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〜第1章〜

『ラブシックネス』

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ここは、ロンドン郊外にある街「ウィンザー・メードン・ヘッド」である。
この街では毎晩のように人が1人消えるらしい。
いわゆる、神隠しみたいなものだ。
私は、この街に探偵としてやってきたJulie maine (ジュリー・メーン)というものだ。
本当は、ロンドンで警察官をやっているのだが、
犯人に怪しまれないように、探偵に扮しているという訳だ。
今日は、近所に被害の状況を聞きこみ調査している。神隠しの犯人は、真夜中に現れるそうだ。
それもそうだ、この街は、朝も夜も人で溢れている。真夜中に動いた方が犯人には身のためだろう。性別は、今のところ不明である。だが、服装というのが、黒いマントに舞踏会で付けるような仮面をつけているという。それもピエロの仮面だそうだ。昨夜被害にあったウィザリー家付近に行ってみると、向かいの酒屋の店主に話しかけられた。店主は今起きてるこの事件を、不思議だと言っていた。なぜなら、狙われる家は、どれも富豪の家であるからだ。しかも、そこの主人だけを狙い、家族には指一本触れないという。なんとミステリアスな犯人なのだろうか。私はそんなことを考えながら、今日泊まるホテルに向かっていた。
ふと、こんなことを考えた。今夜決行しようと。
私が泊まるホテルは、クルー・シュベルツの邸宅であるシュベルツ家の裏にあるホテルなのだ。
このホテルで張り込みをしていたら、犯人を見つけることができるだろう。そのような気持ちが心の中にいた。
0時が過ぎ、1時を回った頃、犯人がシュベルツ家の中から出てきた。もうことが済んだのだろう
ゆっくりと、邸宅から出てくる。
すると、犯人が不意にこちら側を振り向き、瞬間目が合った。私は咄嗟に窓の下に身を隠した。
ふと、顔を上げ周りを確認しようと窓の外を覗き込んだ時、後ろから、誰かが見ているような視線を感じたのだ。
後ろを振り返った次の瞬間、私は目を奪われた舞踏会に行く際に付けるような仮面。少しだけ血の滲んだような面であった。その仮面の下から覗く髪の毛は白銀色。唇にはうっすらとシアンブルーのリップ。目はまるでガラス玉のように透き通っていた。私の左手はピストルを掴んでいる。私は素早くピストルを構えた。打てる…今なら…そう思った時には、既にピストルは奪われていた。為す術もなくした私は、ただ壁にもたれかかって月明かりに照らされたピエロを見つめるだけだった。
ピエロが、口を開いた途端、窓から微かな紅い光が差し込んできた。そうだ。今夜は千年に一度の月食の日だったな。その紅い光に映し出されたピエロの顔は、不気味な笑顔を映し出していた。
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