猫屋敷のある村で

宇治山 実

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猫屋敷のある村で

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 (何かがおかしいー)
 叔母の家の前に車を止めてから、誰かに見られている気がする。
 その目が冷たい。
「さぁー入って、入って。冷たいものでも飲もぅー」
 叔母の声に誘われ、竣介は玄関に入った。
 その時、又、背中に突き刺さるような視線を感じた。
 振り返っても夏の強い光が眩しいだけで、誰もいない。
 人の姿がないのに、間違いなく見られている。
 こんな気味の悪い村は一日で十分だ。
 できるなら今すぐでも帰りたいのだが、母と梅子叔母さんを車に乗せてきた以上、勝手には帰れない。
 まして、澄江叔母の主人、鉄蔵さんの初盆ではないかー。
「竣ちゃん、早くー。暑かったじゃろー」
 澄江叔母がせわしく追い立てる。
 黒ずんだ透かし彫りの大きな仏壇に、鉄蔵さんの写真が飾れ、仏壇の左右に置かれた新しい廻り提灯が、怪しげな陰模様を写していた。
 仏壇のある東の間は昔から御庄屋部屋と呼ばれ、高い天井は黒い梁が剥き出しで張り巡らされ、何処かで見た山城の天井のようだった。
 竣介は母の横に座りながら改めて外を見たが、日差しが庭の植木を焦がすように照りつけているだけで、人の姿はない。
「こんな大きな屋敷に一人で住んでいて、きょとうないんかー」
「猫がおるがなぁ」
 夫に先立たれた叔母は、この古い屋敷に数十匹の猫と暮らしている。
 叔母の嫁いだ石堂家は備前豊福之庄を束ねる庄屋だった。
 戦前のことだが叔母の夫鉄蔵の母親は津山の庄屋の娘で、格式を重んじる時代だったから、庄屋同士の婚礼になった。この石堂家に嫁いでくるときの花嫁道具が車力五十数台に女中まで連れてきたそうだ。
 豊福之庄は備前でも豊かな土地で、今は稲作以外に高級ブドウのピオーネや白桃が栽培されているが、昔は村全てが石堂家の土地で稲作一辺倒だった。鉄蔵の母は、鉄蔵が三歳の時、次男の鉄男を出産したのだが、産後の肥立ちが悪いところに、風邪から肺炎をこじらせて死んだ。
 師範学校の校長だった鉄蔵の父は、母親に先立たれた鉄蔵を甘やかして育てた。成人すると育ちの良さに加え、六尺の背丈に眉が濃く、彫の深い鉄蔵は女にもてた。
 学生の頃から酒と女の味を知ってしまった。叔母と結婚してからも酒と女を離すことはできなかった。父が死に、農地改革で土地が取られても、ボンボン育ちの鉄蔵に経済観念はなかった。ただ父親は、小さい頃から身体をいじめたことのない鉄蔵を地元の森林組合に入れた。仕事があれば何とか生活ができると考えたのだが、収入と収出はバランスが整って成り立つ。鉄蔵のように入ってくる金の何倍も使っていたのでは生計が成り立たない。森林組合の仕事は親の紹介だったせいか熱心ではなかったが休むこともなかった。ただ派手好みで、金がなくても欲しいものは借金してでも買う性格は一生直らなかった。 
 この地区で一番に車を買ったのも鉄蔵だった。その車に女子を乗せては関係をもつ。村の若い娘から、職場の女にまで手を付ける鉄蔵に澄江叔母は呆れ果てた。叔母が怒ると、しゃーしゃーと出て行って、手を付けた女の家に行ったらしい。子供が生まれていれば、鉄蔵の考えも少しは改心したかもしれないが、不幸なことに澄江叔母には子供が生まれなかった。
 二千坪はある敷地も、足の悪い叔母だけではどうすることもできず荒れ放題になっている。
「ニャー、ニャーオ」
「こら、あっちへ行っときんしゃい」
 餌が欲しいのか、猫が叔母に甘えた。
「なぁー、もし私に何かがあったら、この中の金庫をあけんしゃい」
 叔母の話が急に逸れた。
「なんで、そんなことを言うんや」
 母と梅子叔母が、澄江叔母の弱気を嗜めた。
 私の母竹乃と、梅子と澄江の二人の叔母とは三人姉妹だった。その上に兄が二人いたが、兵隊にとられ、戦地で亡くなっている。
「鉄蔵が亡くなってから、この家を覗く者がおるんや」
「こんなボロ家を、誰が覗くんや」
 母が呆れたように言うと、
「ほんまなんやでー。私がおらんとき、家の中を調べている者がおるんや。嘘やないで」
 澄江叔母は真剣だった。
「鍵を掛けて出るんやろ」
「もちろん鍵は掛けて出るんやけど、どこからか誰かが入っているんや」
「どうして、そんなことが分かるんや」
 母が問い質すと、
「姉ちゃん、私はな。外出するとき玄関の戸だけやなく、色んな処に印をつけとくんや。その印がいつも動いている。分からんようやけど私には誰かが動かしたことが分かるんや」
 そういえばこの家に着いたとき、叔母は玄関のドアに鍵を右と左の二か所に付けていた。独りで住んでいると用心深くなるんや、としか考えなかった。
「そやけど、何も取るもんなんかないやろ」
「それがあるんや」
 叔母が笑った。顔の表情だけが緩んだ不似合いな笑いだった。
「田圃も、鉄蔵さんが酒と女にかえてしまっているやろうし」
「そうやな、飲まんときはええんやけど、飲みだしたら止まらんかった。一斗酒やった」
「一斗ー」
 竣介は、思わず聞き直した。
「夜中に何回酒の瓶を持って逃げたことかー。身体が大きかったし丈夫やったから飲めたんやけど・・・・・。でも最後は肝臓をやられてしもうた」
「ニャーオ」
 しびれを切らしたのか、一匹の猫が叔母の膝に乗ると、障子の奥に隠れていた猫が次々に出てきて叔母にまとわりついた。
「何匹いるのです」
「二十五匹やったかな」
「二十五匹ー、まるで猫屋敷ですね」
「村の何人かは猫屋敷と呼んどるな」
 この大きな屋敷に一人住むのは寂しいから、猫と住んでいるのも理解ができる。
「なぁー、さっきの話やけど。私に万が一のことがあったら、ここに金庫があるさかえ」
 叔母が仏壇の下の戸を左右に開けると、薄暗い中にピカピカの金庫が備え付けられていた。
「お姉ちゃん、聞いていなー」
 叔母は必死に言った。その気迫が伝わったのか、母は、
「竣介、あんた聞いとき」
 梅子叔母も私に聞き役を命じた。私が聞いたところで、奈良からでは間に合わない気がしたが、その場の雰囲気から聞くしかなかった。
「竣ちゃん、書くものある」
「手帳があります」
「これから言う番号を書いて」
 私の用意ができると、
「いい、最初はゼロにしてから右に五十五、左に三十三、また右に四十四。そしてやで左に二十二や。これでこの鍵で開くんや」
「チン」乾いた音がすると、金庫の扉に段差が生じていた。
 叔母はゆっくり扉を開けると、風呂敷に包んだ証書と現金を取り出した。
「これは鉄蔵の生命保険と、森林組合の退職金の残りや。無茶クチャする男やったから、生命保険は内緒で思い切って掛けといたんや」
「・・・・・」
「それに不便なところにある田圃と山は、鉄蔵が売ろうとしても売れなんだ。その田圃と山も、私にはできんから捨て値で売った」
 母も梅子叔母も、私も声が出なかった。
「現金は六百万ちょっとと、定期預金の証書や。これが全部で一億六千万ある」
「一億もあるのかー」
 母も梅子叔母も、口に出すのがやっとだった。
「ええもん見せたげるわ」
 また叔母が笑った。今日の叔母は、私の知っている澄江叔母とは違う人物に想える。
 叔母は金庫の奥から小さな布包を取り出すと、三人の前に置いた。
「お姉ちゃんも梅ちゃんも、見たことのないものやでー」
 叔母はそっと布を捲った。
「・・・・・」
 私には何かが直ぐに分かったが、おもちゃに見えた。母も梅子叔母も私と同じ気持ちだった。誰も声が出なかったが、目を逸らすことも出来なかった。
「本物、ですか」
 と、確かめるように聞いたが、一方で澄江叔母の顔から ゛本物゛だと想った。
 小判は薄暗い部屋の中でホタルのように光っていた。
「こんなもん、どこから手に入れたんや」
「石堂は戦国時代から続いている家やでー」
 叔母が当然のように言った。
「触って、いいですか」
 私は本物の小判に触ってみたかった。
「ええから、手に持ってみんしゃい」
 小判は十枚ぐらいある。一番上の小判を手に取った。
 軽い、それに薄い。
「十両」
「そう、十枚や」
 今は金ブームで金の価格が高騰しているから、びっくりするほど高い値段がするはずだ。
「竣ちゃん、一枚あげるわ」
 簡単に言った。
「遠くから来てくれたんやし、金庫のことも頼んだんやからー」
 信じられなかった。高価な小判を一枚くれると言った。
「早く取っとき。小判なんかなかなか手に入らんし、私の形見になるかも知れんから」
「そんなー」
「本当や、あげるがな。勝手に入ってくる泥棒猫に取られるよりましや」
 と言うと、叔母は小判一枚と金庫の予備鍵を私に渡した。
「一人やない気がするんや」
 叔母が残りの小判を布に包みながら言った。
「泥棒猫が何人もおるんかー」
「机の上にお金を置いてたら、直ぐに無くなる」
「警察に言うたら、どうやねん」
「警察なんか、言うてもあかん。この村は何かがおかしいんや」
 澄江叔母が思いつめたように言う。
 私は叔母から渡された小判をじっと見ていた。このとき私は小判に夢中で、外の気配に全く無関心だった。気持ちに余裕があれば、叔母の家に入るときと同じ視線を感じたのに・・・・・。

