爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

痩せるか、死ぬか

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「柘榴茶でございます。」

彼岸花の柄の湯呑みに、柘榴色の飲み物が注がれた。

彼岸花なんて縁起が悪い────

それでも、注がれたお茶はとても甘酸っぱくて優しい香りがした。
然し、それには誰も手を付けようとはせず、その様子に若榴ルオリィは小首を傾げた。

「…毒などは入ってはおりませんよ。」

「その証拠は御座いますか?」

青龍チーロンが鋭い視線を若榴ルオリィに向けると、横から"ぐびぐび"と飲み干す音が……

「…うん!めちゃくちゃ美味しい!───なんか甘酸っぱくて癖になりそう!おかわり!」

「言ってる傍から貴女は何をしてるんですか?」

「だ、だって、喉乾いたんだもん……」

「クスクス……、仙女様…どうぞ、お飲み下さい」

「ありがとう!。でも、あたし仙女様じゃないよ!───仙女はあたしのおばあちゃんで……」

「……いいえ────その指輪は……仙女様の証でございます。現に貴女は、此処に五匹の龍を連れているではありませんか」

「あはは…!なんかたまたまこうなって……」

「ですが……、貴女は仙女になる前に、そのを解かねばなりません」

「今その為に、絶賛ダイエット中です!」

「もっと手っ取り早い方法がございます。」

すると、若榴ルオリィは、掌から彼草色の丸い実を生み出した。

「これは、痩の果実───食した者は一瞬で痩せます。ですが……何かを代償にせねばなりません。」

「だ…代償?───」

「身体の一部を失うか……その命を失うか───黄杏ファンシィ様の様に……胸部を無くす事も有り得ますね。」

「!……───アンタ……、あの時の若榴ルオリィじゃ……ない?」

今まで黙っていた黄龍ファンロンが身を乗り出し、若榴ルオリィの胸倉を掴んだ。

「後宮の妃達と貴方が信頼していた妃は…私ではありませんよ。私の名を使って、身を隠した愚か者ですから……」

「っ……!!────」

「薄々お気づきだったのではないでしょうか?」

「……嘘よ……───嘘よッ!!!!だってそれじゃあ……ッ!!!」

「貴方がその胸部を切り落としてから……数日の間で、彼女は貴方を殺そうとしていました……───でも、運良く目が覚めたようで……良かったです」

「────柘榴シィーリオが…………?」

「嘘……!!───柘榴シィーリオちゃんが………」

ボワンッ!!!と、神美かみの腕の中でくるまっていた白龍パイロンが人間の姿(子供)に変えた。

若榴ルオリィとやら……そなたの話は本当なのか?」

「……この国や他国に、仙女様……美豚ビトンの噂は拡がっております。……それを拡げたのは、魔物に取り憑かれた愚かな妃です……。赤龍様が仙女様を攫い、そして黒龍様と出逢うのは全て必然でした。そうなる様に……柘榴シィーリオ様は仕組んだのです。」

若榴ルオリィは、白龍パイロン赤龍ホンロン黒龍ヘイロンに向けて手を翳した。
小声で祝詞の様なものを唱え、室内にカチカチと……───それはまるで、時計の秒針が回るかのような音が響いた。すると、三人の身体は早送りの如く元に戻ったのだ。

「!……小龍シャオロン、身体が…」

「元に、戻ったのだな……」

「成程……、私達は誘き寄せられた……と言う事ですか───」

「そうです……───白梨はくり国は、今…完全に無防備状態。民と国を人質に………美豚ビトンの命を差し出すように要望する事でしょう……」

「そんな……」

「国を救うには、この痩の実で一時的に痩せるか……────この場で死んで頂くか……」

それを決めるのは、貴女です……───と、若榴ルオリィは妖艶な笑みを浮かべた。

(痩せるか………、死ぬか────)
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