爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

忘れないで

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『こ、こんな所で……私は死ぬ訳にはいかない───折角…惡神五凶あじんごきょうとしての…地位を獲得したのに……───娘一人のせいで……』

宙に浮いたその妖怪──僵尸きようしは、ぶつくさと文句を垂れる。
風が少し吹き、顔面に貼ってある御札から垣間見えた素顔は、今にも誰かを殺めてしまいそうな表情を浮かべていた。

「────逃がしませんよ」

ブンッ!!!!────────

青龍チーロン は呉鉤ごこう僵尸きようしの脳天目掛けて振り翳した。
僵尸きようしは間一髪の所で避けたが、 均衡バランスが崩れてしまい、そのまま地面に落下してしまう。

「おっーと!、殺生しといて逃げるのかい?」

『己…黒龍ヘイロン!!!貴様、謀りよってッ!!!』

「オレは謀ってないよ?───そっちが勝手に勘違いしたんじゃないか~っ♪」

僵尸きようしの喉元に錫杖を突き付け、黒龍ヘイロンはニコリと笑みを浮かべる。
この男は敵に回したら、平気で人も妖怪も……仲間でさえも殺生しそうだ。

「でも────人の弱みに漬け込んだ上に、自分の過ちを隠そうとするのは良くないねぇ……」

『な……なんの事だ!!!』

「だって……あの女官ちゃんが言っていたじゃないか─── ”貴女のお母様を殺した…その内の一体を殺してあげたのよ?”…ってね───……神美かみちんは龍仙女ロンシィェンニュになったけど……美豚ビトンの血を引く者。つまり、彼女のお母ちゃんは美豚ビトンだったって事だ……。」

『や……やめろ────』

「殺生した相手を何で生き返らせようとしてる?───お前の目的は何だ?……」

『ぐ………クソッッ!!!!!!分からなかったんだから仕方がないだろうッ!!?…… 蚩尤シユウ様は、そこの美豚ビトンではなく、私達が殺した美豚ビトンをお捜しだったんだッ!!!!』

 蚩尤シユウ……?」

『フンッ……五龍ウーロンなのにそんな事も知らないのか?───最凶の戦の神であり、何れはこの世界の頂点となられる御方……───然し、龍仙女ロンシィェンニュに阿吽の森の奥深くにある、封印の廟へと封印されてしまったのだ…』

「どうして……────なんでその 蚩尤シユウは…あたしのお母さんを生き返らせようとしてるのよ!?。なんでお母さんを……」

『知りたくば……ククク…ッ!お前が死ねば分かる事だ……美豚ビトンよ』

「───テメェが死ね」

ジャラリと鎖鎌を僵尸きようしの首に絡め赤龍ホンロンは締め上げる。

「……あたし、やらなきゃいけない事があるの。おばあちゃんとお母さんを……柘榴シィーリオちゃんを酷い目に遭わせた……僵尸あなたを────」

『クククッ……私を殺すか?───』

「────いっぱつ思い切りぶん殴るって───決めてたのよッ!!!!!」

パンッ!!!!!!!───────

「あんたみたいな命を粗末にする奴なんて!!!」

ボコッ!!!!!

『ウグッ……!!ちょ、ま────』

バキィッ!!!!!!

「自分の過ちを隠そうとして、無かったことにしようとするなんて、んなの許されるわけないでしょッ!!!!!!!────でも……貴方が消えるのは絶対に許さないから!!」

気付くと僵尸きようしの顔はボコボコのパンパンに腫れ上がっていた。最早原型をとどめていない。五龍ウーロンは自分達よりも、龍仙女ロンシィェンニュ(リン子)よりも、神美かみが最強なのでは?と思った。

「犯した過ちは永遠に消えないよ───だからこそ、生きて償いなさい」

神美かみは羽衣を僵尸きようしの頭の上に被せる。
僵尸きようしは唐突に怯え出した───いや、苦しみ出したのだ。それはまるで、邪悪な物が全て吸い取られる様な───蓄積した悪と罪が、傷口を抉るかのように"罪悪感"として形となる─────

「……一生苦しんで───そして、忘れないで」

『あ……ああああああああぁぁぁッ!!!!』

邪悪な気配は完全に吸い取られ、僵尸きようしの身体はゆっくりと消えていく。

「貴方が生まれ変わる時がもし来たら……、今度こそ正しい道に進んで────」

はらり────と、一枚の古びた御札が地面にゆっくりと落ちた。

僵尸きようしは……何処に行ったの?」

黄龍ファンロンが憂いを帯びた表情で問う。

「…あたしにも分からない───でも、きっとこの羽衣が試練を与えたと思うんだ。…あたしの思いが詰まってたから……───今度こそ、ちゃんとした魂になれるように……」

ぐらりと神美かみの視界が揺らぐ

(あ……─────あた……し)

ドサッ──────

ゆっくりと地面に倒れた

「!?…神美かみッ!!!」

身体が冷たくなるのが分かる

「ちょっと!!神美かみ!!」

心臓が弱っていくのが分かる

「…!!────心臓が……」

あたし、今綺麗で…スタイルが良い女の子だよね?

「…もしかして…神美かみちん」

おばあちゃん……───お母さん……
あたし、頑張ったよね?

「……そうの実……食べたのか───最初から……此奴」

沢山、褒めて……抱き締めて

神美かみッ!!!!!死ぬなッ!!!!…ッぁ…駄目だ……駄目だッ!!!」

白龍パイロン神美かみを押し倒すように抱き締める。
美しく───少し幼い少女の顔に、白龍の涙が一粒零れた─────
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