「今日は誰かが来ているようや」
 叔母の屋敷の上にある小さな家の陰から、岡本芳子が覗いていた。
 芳子は昔から、庄屋の家に嫁に来た同じ歳の澄江が気に入らなかった。
「なんであんな女子が、坊ちゃんの嫁なんや・・・・・」
 戦後の農地解放で小作人制度がなくなったが、小作人の家に生まれた芳子は、地主の息子鉄蔵には逆らえなかった。
 鉄蔵はそれをよいことに芳子の身体を弄んだ。鉄蔵は気まぐれに性欲を解消するだけのつまみ食いでも、芳江は抱かれるたびに鉄蔵への想いが募った。
 その芳子も同じ小作人の息子を養子に貰い岡本家を継いだ。三人の子供に恵まれて幸せな生活を送っていたのだが、働き者の夫ががんに侵され三十五歳で死んだ。それからは三人の子供を育てるため必死で働いた。懸命に働けば働くほど、鉄蔵に嫁いだ澄江への憎悪が募った。
 それから三十数年。
 長男が成長し嫁を貰うと、後の二人も独立して出て行った。
 時間に余裕が生まれると、再び石堂家を盗み見するようになった。憧れていた鉄蔵が死ぬと、一人暮らしの澄江の生活が気になった。覗き見るだけならよいのだが、澄江が外出すると、物珍しさから家の中まで見たくなった。
 そっと訪れた時、たまたま裏の扉が空いていた。
「きたないなぁー」
 戦前の半分になったとはいえ、土台をコンクリートで固め、周りを広い廊下に囲まれた大きな屋敷である。仏壇のある御庄屋部屋と、その横にある叔母の十畳部屋以外の部屋は、長い間使われておらず不用品で溢れていた。
 澄江の部屋の机の上に、文房具と一緒に現金が無造作に置いてあった。小遣いにも不自由していた芳子はその現金をポケットに入れると、入ったときと同じように見つからないように出て行った。家に帰って現金を数えると二万三千円あった。
 次に侵入しょうと試みたときは、どの扉にも鍵が掛かっていて入れなかった。諦めようとしたが現金の味は忘れられず、その後も何度か侵入を試みた。その度鍵が掛かっていたのだが、何度目かに縁側のガラス戸が空いていた。この時、芳子はガラス戸にいつでも入れるように細工しておいた。
 それからは澄江が外出する度に忍び込んだ。現金の札はなかったが小銭は置いてあった。家の中の様子が分かるとだんだん大胆になった。戸棚や押し入れの中まで開けて、中を調べた。押し入れの中の引出にあった五万円も頂いた。最初は盗んでいると言う罪悪感も、慣れてくると、金がないと腹が立つようになり、置いてある饅頭を食べながら、
「ちっ、どケチ」と怒鳴るようになっていた。
 ある日、芳子が澄江の家の中を物色していると、裏の戸が開く音が聞こえた。芳子は慌てて押し入れに隠れた。
 耳を逆立てて音に集中していると、足音が忍び足であることに気がついた。
「あいつじゃない」
澄江なら玄関から入ってくるし、忍び足で動き回ることはしない。
 芳子は少しだけ押し入れの戸をずらすと、忍び足の主を探した。
「男―」足しか見えなかったが、誰かは分かった。
「分家―」鉄蔵の弟の鉄男だった。
 芳子が鉄蔵の屋敷の上側に住んでいるのに対し、鉄男は下側に住んでいた。この村では次男が長男より高い土地に住むことはできない。鉄蔵が生きているときは何一つ文句を言ったこともなかったが、鉄蔵が死ぬと、澄江に、長男鉄蔵が独占して相続した財産を幾らか寄こせと要求するようになった。澄江が借金しか残っていないと言っても信じなかった。
 芳子は分家の秘密を握ったと考えると、いつか驚かしてやろうと想った。いやいやこの村の掟は厳しい。同じ村人の家に盗人に入ったことが分かると、徹底した村八分にされるから、ひょっとしたら小遣い銭になるかも知れん。
 分家は家の中を三十分ほど動き回って、出て行った。
 芳子は押し入れから出ると、分家が探していた仏壇の周りを調べた。
「分家は何かを探していたー」
 芳子は仏壇を見た。引出に蝋燭、線香、マッチが入っていた。引出の下が観音扉になっている。
「開き戸やないかー」
 芳子はその開き戸を開けた。
「金庫―」
 まだ新しい。分家はこの金庫を開けようとしていたのだ。芳子は金庫を動かしてみたがびくともしなかった。
「ほほ、宝の金庫が見つかったー」
 芳子も金庫に宝物が入っていると考えると開けたくなったが、同時に澄江以外、誰一人開けられないことも分かった。
 その日は分家の秘密を掴んだことと、金庫が見つかったことに満足すると家に帰ったが、芳子の澄江を見張る習慣は生活の一部になっていた。
 澄江が遠くに外出するときは、青いオーストリッチとかいう高級そうなバッグを持っていくことも知った。そしてそのバッグを持って外出すると、忍び込んでは家中を調べ回り、コソ泥を働いた。
「今日は出て行かん」
と分かると農作業に精を出した。
 
