また、桜舞い散るこの街で

紅茶 螺鈿 (こうちゃ らでん)

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「懐かしい景色 2」

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「ねえ紫乃、これこれ」
紗倉の声が後ろから聞こえた。
振り返ると、紗倉は何かを指差している。
「ほら、これ見て」
紗倉は私の足元にしゃがみこむ。
「何見てんの紗倉?」
私も紗倉と同様にしゃがみこむ。
そこにあったのは春雨に濡れた四つ葉のクローバーだった。
「ラッキーじゃない?これ、摘んで行こうよ紫乃。」
私は辺りを見回した。目の前にひとつの看板を見つけた。
「これ見てみなよ紗倉」
そこには子供の書いたような文字で『このクローバーはぜったいに触らないでください』と記してあった。
「あー、これ…誰かが育ててるクローバーなんだね。あちゃーアンラッキーだね紫乃。」
紗倉は少し残念そうな顔をして言った。…と、そこで私はある事を思い出した。私はセカンドバックから、対(つい)になったクローバーのキーチャームを取り出した。
「これなに?」
紗倉は疑問そうに問いかけた。
「これ忘れてた。はい紗倉、アンタの分。」
私は片方のクローバーの欠片を紗倉に渡した。
「あ!これって…」
「そう。高校の卒業式の時、紗倉から預かってたキーチャーム。返すわ」
私は紗倉の手を取って渡した。すると紗倉は、そのキーチャームを太陽にかざした。
「これさ、私無くしたと思ってたんだよね…でも良かった。紫乃が持ってたんだね。」
紗倉は少し安堵の表情を浮かべていた。
「これ、私も要らないから、アンタが持ってて」
私はもうひとつ持っていたキーチャームを少し強引に紗倉に渡した。
紗倉は『へ?』とでも言うような顔をしてこちらを見つめてきた。
「紗倉がこれ持ってたら、また5年後…ここで会えるかなって思っただけよ」
私が少し照れながら言うと、紗倉はそれを汲み取ったのか嬉しそうな表情で
「うん!」と
元気よく言った。そして紗倉は勢いよく飛びついてきた。
「ちょっと紗倉、なにしてんのw」
「んー?ひ・み・つ・♪」
その時の紗倉の顔は、とても嬉しそうだった。
「あ、そうだ!」
紗倉は何かを思いついたように声を上げた。
「ここで写真撮ろう!」
「え、いま?」
「そう!もちろんあのポーズで!」
紗倉は、人差し指と中指と親指を立て、顎に近づけるようなポーズをした
「あ…あれね、いいよ。撮ろ撮ろ」
…『カシャ!!』
スマホのシャッター音が鳴り、写真が表示される。
そこには紛れもなく、高校時代と何ら変わらない笑顔が映し出されていた。
そうだ!ここは…どうして気が付かなかったのだろう。1番忘れちゃいけない場所なのに。
ここは…私達が日々通っていた高校の跡地。塀はあるが、更地になっているから気が付かなかった。
ここは紛れもない。
私たちの『懐かしい景色』だ。
「紫乃、どうしたの?」
紗倉が首を傾げて言う。
「ううん。なんでもない」
紗倉は不思議そうな顔をした。
「ほら紗倉、行かなきゃ!みんなが待ってるよ!」
私は紗倉の手を握る。
「へ?どこに?」
紗倉はまだここがどこだか分かっていない様子だ。
「登校の時間だよ!早く門ぐぐらなきゃ、あの鬼梶野に怒られるよ~」
紗倉はそこでやっとわかったようだ。
「うん!またアイツに怒られるのなんてゴメンだもんね!」
私たちは錆びて朽ちた門を走って通り抜けた。
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