます。」
「ほんと凄いよ宥大君!これなら振り甲斐もあるし楽しいし、ちゃんと作れたらしっかり通用するよ!」
そこまで言われるとは。冥利に尽きる。
「早速明日、取り敢えず挨拶にだけは行く予定だから、改めてよろしくね!」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
こうして指揮者も無事決まり、明日からいよいよコンクールに向けて、だ。
そういえば、
「兄貴。別の用事って?」
「ああそうそう。お前明日部活午前で終わりだろ?ちょっと買い物付き合え。」
「私は近藤先生とまたじっくり話し合いすると思うから、宥亮ぼっちなのよ~。」
「どこに?」
「それはお楽しみ。じゃあ明日な。」
「…分かった。明日。」
なんとなく釈然としないながらもまあいいかと思いながら家をあとにした。
…相変わらず掴みどころの無い兄である。
そして明日、思っても見なかった奇襲を受けることになる。
………交渉は当然のように俺が持つことになった。
その日の夜。久々にまともな夕食の準備をした。やはり部活に出ていると出ていないとでは消耗の度合いが桁違いだ。
メバルの煮付け、白米、白菜の浅漬け、玉葱と豆腐とワカメの味噌汁、キャベツ(生)。
…………和食、最っ高。
しっかり平らげて気の滅入る用事に入る。兄に連絡するのは実は久しぶりだった。
「もしもし?宥大か。どした?」
「実は……………………………………………………」
一通り事情を説明する。さあ返答や如何。
「ごぉめん俺無理っすわ。今年は特に本業が忙しゅうてなあ。」
「マジかよ………」
兄が一端に仕事があるという事実に喜んでいいやら悲しんでいいやら。
「あー、うまいこと行けば紹介してやらんでもない。」
「幹部に確認してみる。」
「おうおう。」
一旦電話を切った。次に連絡を入れるのは部長の金村だ。
「もしもし?金村?」
「クロ先輩!どうなさったんですか?」
中略。
「なるほど。お兄さんの信頼されている方ならきっと大丈夫だと思います。近藤先生には私から連絡入れるのでお兄さんによろしくお伝え願えますか?」
「よっしゃ。やっとこう。」
「ありがとうございます!」
「いえいえ。では。」
「はい!失礼します。」
さて出番ですクソ兄貴。
「兄貴?その指揮者候補の方ってどちら様で?」
「ん?ああ、嫁だよ嫁。」
あまりにさらりと言われたものだから認識するのに時間がかかった。
は?嫁?ってか俺から見たら義理の姉?
「えっちょっ待っ………kwsk。」
…兄の話によると、
兄の嫁、もとい奥さん、黒木凜音さんは大学で指揮とピアノをメインでしていたとのこと。子供が出来て大きくなるまでは主婦として生活する予定だったらしく、正直今は予定がガラ空きなのだという。
もう既に兄が連絡を入れていたらしく、二つ返事で引き受けてくれたということで、顧問との間で連絡先の交換と予定の相談をしてもらった。
「色々とすまんね。」
「なーに、構わんさ。あ、そうだお前もう飯食ったか?嫁が少しばかり作り過ぎたっぽいんだが…ついでに別の用もあるし。」
「わかった。今から行く。」
「んじゃ後で。」
兄が態々呼ぶとは一体どんな風の吹き回しだろうか。まあ近所だし(徒歩15分)行ってみることにした。食事を終えていることはまあ言わなくていいだろう。どうせまだ入る。
大学在学中から稼いできた兄だけあって(というのも結構な数のコンクールを制しているらしい。)あっさりと一軒家を構えていた。恐ろしいことだ。
ベルを鳴らすと兄が出てきた。
「おうおう来たか。入れ入れ。」
「お邪魔します。」
「凜音。これが弟。明日から世話になる。」
「始めまして。いつも兄がお世話になってます。黒木宥大と申します。宜しくお願いします。」
「君が宥亮の弟くんか。始めまして。凜音です。宜しく!」
快活でしっかりしてそうな人だ。少し明るめの髪は肩に軽くかかるくらいで緩く波打っている。人を惹き付けるタイプのようだ。
「じゃあ取り敢えず飯にすっか。座りな。」
三人でテーブルに座る。
「いただきます。」
メニューはエビチリとカルボナーラとサラダ。さっきとは真逆のメニューだ。凜音さんの腕は大したもので、かなり美味しかった。兄よ。末永く幸せに…
食事を終えて話題はコンクールへ。
「白夜の暁ってさ、スコアある?」
「あります。ちょっと待ってください。」
こんなこともあろうかと鞄の中にスコアを入れておいた。
「ん。ありがと。」
その瞬間凜音さんの目が倍近くの大きさに見開かれた。スコアに真剣に目を通していく。傍からみるこちらが緊張する。
読み終えて凜音さんがふう、と息をつく。もうさっきまでの凄まじい空気は消えていた。
「宥亮。」
「ん?」
「なんなのあなたの弟くん凄いじゃない!これ書いたのいつだっけ15歳?ありえない凄すぎるんだけど!天才?化物?こんな曲書けるなんてマジ半端ないわー。」
一気に捲し立てる凜音さんに兄弟揃って呆気にとられた。
「あ、あ、ありがとう、ございます。」
「ほんと凄いよ宥大君!これなら振り甲斐もあるし楽しいし、ちゃんと作れたらしっかり通用するよ!」
そこまで言われるとは。冥利に尽きる。
「早速明日、取り敢えず挨拶にだけは行く予定だから、改めてよろしくね!」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
こうして指揮者も無事決まり、明日からいよいよコンクールに向けて、だ。
そういえば、
「兄貴。別の用事って?」
「ああそうそう。お前明日部活午前で終わりだろ?ちょっと買い物付き合え。」
「私は近藤先生とまたじっくり話し合いすると思うから、宥亮ぼっちなのよ~。」
「どこに?」
「それはお楽しみ。じゃあ明日な。」
「…分かった。明日。」
なんとなく釈然としないながらもまあいいかと思いながら家をあとにした。
…相変わらず掴みどころの無い兄である。
そして明日、思っても見なかった奇襲を受けることになる。
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