 下の家では分家の鉄男が、
「珍しく客が来たようじゃー」
 と、竣介たちが澄江の家に入るのを家の中から見ていた。
「そうか、鉄蔵の初盆かー」
 想いだしたが、
「あの女子はわしを嫌っとるから、声はかからんわ」
 声が掛かれば、兄弟の義理で線香の一本ぐらい立てに行くが、誘われんのにわしから行くこともないと割り切っていた。
 鉄男は澄江だけでなく、兄の鉄蔵も嫌いだった。
 大抵の家が母屋と分家の間に溝がある。それは現代のように親の財産を等分割しなかったからだ。どの家も長男が大部分を相続した。次男、三男は都会に職を求め出て行くか、よその村の婿養子に入った。
 鉄男も大阪の鉄工所に就職したのだが、三年で帰ってきた。
 兄の鉄蔵から恩に着せられて田圃数枚と、家の下の土地を貰って家を建て生活を始めた。小さな耕地にしがみ付いて働いていると、派手に生活している兄が羨ましかった。自動車に若い女子を乗せて遊び回っている姿をみると、同じ兄弟でなぜ違うのか。長男と次男の違いが頭では分かっていても、納得できなかった。
 その兄が死んだ。子供のいない、他所から来た嫁が石堂家の資産を独り占めにすると想うと、我慢が出来なかった。
 兄の家の造りは、新築の時手伝わされたから知っている。大邸宅も古くなると惨めなものだと想った。大きいだけにちょっとやそっとでは修理も片付けもできない。裏の勝手口の戸は傾いているし、その戸を外すと簡単に入れる。鉄男はそこから侵入すると、金になるものを探した。 
 年代物の壺や大皿が埃をかぶっていた。特に古備前は銭になる。
 鉄男は、昔から家にあるものは鉄蔵だけのものやない。半分は自分のものやと考えると、少しずつ持って帰って売った。
 これが金になった。古備前は色に独特の落ち着きがある。この色に気づいた骨董品屋は喜んで買ってくれた。
 この鉄男の行為に、澄江は気が付いていた。
 用事で鉄男の家に行ったとき、
「うちの押し入れにあった壺や」
と分かると、はっきり侵入者の一人を知った。

 季節が夏から秋に変わった。
 竣介は早朝に奈良を出ると、西名阪道、近畿道、中国道と乗り継いで、美作インターで下り、澄江叔母の家に行った。
「遠いのに悪いなぁー」
 叔母は青いバッグを持って、家の前で待っていた。
 車に叔母を乗せると、再び中国道に乗り、母の待つ実家に向かった。
 十月三十日は奥播磨の秋祭りの日だ。
 竣介の勤めるシティホテルは、正月をホテルで過ごす家族が多く、仕事柄、年末年始はなかなか休めなかったが、十月三十日が平日の時は休みを取って田舎の祭りに行くようにしている。父は早く亡くなっていたが、母と兄夫妻が歓迎するので、梅子叔母に従兄弟たちも集まる恒例の行事になっていた。母は人が来るのが好きな性格で上機嫌だったせいか、久しぶりに参加した澄江叔母も愉しそうに寛いでいた。
 澄江叔母の様子を見ていた母が、
「泊まっていけ」と何度勧めても、
「猫が待っとるさかえ・・・・・」
 頑なに泊まらなかった。
 竣介が澄江を再び車に乗せて送っていると、
「今日は愉しかった」
 叔母が助手席で身体を伸ばしながら言った。
「母も、梅子叔母さんもよく喋っていましたから、うるさくなかったですか」
「そんなことはないでー。昔からあの二人は良く喋っとったー。別に驚ろきゃせん」
「でも、家に帰っても一人だと寂しくないですか」
「猫がおるがなぁー」
 叔母の話には猫が出る。
「猫が二十匹もいたら、賑やかでいいですか」
「そりゃー猫屋敷と呼ばれとるぐらいじゃからな。それに今夜は楽しみもある」
「楽しみ、ですか」
「そうじゃー。内緒の話じゃ」
「内緒の話ですか。聞きたいです」
 竣介が笑いながら突つくと、
「言えん、こればかりは身内にも言えん。またの楽しみ」
「またの楽しみ、ですか」
 叔母と竣介の愉しい会話も、叔母の家に着くと終わった。
「遅くなってごめんなー」
 叔母が車から降りると、待ちかねた猫たちが集まってきた。
「また迎えに来ますから、いつでも遊びに行きましょう」
 竣介が車の中から手を振ると、叔母も笑って手を振った。
 車を発進させ、時計をみると二十一時を回っていた。

