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時の一族と実
後宮戦争3
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玉座が設置された間に、神美と五龍が集結した。
後宮の女官長が亡くなり、不在となった今─────
それをいいことに、妃候補達が勝手気侭をしているとのこと。それの主犯者が白虎宮の上流階級の妃・白蘭だと言う。
自分を陛下の正妃にしなければ死んでやるだの、なんとも幼稚で知性を感じられない。
それについて頭を抱えていたのは、麒麟宮の上流階級の妃・黄杏でありながら、宦官までをも務める──翠麟の姿になっている黄龍であった。
妃達の中で的にされかけている、帝は玉座に座りなが額に手を当てる。
「え、てゆーかさ~、白龍って上流階級の妃達を奥さんにしてなかったの?」
バリボリと煎餅を食べながら、無神経な事を発する隻眼の僧侶・黒龍は頬杖をつく。
「オレなら上流から下流まで、全員奥さんにしちゃうけどねぇ~っ」と、うへへ…と、下品に笑みを浮かべていた。この男は変態な上に女誑しである。
そう────本来なら、皇帝陛下は正妃とは別の妃と関係を持っていても可笑しくは無い。
それは、世継ぎや政治的なものにも関係していく。
もう一人か二人……世継ぎが出来ていても良い時期とは言いたいが……この龍…この男・白龍帝は──────奥手であり、堅物の天然記念物であった。
「……そんなんで国の主とかやってたのかよ。聞いて呆れるな…」
フンと、馬鹿にしたように鼻で笑う赤龍
「はあ?、アンタに陛下の何が分かんだよ?言ってみなよ?」
「わー!!黄龍落ち着いて!。赤龍も、そんな風に言っちゃ駄目だよ。」
「…はいはい───そりゃあ悪うござんした」
「うんうん、偉い偉い!」
「って…!、頭撫でんな!!」
「反省してないけど、赤龍が謝るなんて珍しいねぇ~。」
「おい…変態僧侶…、次なんか言ったら殺すぞ」
喧しくわちゃわちゃとしていると、青龍が静かに挙手をする。
「───…で、その事について私から一つ御提案が御座います。…陛下と神美さんに"交尾"をして頂くのはどうかと」
シン……────と静まり返り、全員が一瞬でサーッと青龍の傍から離れた。
?を浮かべている青龍は、その方が効率的でしょ?と言わんばかりの表情を浮かべていた。
「え……ちょっと……そこそこ永く一緒に居たけどさ…あんな破廉恥な事言う子だっけ?」
「…俺に聞くな…」
「アレで巫山戯てないのが…───恐ろしい奴…」
「こ……こ……こここここ"交尾"だと!?」
「だ……だだだだだだだからッ!!!!!しないってば!!!!」
「ふふ…、満更でもなさそうじゃないですか?」
「ちょ…ちょっと!!なんで陛下と…か、神美が交尾しなきゃなんないんだよ!?」
「美豚の呪いを解くには、痩せるか・異性と交わるか・根源となるものを殺すか……───…陛下は皇后となられる妃と世継ぎを作らねばならない……貴方は五龍で、何れは白龍として戻る身ですよ。お二人は相性が良さそうですし……身体の相性も───」
「ええい!!言わんで良いわいッ!!!」
黄龍が頬を紅潮させ、青龍の肩を掴み制止した。
「だって、"接吻"しましたよね?───…愛してなければ、出来ることではないと思っています。貴方の性格上…尚更ね────」
「あ……愛している…とは────……わ、私は!!…神美を救いたいと思っただけで…深い意味は───」
ズキン…!…─────と、神美の胸は何故か痛む。その痛みと同時に激しく湧いてきた怒り。
「じゃあ……その白蘭って人を奥さんにしたらどうなのよ……」
「な……何を言う──」
