爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

時の一族

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目を覚ませば、心配そうな青龍チーロン先生の顔が視界いっぱいに拡がった。

「あ……れ──先…生?」

「…良かった───お加減は如何でしょうか?」

「…まだちょっとクラクラするけど……大丈夫そうだよ」

首筋に触れると、赤龍ホンロンに噛まれた時に出来た傷口が無くなっていた。
驚いて何回も触れていると、先生が「私の力でしたら、そんな傷は直ぐに治ります。これでも医者なので」と、先生の力は偉大なのだと、この時改めて実感する。

(そういえば、何があったんだっけ…………)

赤龍ホンロンに攫われて~からの変態僧侶の黒龍ヘイロンと出逢って……キョンシー達に襲われそうになったけど……───なんやかんやあの二人には一応助けてもらった事になるよね。

(……すっごい、険悪そうな仲だったけど……。しかも死にかけたしぃ~…)

「災難でしたね…。あの鹿に巻き込まれて大変だったでしょうに…」

「でも……赤龍ホンロンに関しては、素直じゃなくて頑固で…。黒龍ヘイロンに関しては、面倒くさくて変態なだけで──悪い人達…………(いやでも…森を平気で燃やしてでも……積年の恨みを晴らすつもりだったよね……)先生!やっぱり悪い人達ですっっっ」

「然し──貴女のおかげで、森は全焼にならずに済みました。…きっと、その龍の髭ロンシュータンの力によるものでしょうね。」

「そ、そうなんだ……────良かったぁ~…。」

おばあちゃんから貰ったこの指輪……───

(助けてくれたのかな?……おばあちゃん)

左手の薬指に嵌めていた龍の髭ロンシュータンを撫でていると────

「かみっ、めがさめたのだなっ」

「"へんたいそうりょ"だなんて、ひどくねっ」

「……なんで……おれが……こんな」

神美かみが横になっていた寝台の上に「んしょっ…」とじ登ってきたのは──した、白龍パイロン黒龍ヘイロン赤龍ホンロンだった。

(ま……まさか───気絶する前に空から降ってきたあの音って……)

「あ……すみません、先生……───いつの間に此処は託児所になったのでしょうか?」

「ほんの数時間前ですかね……」

「かみ、いたくないか?」

つぶらな瞳でこちらの様子を伺う白龍パイロンに、自然と顔がニヤけてしまう。
それは青龍チーロン先生も一緒のようで、口許を抑えて悶絶していた。
そのまま、ぎゅうぅ~~と抱き締めると、白龍パイロンは、頬を赤らめてじたばたと暴れ出すが、神美かみの力に適う筈もなく……
口から泡を吹いて気絶しかけていた。

「ぎゃあああ!?小龍シャオロンが死にかけてる!?」

「───そりゃあ……、君の馬鹿力で抱き締めたらそうなるよ」

「あ…!黄龍ファンロン!──なんだか久しぶりな感じぃ~!」

安堵の笑みを浮かべた黄龍ファンロンは慌てて首を横に振り、そっぽを向いた

「ふ、ふん……!───別に心配とかしてないんだからね!。…大体にして、君のせいで陛下と鹿が幼児化したんだから!!。責任取って元に戻しなよ!!」

「え……あ、あたしの────せいぃぃ~~!?────…その前に……此処は何処なの?」

室内は清潔感があって、居心地は良いが……
気候が暖かいのか、少々汗ばんできた。とゆーか
(暑い……─────)
この世界に"冷房"があれば直ぐに稼働していたであろうが……まあ、勿論そんな物は無いので諦めている。
パタパタと手で扇いでいると、「なんとか戻してくれぇぇ~~!」と、急によぼよぼの老人が神美かみの目の前に現れた。

「ひぃっ!?へ、変態おじいちゃん!?」

「阿呆!変態ではないわい!───お主、どうしてくれんのじゃ!。この僧侶にワシは呪いをかけられたんじゃぞ!!。なのに……こんな姿じゃあ……泣」

「あ、エロほんにつられた、じじいだ!」

幼児化した黒龍ヘイロンに指をさされ、馬鹿にされていた八罫ハッケイに、赤龍ホンロンは軽蔑の眼差しを向けるが、照れ臭そうに「ワシ好みのエロ本だったもんでつい……」と頭をポリポリと掻いた。
神美かみ青龍チーロン黄龍ファンロンは蔑視……

「じいさんそんなのでつられたのかよ!!」

「……この際、そこのジジイが呪いをかけられたとかはどうでも良いのですが───…神美かみさんは龍の髭ロンシュータンの力の一つ…"時戻し"を無意識に発動させたのでしょうね」

「おい…糸目の小童!!"どうでもいい"ってなんじゃっ」

「時戻し…?」

「ガーン!……スルーされた…」

「まあ、げんきだせってっ」

「変態僧侶…………お主、意外と良い奴じゃな……」

「……そんなすがたにさせられて……よくいうぜ…」

「"時戻し"は、数時間前~数千年先の過去の状態に戻す力の事です。火が燃え移る前の状態に戻されたことで、全焼せずに済んだ。……然し、龍の髭ロンシュータンは、元は龍仙女ロンシィェンニュ様が扱っていた力……───まだまともに使いきれていないのか……少し暴走した結果が、……幼児化なのでしょうね……」

「あぁ~……、いくらあたしの意思ではないとしても……、こんな可愛い姿になったんだもんねっ!グッジョブ!!」

「おい!おまえ!、こころのこえがダダもれだぞ!!」

「ぐふふふ……そんな小さい姿だったら、抵抗できないよねぇ?」

まるで変態ジジイのような手つきでジリジリと赤龍ホンロンに迫ると、精神も幼くなったのか、涙目で助けを懇願する。
あの時の迫力はいずこ……。
すると───先程まで軽蔑されて少し落ち込んでいた八罫ハッケイが、何か閃いた様子で
「時の一族じゃ!」と叫んだ。

「時の一族?」

「流石に仙女程の力ではないが、時を自在に操れるという噂を聞いてな……。」

「そんな凄い人がいるの!?」

 火龍果ほりゅうか国に寝たきりの娘が居るんじゃが……どうやらその者は、時の一族の末裔らしくてな……。──自身の力に嫌気が差し…、どっかの国の妃候補として役人にスカウトされて、国を離れたらしいが……、患って数年前に帰ってきたんじゃ」

「ジジイ、それって本当の話なの!?」

黄龍ファンロンが異様に喰い付く。
無理もないよ……

(もしかしたら…、その…”時の一族”の末裔の人が……若榴ルォリィ…)

黄龍ファンロンの、かつての親友なのかもしれないのだから。
キョンシーに……心を利用された───

「娘は、この 火龍果ほりゅうか国の花街に身を潜めていると言う噂じゃ…。」

「ええ!!、此処… 火龍果ほりゅうか国なの!?。それに……花街?」

八罫ハッケイがニヤリと口角を上げる

「遊郭じゃy────」

グゴオオオオオオオオオオ─────

「……お腹空いたんだけど……何か食べるものあるかな?」

えへへ…と、頭を掻くと
神美かみの腹の虫の音に驚いた八罫ハッケイは腰を抜かしてしまった。
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