 翌日の十月三十一日早朝に、石堂鉄男(六十二歳)の撲殺死体が発見されると、村は蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
 鉄男は自宅と叔母の家の間にある、一段低い畑の畔に倒れていた。発見したのは鉄男の嫁朝子(五十八歳)だった。昨晩帰宅しなかったので、朝から探して見つけたと言った。村の駐在から連絡を受けた勝央警察署は岡山県警に連絡する一方で、現場の保存に務めた。
 鉄男は後頭部に鈍器で殴られたような打撲傷の痕があり、頭蓋骨の一部が陥没していた。この傷が脳内部に影響して死因になったと推定された。十数名の鑑識班が付近を徹底して調べたが、鉄男以外の痕跡は全くなかった。もちろん周辺には凶器と考えられるものも発見されなかった。
 鑑識班と入れ替わるように、岡山県警の捜査一課から駆け付けた古参の吉原警部捕は、現場百回を叩きこまれていたから、勝央署に着くなり所轄の若い中島刑事の案内で現場を見に行った。
 鉄男の死体は解剖に送られてなかったが、人間の形をした白線が死体の位置を教えてくれた。鉄男はうつぶせに倒れ、足跡が乱れていたらしい。鑑識班には何かに追われていたように見えたそうだ。
 吉原は周辺を見渡したが、一方が竹藪を背にした崖で、もう一方が畑である。
「死亡時間はー」
「解剖の結果を聞かないとはっきり断定はできませんが、鑑識の見立てでは死亡経過時間から逆算して、昨日十月三十日の午後三時から六時の間とか」
「まだ明るい時間じゃ。それなのに誰も見とらんってー」
 吉原が額に皺を立て、納得できないように聞いた。
 中島が身体を反対に向け、
「前の道路からですと畑の一番奥になります。意識して見ない限り気がつきません」
 そういえば鉄男の倒れている現場から道路が見えない。
「この畑の持ち主は」
「石堂鉄男、殺された鉄男本人です」
「自分の畑の畦で、殺されたのかー」
 何か、嫌な予感がした。
 土地鑑があってとしても、なぜ鉄男がこの畦道で殺されたのか。なぜ鉄男はこの畑の畦道を歩いていたのか。鉄男が何かから逃げるような乱れた足跡が気になったが、鑑識は鉄男以外の足跡も、髪の毛も、衣類の切れ端も見つからなかったと言っている。
「何に追われていたのか・・・・・」
 足跡は乱れ、必死で自宅に逃げて帰ろうとしていたように見える。
 吉原は一段高い所にある納屋と、大きな屋敷が気になった。
 鉄男の倒れていた場所の下が石堂鉄男の家で、上が兄石堂鉄蔵の家だった。
(兄弟でも随分違うなぁー)
 土地の広さだけでなく、家の大きさも数倍違う。社長の家と従業員の家のように想えた。
 吉原は現場を一回りすると、中島を連れて畑の上にある石堂家を訪ねた。庭は広かったが、ほとんどの庭木が手入もされず伸び放題になっている。
 縁側で、澄江が猫に囲まれるようにして新聞を読んでいた。
 二人を見た数匹の猫が慌てて隠れた。
 吉原と中島は警察官の身分証明書を見せてから聞いた。
「鉄男さんは御主人の弟さんでしたな」
「そうじゃ。主人の弟じゃ」
 澄江がメガネを外して答えた。
「昨日、その鉄男さんが殺されたんじゃがー」
「知っとるがね。朝から下の朝子さんがわめいとったから、行ってみたら倒れとった」
「死んどるのを見たんかいなぁー」
「見たのは納屋の裏からじゃ。足が悪いから段差のきつい所へは行けん」
「それでぇー」
 吉原は尋ねながら、縁先に立てかけてある杖を見た。
「後は触ったらあかんさかえ、朝子さんに゛駐在に連絡せい゛と言うて家に帰った」
「そのままずっと家にー」
「そうじゃー。わしに出来ることなどありゃせんから。家に帰って新聞を読んどった」
 吉原は、義理の弟なのに冷たい対応に想えたが、
「昨日、この辺りで不審な人物を見とらんかい」
 この家の者なら誰かを見ているはずだと、期待して尋ねたが、
「昨日は佐用の姉の家に、秋祭りに呼ばれて行っとったさかえ、誰も見とらんわ」
「佐用のどこですか」
「本位田というところじゃ。奈良の甥が車で迎えに来てくれたんじゃ。もちろん帰りはここまで送ってくれた」
「と言うと、昨日の午後は家におらなんだー」
「甥の竣介が迎えに来てくれたのが十一時前じゃったから、それから佐用に行って、帰ってきたのが夜の九時過ぎじゃった。この子たちに聞いてみんしゃい」
「この子たち―」
「この猫たちが出迎えてくれたんじゃ」
 叔母が猫の頭を撫ぜながら真剣に言うから、吉原は一瞬ボケているのか、と想ったが目は落ち着いていた。
「だから誰も見とらんのじゃー」
「この屋敷に、一人で住んどるんかいなぁ」
「そうじゃー。一人じゃ」
 吉原は、中島刑事に佐用署に確認するように指示をすると、家の裏から竹藪沿いに歩いた。
 大きな朽ちかけた納屋の裏を回って、竹藪沿いに十メートルほど歩くと、鉄男の畑との境界に出たが、段差が三メートルほどある。
 澄江が言った段差がこれだと分かった。
 
 悪い予感が当たり、その後も芳しい進展はなかった。
 吉原は今までの経験から、徹底した地取り、鑑取り、ブツ(証拠品)捜査で何かが分かると考えていたのだが、勝央警察署内に捜査本部を立ち上げて一週間近くになるのに犯人の目星は全くつかなかった。
 鉄男の友人関係、金銭によるトラブル、女関係とあらゆる方面からくまなく調べたが、殺される原因になるようなものは見当たらなかった。性格的には内気で兄鉄蔵に対し、ずっとコンプレックスを抱いていたが、鉄蔵は一年前に死んでいる。兄に比べ、地味な性格なので借金もない。女にもてるタイプでも、女に入れ込む性格でもない。
「殺された原因が、分からん」
 吉原は刑事歴三十年のベテランである。
 動機のない殺しなどない。と身に染みているのに、鉄男の周辺からは原因となるものが見つからなかった。
「何か、見落としている・・・・・」
 吉原は考えに夢中になると、煙草に火をつけた。
「警部捕、どこで煙草を吸っているのですか。煙草は既定の場所で吸って下さい」
 勝央警察署交通課の山内巡査長が、部屋中に響き渡る声で責めた。
「は、はいー」
 岡山県警捜査一課のベテラン警部捕の吉原が飛び跳ねた。
 三十歳を大きく回っている山内里美は勝央署のマスコットガールでもある。正論を堂々と言う山内は、上司であろうとルール違反を見逃さなかったが、甘え上手だったから厳つい男たちにも人気があった。
 吉原はしぶしぶ煙草をもみ消しながら、
「山ちゃんの声は、マイクなしでも迫力がありすぎるがなー」
「何を言っているのですか、ダメなものはダメです。私は吉原警部捕のとぼけた顔に騙されませんからね」
「そんなに女を騙したかなぁー」
 吉原が小さな顔を傾けて言うと、
「その焦点の定まらない目で、マルタイを安心させて落すと聞いています」
「人聞きの悪い言い方やなぁー」
 吉原が慌てて消した煙草を、未練がましく見ながら言った。
 山内が帰りかけると、
「もう、帰るのかいなぁー」
 吉原の未練が、煙草から山内女史に移っていた。
「初七日なんです。知り合いのおばあちゃんが間違って農薬を飲んで死んだんです」
「農薬を飲んだって、今時珍しいな。気を付けて行きや」
 吉原が声を掛けると、
「豊福之庄ですから、自動車で二十分ぐらいです。そうや、この間殺された石堂鉄男さんの近くですわ」
「石堂家の近くじゃとー」
 吉原の勘が弾いた。
「そうです。石堂さんの家の上の上です」
「上の上いうたら、猫屋敷の上の小さな家か」
「はい。猫屋敷の上の家ですが、それが何かー」
「その、そのおばはんが死んだのは、いつや」
「死んだのは十月の三十一日ですが、農薬を飲んだのは前日やったと聞いていますが」
「じ、十月三十日やとー。はっきり分からんか。本当に三十日かどうかー」
 吉原の指から、未練たらしいタバコが落ちても気が付かない。
 山内がカバンから手帳を出して、ページをめくる。
「ピンポンー。当たり―。そうです。芳子さんが間違って農薬を飲んだのは十月三十日らしいです。その日は下痢だと想って家族には黙って正露丸を飲んですましていたそうですが、吐き気と震えが治まらず、翌日、おばあさんの容態がおかしいのに気が付いた息子さんが、救急車を呼んで病院に連れて行ったそうです」
「それでー」
「慌てて病院に連れて行ったのですが、手遅れやったそうです」
「それなら検死されたはずや」
「その辺は分りません。後は中島刑事に聞いて下さい」
 山内は腕時計を見ると、急いで出て行った。
「検死の結果が知りたいがな」
「確か、解剖は備前医科大学がしたと思うのですが」
「なんや、頼りない話やなぁ。農薬で死んだことに誰も疑いを持たなんだんか」
 農薬事故は時々起るから、事故死と考えていた。まして石堂鉄男の殺人事件が起こった後である。こちらを最優先すると、捜査本部を立ち上げ、全署で対応にあたっていたのだ。
 