「別にあたし!!交尾なんかしなくたって、痩せてやるわよッ!!!……小龍に迷惑かけるつもりないから!!。どーぞっ、綺麗なお妃様とイチャイチャしてくださいっ!。ふんっ!」
「何を怒っているのだ…!。それに…"いちゃいちゃ"とはなんだ?」
「あたしは小龍と交尾なんかしないから。あたしはあたしの力で痩せるし、みんなに……迷惑かけるつもりもないし!!。それに……好きな人と結ばれなきゃ、意味…ないでしょ?」
「……これは───無神経でしたね…申し訳御座いませんでした。」
「だから、あたしが正妃になる件も…無しで良いから。……小龍が好きだと思う子と…幸せになって」
「……お前は───私が他の妃と…夫婦になってもよいのだな?」
「うん───だって、あたし達恋人同士でもなんでもないでしょ?」
「……───分かった。」
「ちょっと!陛下!?」
「……白蘭と言う妃と面会する。」
「僕が嫌ですッ!!!」
「あらら」
(心底どうでもいい……めんどくせぇ)
一つの"意地の張り合い"がきっかけで、二人の心の距離に変化が齎されるのでした。
そして……────白龍と白蘭の面会の前夜───
神美は黄龍から、白虎宮の侍女の一人・鈴夜が、ダイエットに協力をしたいと、申し出た事を伝える。
「僕さ……、上流階級の妃の中で、白蘭が一番嫌いだったんだ…。」
「なんで?」
「アイツは性格が最悪な奴でさ……───正直、なんであんな奴が人間なのかが理解出来ないよ。偽善者ぶって、自分が犯した罪は人に擦り付け……──持ち前のあざとさと育ちの良さで、周りの人間は騙されて落とし穴にはまる……」
「絵に書いたような……悪女!!」
「ねえ、そんな奴に陛下が盗られても良いの!?───僕は嫌だッ!!!」
「そ……そんなこと言われたって……」
「悔しいけど……、僕は神美とだったら…………陛下は幸せになれるんじゃないかって……思ってた。」
その言葉は神美にとって、悲しくも…嬉しくもあった。然し、今更どうやって白龍に自分の気持ちを伝えて良いのかが分からない。
「……幸せは……その人自身が決めるものだから」
「君って、案外素直じゃないんだね…───本当は、好きなんじゃないの?。陛下……───白龍の事……」
好きなんて言ってしまえば、きっと……泣いてしまう。
深い意味が無いと言われたあの時────
じゃあどうして、"お前の生きる意味にはならないのか"と、言ってくれたのか……。
死のうとした自分を何故叱って、救ってくれたのか
「思えば思う程……────だんだんムカついてきた!!!」
「え……?」
「黄龍───あたし、白虎宮に行く!。んで、明日の面会…止めてくる!。あたし、小龍に……聞きたいことあったの思い出したから」
(素直に……行かないでって言えば…───解決するのに……。面倒臭いけど……仕方ないか)
黄龍はやれやれと肩を竦めたのだった。
後宮の女官長が亡くなり、不在となった今─────
それをいいことに、妃候補達が勝手気侭をしているとのこと。それの主犯者が白虎宮の上流階級の妃・白蘭だと言う。
自分を陛下の正妃にしなければ死んでやるだの、なんとも幼稚で知性を感じられない。
それについて頭を抱えていたのは、麒麟宮の上流階級の妃・黄杏でありながら、宦官までをも務める──翠麟の姿になっている黄龍であった。
妃達の中で的にされかけている、帝は玉座に座りなが額に手を当てる。
「え、てゆーかさ~、白龍って上流階級の妃達を奥さんにしてなかったの?」
バリボリと煎餅を食べながら、無神経な事を発する隻眼の僧侶・黒龍は頬杖をつく。
「オレなら上流から下流まで、全員奥さんにしちゃうけどねぇ~っ」と、うへへ…と、下品に笑みを浮かべていた。この男は変態な上に女誑しである。
そう────本来なら、皇帝陛下は正妃とは別の妃と関係を持っていても可笑しくは無い。
