爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

対面の時

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 火龍果ほりゅうか国・花街の山巓さんてん


「此処が、時の髄……」


 火龍果ほりゅうか国の花街には、客の好みや欲をより満たす為に
「華の髄」「月の髄」「陽の髄」「風の髄」もう1つは「時の髄」と呼ばれる────五つの区域ならぬ髄域ずいきで分けられていた。
何故「髄」が付くのか聞いたところ、「骨の髄まで喰い尽くす……──って、意味やで♪」と、妓女が笑顔で言っていた……──いやはや恐ろしい。

広い花街の奥の方に聳え立つ山巓には、立派な小屋が建てられていたのだ。

そこが、時の髄────

この場所を教えてくれた妓女が、「時の髄は、機嫌を損ねると数千年先に飛ばされてしまうよ」
と、クスクスと冗談を仄めかしていたが……

「ほ、本当に大丈夫かな?」

「私的には……このままで良いと思いますけどね……───特にこのは……」

そう言って首根っこ……どころか赤と黒の小さい龍の首を鷲掴みする青龍チーロン
子供の姿でいられるのも時間が限られてしまい、体力が落ちると本来の龍の姿に戻ってしまうらしい。……と、言っても…めちゃくちゃ小さいちび龍なので、迫力0。
じたばたと二匹は暴れるが、力の差は目に見えていた。
そんな様子を見ていた白龍パイロンは、神美かみの腕の中で"きゅうぅ……"と、怯えて小さく丸まっていたのだ。

「シャ、小龍シャオロン!大丈夫だよ!。あたしが頼んで、絶対に元に戻してみせるから!………って、言っても……本当はあたしが元に戻せたら良いんだけど……──ごめんね」

尻尾をパタパタと力無く動かし、瞳を潤ませていた。案外、繊細な心の持ち主なのかもしれない。

「……」

黄龍ファンロン?」

その後ろで黄杏ファンシィの姿になって、ずっと深刻そうな表情を浮かべている黄龍ファンロン

「……黄杏ファンシィ!!」

「!っ……な、何よ?!」

「大丈夫だよ!」

「……ったく、簡単に言ってくれるわね。大丈夫って何よ?───アタシは、許さないわ。女として、"自分に価値が無いと思った"事……──魂を売ってまで……人を死なせてまで……ッ────その苦しみを分かってあげれなかった……。」

「……その言葉を聞いたら、きっと…救われるんじゃないかな」

「……神美かみ

震える黄龍ファンロンの手を取り、神美かみは優しく微笑んだ。
しかし、間髪入れずに青龍チーロンが冷酷な視線を神美かみ黄龍ファンロンに向けた。

「……酷な事を言うようですが、もし…この"時の髄"にいる女性が───若榴ルオリィだとしたら……───本人と僵尸きようしごと始末せねばなりません。───我々、五龍ウーロンは……世界を護るのが役目ですから」

「先生!!……」

「綺麗事だけじゃ、救われないのが現実です。……我々が五龍ウーロン龍仙女ロンシィェンニュ様と関係がある事は、おおやけにしない方が良いでしょう…。下手をすれば……、元に戻れない上に、命を奪われるかもしれませんから…。」

確かにそうかもしれない……。
完全に魂を喰われたとしたら、それは若榴ルォリィではなくて、僵尸きようし───

(許せない……ッ───関係のない人達を巻き込んで、利用してッ!)

「……そういう事なので、此処からは人間の子供の姿になって頂かないと困ります。」

"なれますよね?"と、赤と黒の龍を脅す青龍チーロン
赤龍ホンロン黒龍ヘイロンは慌てて姿を変えて、泣きながら神美かみの足元に抱きついた。精神まで幼くなってしまったのか……

「あ、あいつ!!らんぼうすぎなんだよ!!泣」

「うえぇぇぇ~んッ!!泣 チーちゃんごわいよぉぉぉ~ッ!!」

「先生!もっと優しくしてあげて!」

「無理です、嫌いなので」

「んな、キッパリと……」

キィ……─────
すると、小屋の戸が勝手に開いた

「……お客様ですか?───」

現れた女性は、白髪を簪でまとめ上げ、赤い衣を身に纏う───痩せ細った身体には白粉おしろいが塗られていた。

「あ、貴女は……」

「……私は、この時の髄の妓女……───いえ、時の一族の者でございます。……こんな所ではなんですから、どうぞ中へお入りください───…龍仙女ロンシィェンニュ様と、お呼びすればよろしいでしょうか?」

「え…!?───なんで、龍仙女ロンシィェンニュの事を───」

「うふふ…、そちらの方々は…五龍ウーロン様でございますね?。」

「……私達の事を知っていると?──」

「時の一族では、有名な伝説ですから……」

「……貴女…名前は?」

黄龍ファンロンが時の一族の者と申した妓女に名を聞くと……

「───若榴ルォリィと申します」

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