 翌日、吉原は中島を伴って備前医科大学に向かった。
 備前医科大学は地域医療の貢献を目的に十年前に地元有志の熱意で新設された。まだ新しい校舎が瀬戸内海を見下ろす丘陵の上にあった。外からみると大学とは思えないほど環境に配慮して建てられ、瀬戸内の青い海と白い校舎が絶妙のコントラストを描いていた。
 二人は解剖を担当した初老の教授に会った。
「ああ、岡本芳子さんの農薬誤飲ですね」
 教授はパソコンでその時の解剖結果を開くと、
「間違いなく有機リン系の農薬を飲んでいました」
「と言いますとー」
「普通の遺体は神経系の緊張がなくなって瞳孔が散大しますね。ところが有機リン剤は副交感神経を強く刺激しますから、心拍動が抑制されて停止します。同時に瞳孔の括約筋は萎縮したまま死亡するのが特徴ですから瞳孔は縮小するのです」
 教授はパソコンから二人に目を移すと、
「詳しく説明しますと有機リン系のアセチルコリンは分解酵素活性を阻害しますから、神経の筋や気管を麻痺させ死亡の原因をつくるのです。解剖すると胃の中からスミチオン、フェニトロチオンとも言いますが、害虫剤が検出されました」
「それなんですわ。先生、今日農薬を間違って飲むことなんてあるんですか」
 吉原は疑問をぶつけた。
「どれだけ農薬を注意して扱うかによると思います。昔に比べ安全になったとはいえ、稲の害虫であるウンカや、ハエ、ダニを殺虫するのですから、口に入れると危険です」
「私たちは刑事ですから、どうしても疑ってかかる癖がありましてな。もしもなんじゃが岡本さんが誰かに農薬を飲まされたと、言うことはありませんかー」
「それはないでしょう。断定はできませんが、今回は口から入っています。ということは自分で飲むか、誰かに無理やり口に入れられない限り、胃には入りません。もし誰かに飲まされたのでしたら、直ぐに助けを求めたでしょう。岡本さんは何かの食あたりだと想って正露丸を飲んでいます。それは農薬だと知らずに誤って口に入れたのだと考えられます」
 初老の教授はメガネを中指で押し上げながら、刑事の習性をあざ笑うように言った。
 
 勝央署に着くと、夜の捜査会議が待っていた。
 岡山県警捜査一課課長の松井と、管理官の久保、係長の仲野に、勝央警察署長の吉田、副署長の三木が座って各班が持ち帰る情報を聞いていた。
 今までの捜査状況を聞いた管理官の久保は、連日マスコミに夜討ち朝駆けされてイラついていたところに、各班に目ぼしい捜査報告がなかったから、
「何一つ、殺しの証拠も容疑者も割り出せんって、どうなっているのや。ぼっと歩いて回っているだけではあかんのと違うかー」
 普段は温厚な仲野係長までが続いた。
「それにや、鉄男が殺される動機が見つからんとは、どういうことや。鉄男は鈍器で後ろから殴られて殺されたのやどー。動機がないはずがないわ」
 平和な村に怒った殺人事件である。
 マスコミが注目して、連日特別番組を組んで放送している。
「吉原警部捕、今日備前医科大学に行ったそうやが、何か閃いたのか」
 吉原は、十月三十日に石堂鉄男が殺され、同じ日に岡本芳子が農薬を誤飲したことの関連性を調べたことを報告すると、
「検死解剖した先生は、誤飲だと断言したのだろう」
「農薬を自分で飲んだと言いましたが、誰かに飲むように仕掛けられたのでは、と想うて、聞きに行ったのです」
「飲むように仕掛けられたー。吉原警部捕は岡本芳子も殺されたと考えているのか」
「それはまだ分かりません。しかし十月三十日、同じ日に石堂鉄男が殺され、岡本芳子が農薬を飲んでいるのです。豊福之庄は凶悪な事件など起こったことのない平和な村です。私は偶然にしては出来過ぎているし、あり得ないことだと想いました」
「それでー」
「石堂澄江です。澄江の猫屋敷の下の石堂鉄男と、上の家の岡本芳子が死んだのは、この三軒に何か確執があったのではないかと想っています。なにかが引っかかるのです」
 副署長の三木が、
「しかし、猫屋敷の澄江は当日、佐用の親戚の祭りに行っていて不在だった。鉄男は三十日の午後殺されている。澄江には完全なアリバイがある。いない人間がどうして人が殺せる」 
「澄江のアリバイは完璧じゃが、この三軒には、我々の知らん何かがあって、それを隠しているのではないかとー」
 隠していなければ、動機が浮かびあがっている。
「あの台地はもともと庄屋だった石堂家の大きな屋敷があって、下の田圃を見下ろして小作人たちの作業を監視していました。戦後の農地改革で農地は手放し、小作人たちの長屋や、炊事場、農機具小屋も解体してなくなると同時に、石堂本家の大きな屋敷も潰して、今の家に建て替えたのです。土地も下側の一部に次男の鉄男が住むようになり、上側の作業小屋を長年小作人頭として働いた岡本家が貰ったそうです」
 地元に住む副署長の三木が、県警の幹部たちに豊福之庄と石堂家の関係を説明した。
 黒板に張っている村の地図を指で押さえながら、松井が確認するように呟いた。
「吉原警部捕が目をつけた、この三軒の人間関係が気になるな」
「本人たちは隠していますが、どちらかといえば仲が悪く、腹に一物を持っていると思えます。他の家は下の田圃の近くか、村の入り口周辺か、谷を隔てた所に散在して住んでいます」
「三軒しかない処で、二軒が同じ日に事故に遭った」
「ならこの三軒を徹底して洗え」
 沈んでいた捜査に光明が見えだすと、活気が戻った。

 西井警部補と上野刑事は、訪れた石堂鉄男の妻朝子から耳寄りな話を聞いた。
「人に殺されるような、恨みを・・・・・」「不審な人物をみなかったか・・・・・」等のありふれた質問に反応しなかった朝子が、岡本芳子の話には身を乗り出してきた。
「主人はこの一ヶ月、何や悩んでいましたな」
「悩んでおられたー」
「はい、お金のことやと思います」
「何かお金がいるようなことがあったのですか」
「どちらかと言うと小心な人でしたから、私にも言いませんでした。本当のことは分かりませんが、一度、゛芳子は強欲な女やとー゛と怒って言ったことを憶えとります」
「芳子って、上の農薬を飲んで死んだ岡本芳子さんのことですか」
「そうです。上の岡本芳子さんだと思います」
 朝子が、芳子の名前を出したことに後悔しているようだったが、
「岡本さんに、強請られていたというのですか」
 西井は迫った。
「それは私の勘で、思い違いかも・・・・・」
「奥さん、これは殺人事件です。ましてご主人が殺されたのです。我々はどんな小さなことでも手がかりになることが知りたいですがな」
「はい、お金に対して几帳面な人でしたのに、最近、二万とか三万を持って出とりました。何に使ったのかも言いません」
 
 岡本芳子家に行った松本刑事と川島刑事は、息子の嫁の越美から、
「おばあちゃんは農薬を飲んだとは思いもしてなかったようです。気分が悪いと言って、その日は早めに布団に入りましたな。いつものことですが、部屋に入ると、私たちもそのままにしとりました。寝るのと食べるのが楽しみな人でしたから」
「どこで農薬を飲んだか、思い当たるところはー」
「それが分からんのです。家の農薬は納屋に分けて置いとりますし・・・・・」
「近所で飲んだとか、飲まされたようなことは」
 息子の貞夫は口が堅く、余り母親のことを喋らなかったが、嫁の越美は立場の違いなのか、質問に答えた。
「それもかいもく分からんのです。この辺で農薬を放置することはありませんがな。子供が触ったらえらいことになりますから、みんな気つけとります」
「なのに、農薬を飲んだ」
「間違って口に入ったとしか考えられませんわな」
「そうですか。ところで、近所との付き合いはどうでした」
「ここは三軒だけで、村の人は下の方に住んでおられますからなぁー」
 越美は応えたくないように想えたが、
「三軒は仲が良かったのですかー」
 松本は畳み掛けた。
「どちらかと言うと、良い方ではなかったです。おばあちゃんと、下のおばあさんとは私が嫁に来る前から仲が悪く、喋らんかったし、分家とも最近は口もきかんかったし」
「近所は三軒しかないのにー。仲が悪いと不便じゃろー」
「そうかも知れんが、私は初めからそんなものじゃと思とりましたから」
「おばあさんの金遣いはどうです」
 一瞬、越美の目が光ったのを松本は見逃さなかった。
「最近、お金を持っていたとかー」
「それなんじゃが、子供に珍しくゲームを買ってくれて。おばあちゃん、どうしたんと聞いたら、私かて可愛い孫にゲームの一つぐらい買ってやりたいがな、って笑っとりましたわ」

 吉原と中島は再び石堂本家、猫屋敷の澄江を訪ねた。
 澄江は先日と同じように、猫に囲まれて新聞を読んでいた。
「今日はまた、なんですか」
 澄江が先に声を掛けた。
「思いだしたことがないかと想ってーな」
 吉原が苦笑いしながら言うと、
「なんでじゃ、日本の警察は世界でも優秀じゃと聞いとるのにー」
 痛い処を突いてきた。
「だから地味に聞いて回っているんじゃ。何か思い当たるようなことはないかなぁー。どんな小さいことでもかまわんからー。それが事件の解決に繋がるか知れんがな」
「知っていたら喜んで協力しますが、なにしろ家におらなんだからな」
 この現実が壁だと想ったが、反対に何かを知っているようにも聞こえる。
「この屋敷の上と下で人が死んだんですわ。こんなことってありますかな。わしゃー不思議でならんのんじゃー」
 吉原が牙を剥きかけると、
「私はこの村に嫁に来てから、昔の時代だったからかも知れんが、納得のいかんことばかりじやった。毎日、涙を流さんようになっただけ良くなったわ」
「御主人は豪快な人やったそうやな」
「見かけだけや。家の中では酒を飲むだけの猫じゃったわ」
「猫、ですか」
 吉原が笑って聞いた。
「男はみんな猫や。見かけだけじゃー」
 吉原は屋敷をぐるっと見回した。大きく頑丈な屋敷だ。梁だけでなく使っている柱が違う。欄間しても大きな一枚の板を見事に透かし彫りしたものだ。昔の屋敷の材木を再利用したのだろうが、今こんな家を建てるとしたら、途方もない金がいるだろう。
 この澄江さんの心は、嫁に来て以来、ずっと闇のままなのかもー。
「御邪魔しましたな。何か気が付いたら連絡して下さいな」
 吉原は早々に引き上げることにした。何度訪ねても、この屋敷と澄江から聞きだせるものはないと判断したのだ。
 
 この夜の捜査会議は弾んだ。
「鉄男が芳子に強請られていたのか」
「大きなお金ではなく、二万とか三万を何回か渡していたようです」
「強請るネタはなんや」
 久保の声も力強い。
「芳子は今まで買ったこともないゲームを孫に与えています。この金が鉄男から強請り取った金だと思われます」
「そのネタや、ネタが分からんかー」
 県警の松井捜査一課長が聞いた。
「それが何ぼ調べてもネタになるようなものがないのです。金額からみても大きなネタではないと思われます」
「猫屋敷の上と下の家が何かで揉め、それが原因で死んだと思われるのに、真ん中の猫屋敷の素知らぬ存在が気に入りませんわ」
 吉原は、澄江がこの事件の鍵を握っていると確信している。
「澄江の佐用にいたアリバイは完璧や。これでは任意で引っ張ることもできん」
「それだけやない。澄江が鉄男を殺す理由も、そんな力もない。芳子もそうや。澄江が芳子に農薬を飲ませることは時間的にできんし、これも佐用のアリバイがある」
 澄江が十一時前から、夜の九時までこの村にいなかったのは動かせない現実であった。
   
 吉原は中島を連れてJR林野駅から姫新線に乗ると、姫路に出て大阪に向かった。
 澄江を送り迎えした塩谷竣介に会うために、大阪の高級ホテル、グランドパレスに行った。
 フロントで用件を言うと、二階の宴会ロビーに行くように言われたが、広すぎてうろうろしていると、フロアーレディが案内してくれた。
 二階ロビーと言っても、横を通る人がファッションモデルのように見え、吉原と中島のさえない服装がかえって目立った。
 吉原と中島が窓際のソファーに座って待っていると、
「お待たせしました。塩谷竣介ですが」
 タキシードを着た、物腰の柔らかい男が名乗った。
「あぁーお忙しいのに済みませんな。岡山県警捜査一課の吉原です」
 吉原は紐の付いた身分証明書を見せると、横で中島が、
「勝央警察署の中島です」
 吉原と同じように証明書を見せた。
「何か、私に聞きたいとかー。わざわざ岡山から来られたのですか」
「そうです。岡山の田舎者じゃけん、このホテルの豪華さに圧倒されて落ち着かんですわ」
 と言いながら、目は獲物を見つけたように光っていた。
「で、御用件は」
 時間がないのか、ホテルマンが聞いた。
「十月三十日、石堂澄江さんを豊福之庄に向かえに行かれたそうじゃが、間違いありませんか」
「ええ、間違いありません。十月三十日は田舎の秋祭りですから、例年休みが取れたら帰るようにしています。今年は岡山の叔母も来ると聞いたものですから、私が迎えに行きました。叔母の家に着いたのが十時四十分で、送り届けたのが夜の九時十二分でした。それが何かー」
 ホテルマンは時間を気にする習性がある。
「澄江さんの下の石堂鉄男さんが、三十日に撲殺されたのです。猫屋敷の下の畑で」
「三十日にですか。私も叔母も間違いなく佐用にいましたがー」
 刑事は裏を取っているのか、顔色一つ変えなかった。
「もう一つあるんですわ。澄江さんの猫屋敷の上の家の芳子というおばさんが三十日に農薬を飲んで、三十一日に死んだんです」
「また三十日ですか。でも私も叔母も三十日は豊福之庄にいなかった。それが何で、事情聴取されるのですか」
 竣介は理解できなかった。
「あの猫屋敷がある高台は御存じのように三軒しかない。その三軒のうちの二軒から死者がでたのじゃー。それなのに目撃者も他人の痕跡も全くありゃせん」
「そうですか、でも三十日は私も叔母も間違いなく佐用にいました」
「私が聞きたいのは、澄江さんに何かおかしなことはありませんでしたか」
「叔母がですか、どうでしたか。佐用に着いたときは大人しくしていましたが、だんだん元気がでてきたのか、帰るときは冗談を言っていました」
「冗談ですか、どんなことを言われていました」
 吉原が笑いながら、食らいついてくる。
「帰っても誰もいないから、寂しいでしょう、と聞いたら、猫がいるし、楽しみがあると笑っていました」
「ほぉー帰っても一人なのに、何が楽しみなのか。楽しみなテレビ番組でもあったんかいなー。それについて何も言っておらなんだのですか」
「私が聞いても、内緒としか言いませんでした」
「内緒ですか、内緒の話ならよけい聞きたいですがな」
 小柄な刑事も、竣介と同じことを聞いた。
 その後、三十分ほど内緒の話について聞かれたが、竣介も知らないことなので、堂々巡りに終わった。
 
 翌日、竣介は澄江叔母に電話を掛けた。
「昨日、岡山の刑事が来ました」
「細い小柄な男と、キツネのような目をした男じゃろー」
「殺人事件が起こったとかー」
 竣介が心配して言うと、
「なにも心配することはありゃせん。殺される人間はそれだけの理由があるんじゃ。陰で罰当たりなことをしとったんじゃろ」
「叔母さんの家の上と、下の家の人と聞きましたが・・・」
「そうじゃ。上と下の罰当たりに神さんが天罰を下したんじゃ。私らが心配することは何もありゃせんがな」
「しかし、叔母さんの家のホン近くで殺人事件が起こった可能性があるのですよ」
 竣介が注意を促しても、
「殺人事件なぁー。大袈裟に騒ぐことはありゃせん。勝手に死んだだけじゃ」
「叔母さんも気を付けて下さいよ」
 電話を切った後も、竣介は落ち着かなかった。自分たちといるときの人の好い叔母と、独りのときの叔母は別人のような気がした。大きな屋敷に独りで暮らしていると、気持ちを強く持たなければ生きていけないのだが、それとは違う気がする。
 分からない。叔母の人間性も分からないが、起こった殺人事件も分からない。刑事は後ろから鈍器による一撃で殺されたと言った。もう一人は自分で農薬を飲んで死んだ。
 そんな完全犯罪のようなことが出来るのだろうか。
 当日澄江叔母は、竣介と佐用に行っていた。アリバイが完璧なのに、ベテランの刑事が、なぜ、叔母を疑っているのか。警察の真似事などしたくないが、気になる。殺人事件より、実際に叔母が事件に関わっているのか、いないのか知りたい。

 次の休日、竣介は高速道路を乗り継いで美作インターで降り、県道五十一号線を南下して、脇道に入り、白い三階建ての勝央警察署に吉原警部捕を訪ねた。
「おや、忙しいホテルマンが、どうしたんじゃ」
 吉原がおどけて言ったが、竣介は余計、抜け目のない老獪さを感じた。
「事件が気になって仕事が手につかないのです。ホテルはお客様と直接対応します。悩みを抱えていますと、どうしても仕事がおろそかになって、お客様にご迷惑をかけます。事件も仕事も中途半端になって落ち着きません」
「・・・・・」
「教えて下さい。先日起こった二つの事件に、叔母の石堂澄江が関係しているのですか」
 竣介は本当のことが知りたい。
 竣介の真剣な顔を見た吉原が、一呼吸おくと、
「捜査内容は詳しくは言えんが、今回の事件は今までにない展開をしております。それは石堂鉄男が殺された動機が今も分からんからです。殺人には人を殺す何らかの原因、怨念、憎しみ、金銭トラブルなどがあるんじゃが、この事件にはそれが見当たらないのですわ」
「・・・・・」
「私も長年刑事をやっとりますが、動機のない殺人事件などありゃせんでした。しかし今回は、何ぼ調べても利益を得る者もいなければ、その原因も見つからんのですー」
 吉原が正直に答えた。
「塩谷さんには悪いんじゃが、この二つの事件の鍵を握るのは、猫屋敷の澄江さんしかおらん結論に行きついたじゃ」
「でも、私たちは佐用に行っていましたよ」
 竣介が抵抗すると、
「分かっとりますがな。お二人のアリバイは完璧じゃー」
「なぜ、叔母を疑うのです」
 竣介が反論すると、
「前にも言いましたが、あの台地には三軒しか家がないんじゃ。そのうちの二人が死んだ。この三軒は仲が悪く挨拶もせなんだと聞いとります。この三軒に、何かがあったら、いやあったのだと想っておりますな。それはいつか憎悪に変わりますわな。家が近いだけに、憎悪が敵意に変わることもありますな。もしその可能性があるとしたら、澄江さんしかおらんと、私は思うたんじゃがー」
「可能性だけでは、犯人と決め付けられないでしょう」
「もちろん。確たる証拠がないと犯人を捕まえることはできませんな」
 吉原警部捕は苦し紛れに言った。
 
 竣介は勝央警察署を出ると、吉原警部捕が言った可能性について考えた。その可能性を叔母に当て嵌めて考えると、ある方法を使えば可能で、その方法で何もかもが解決することが分かった。
 まさか、と思い、もう一度考えた。
 しかし考えれば考えるほど、竣介の想いと逆の結果になった。
 竣介は車を発進させると、叔母の家に向かった。
 向かう気は全くなかったが、この事件に叔母が関わっているのか知りたかった。

 叔母は怪訝な顔で迎えてくれた。
「急に、どうしたんじゃ」
「今、勝央警察に行ってきました」
「なんで、また警察に行ったんじゃ」
 一瞬、叔母の顔に不安が浮かんだのを、竣介は逃さなかった。
「吉原警部捕は、殺しの動機が分からんと嘆いておられました」
「ふーん」
「私なりに考えてみました。石堂鉄男さんと、岡本芳子さんを殺す動機があるのは、叔母さんだけです」
 竣介は言った。言いたくなかったが言ってしまった。
「私が、か」
 叔母は動じなかった。
「鉄男さんも芳子さんも泥棒猫だったのですね」
「泥棒猫なぁー」
 叔母に変化が現れだした。
「叔母さんは家中につけていた印から、二人がどこから入って、どのように行動するか知っていました。だから泥棒猫の動きに合わせて罠を仕掛けて、佐用に行ったのです」
「祭りに呼ばれたら、たまには行かんといけんがな」
「二人は叔母さんが、僕の車で出て行くのを見ていました」
「泥棒猫は外出するとすぐ入って来よる」
「しかし、今回は罠が仕掛けてありました」
「罠じゃてー」
「上の家から叔母さんが出て行くのを見ていた芳子さんは、いつものように侵入してきました。叔母さんは芳子さんの口の卑しいのを知っていましたから、饅頭に農薬を入れて置いていました。その饅頭を見つけた芳子さんは、たまらず口に入れた。ひょっとしたら二つ食べたかも知れませんね。しかし今回は妙な味がした」
「・・・・・」
「盗人に入った家の中に、食べたものを吐き出すことが出来なかった。調べるとすぐ誰かわかりますから。芳子さんは無理やり飲み込むと家に帰って自分の部屋で布団に入った。それが手遅れになって翌日死んだのです」
「それで」
「午後の三時過ぎ、今度は下の家の鉄男さんが侵入して来ました。鉄男さんは金庫に執着していましたから、直ぐに金庫を開けようとしました」
「いつも触っておったな」
「しかし今回は仕掛け、罠が待ち構えていました。仏壇の下の金庫の開きを開けると、ぶら下がっていた備前焼きの花壺が落ちるように吊ってあったのです。壺は慎重に布に巻いて、更に黒い袋に入れて天井に仕掛けてあったと想います。鉄男さんはいつもの通り、金庫の前でしゃがむと観音扉を開けた。あの金庫を開ける位置は仏壇の正面の一か所しかありません」
「それでー」
「昼間とはいっても電気を付けられない家の中は暗く、まして他人の家の中では細い紐に気が付くことはありません。開けると同時に紐に結んであった花壺が落ちてきて、鉄男さんの頭を直撃したのです。事件を難しくしたのはここからです。鉄男さんも芳子さんと同じで、他人の家の金庫を開けようとしていたことを村の人に知られたくなかった。どんなことをしても自分の家に辿り着きたかった。なぜなら村の中で泥棒に入ったことが知れ渡ると、残った家族は一生陰口を言われ、村八分にされます。これだけは避けたかった」
「村人に迷惑をかけるな、は昔からの村の取り決めなんじゃー。それも石堂家の先祖が、小作人たちの不満を取り締まるために作ったそうじゃー」
 叔母が思い出したのか、呟くように言った。
「そうなんですか。庄屋だった石堂家が、村人たちが犯罪を起さないように作ったのですね」
「分からんが、昔は厳しかったと聞いている。一家が着の身着のまま村から追放されたらしいな。しかし、それで村の秩序は保たれていたらしい」
「そうでないと村の掟は守られませんからね。話を戻しますが、幸い布に包んだ壺は、頭を直撃しても即死はしなかった。鉄男さんは逃げたが、高い所から落ちてきた壺の威力は大きく、逃げる途中の鉄男さんの命を奪ったのです」
「・・・・・」
 叔母はじっと竣介を見ていたが、その目に力はなかった。虚ろな目を一点に集中させていたが、何も見ていないことが分かった。
「それは竣ちゃんの想像やろー」
 叔母の顔は凍ったままで、何ら変化も現れていなかった。
「かもしれませんが、佐用の祭りの帰り、車の中で叔母さんが言われた
゛楽しみ゛とは泥棒猫が罠に掛かることだったのですね。あの日叔母さんは、私が帰った後、家に入って罠を確かめました。期待した通り吊っておいた壺も予定の位置に落ちていたし、毒入りの饅頭も減っていた。壺を布に包んで更に袋に入れておいたのは、家の中に血が飛び散るのが嫌だったからです。それと粉々に壺が割れるのも避けたかった。袋に入れていると後の片付けが楽ですからね。その夜、布と壺を片づけ、残りの饅頭を処分すると、泥棒猫の侵入口も塞いで、全ての痕跡を消したのです。僕の考えは間違っていますか」
 叔母がくすくすっと笑った。
「足の悪い私が高い所に上がって、壺がぶら下げられるのかー」
「壺を吊るすのに高い所に上がる必要はありません。この地方には高い所の柿や栗を取るハソンバリがあります。納屋にあるのを見ました。それに紐を挟んで天井の梁に通して引っ張れば、簡単にぶら下げられます」
 ハソンバリは長い竹の先を割り、その割れ間に小さな木や竹を横に入れ、開いている竹の先に物を挟んで取る道具である。
「竣ちゃんは案外、賢いんじゃなぁー」
「案外、ですか」
 凍った場を和ますため、笑って聞いた
「悪気はありゃせん」
「分かっています」
「本当に分かっているのかー。それなら言うが、私が罠を仕掛けをしたのは本当じゃがな、仕掛けはしたが、私の家の中でのことじゃ。勝手に泥棒に入ってくる方が悪いんじゃど。猪の罠かて、猪が畑に入って農作物を荒らすから罠にかかるのじゃ」
「猪ですか」
「私は、自分の家の中に罠を仕掛けただけで、殺したのではないでー。私は竣ちゃんと一緒に佐用に行っていたもんなー。祭りは愉しかったな。お姉ちゃんたちもよう笑っとった」
 やはり、叔母はおかしい。
「私は知らん。竣ちゃんも知らんことじゃ。何にも心配することはないわ。今から奈良まで帰るのか。汚い家じゃが、泊まっていけばー」
 誘われたが、とても泊まる気にはならなかった。
「仕事があるから」
 と叔母に挨拶をして車を走らせた。


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みんなの感想(2件)

平野俊一
2024.01.30 平野俊一

小説の内容とは関係ないものの主人公の属性やキャラクターについてもう少し説明があっても良かったのでは?

解除
平野俊一
2024.01.30 平野俊一

タイトルの猫屋敷と小説の内容に何か関連を持たせた方が良かったのではないでしょうか?事件に猫がどう関わって来るのかと思って読んでいました。

解除

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