それは、世継ぎや政治的なものにも関係していく。
もう一人か二人……世継ぎが出来ていても良い時期とは言いたいが……この龍…この男・白龍帝は──────奥手であり、堅物の天然記念物であった。
「……そんなんで国の主とかやってたのかよ。聞いて呆れるな…」
フンと、馬鹿にしたように鼻で笑う赤龍
「はあ?、アンタに陛下の何が分かんだよ?言ってみなよ?」
「わー!!黄龍落ち着いて!。赤龍も、そんな風に言っちゃ駄目だよ。」
「…はいはい───そりゃあ悪うござんした」
「うんうん、偉い偉い!」
「って…!、頭撫でんな!!」
「反省してないけど、赤龍が謝るなんて珍しいねぇ~。」
「おい…変態僧侶…、次なんか言ったら殺すぞ」
喧しくわちゃわちゃとしていると、青龍が静かに挙手をする。
「───…で、その事について私から一つ御提案が御座います。…陛下と神美さんに"交尾"をして頂くのはどうかと」
シン……────と静まり返り、全員が一瞬でサーッと青龍の傍から離れた。
?を浮かべている青龍は、その方が効率的でしょ?と言わんばかりの表情を浮かべていた。
「え……ちょっと……そこそこ永く一緒に居たけどさ…あんな破廉恥な事言う子だっけ?」
「…俺に聞くな…」
「アレで巫山戯てないのが…───恐ろしい奴…」
「こ……こ……こここここ"交尾"だと!?」
「だ……だだだだだだだからッ!!!!!しないってば!!!!」
「ふふ…、満更でもなさそうじゃないですか?」
「ちょ…ちょっと!!なんで陛下と…か、神美が交尾しなきゃなんないんだよ!?」
「美豚の呪いを解くには、痩せるか・異性と交わるか・根源となるものを殺すか……───…陛下は皇后となられる妃と世継ぎを作らねばならない……貴方は五龍で、何れは白龍として戻る身ですよ。お二人は相性が良さそうですし……身体の相性も───」
「ええい!!言わんで良いわいッ!!!」
黄龍が頬を紅潮させ、青龍の肩を掴み制止した。
「だって、"接吻"しましたよね?───…愛してなければ、出来ることではないと思っています。貴方の性格上…尚更ね────」
「あ……愛している…とは────……わ、私は!!…神美を救いたいと思っただけで…深い意味は───」
ズキン…!…─────と、神美の胸は何故か痛む。その痛みと同時に激しく湧いてきた怒り。
「じゃあ……その白蘭って人を奥さんにしたらどうなのよ……」
「な……何を言う──」
「別にあたし!!交尾なんかしなくたって、痩せてやるわよッ!!!……小龍に迷惑かけるつもりないから!!。どーぞっ、綺麗なお妃様とイチャイチャしてくださいっ!。ふんっ!」
「何を怒っているのだ…!。それに…"いちゃいちゃ"とはなんだ?」
「あたしは小龍と交尾なんかしないから。あたしはあたしの力で痩せるし、みんなに……迷惑かけるつもりもないし!!。それに……好きな人と結ばれなきゃ、意味…ないでしょ?」
「……これは───無神経でしたね…申し訳御座いませんでした。」
「だから、あたしが正妃になる件も…無しで良いから。……小龍が好きだと思う子と…幸せになって」
「……お前は───私が他の妃と…夫婦になってもよいのだな?」
「うん───だって、あたし達恋人同士でもなんでもないでしょ?」
「……───分かった。」
「ちょっと!陛下!?」
「……白蘭と言う妃と面会する。」
「僕が嫌ですッ!!!」
「あらら」
(心底どうでもいい……めんどくせぇ)
一つの"意地の張り合い"がきっかけで、二人の心の距離に変化が齎されるのでした。
そして……────白龍と白蘭の面会の前夜───
神美は黄龍から、白虎宮の侍女の一人・鈴夜が、ダイエットに協力をしたいと、申し出た事を伝える。
「僕さ……、上流階級の妃の中で、白蘭が一番嫌いだったんだ…。」
「なんで?」
「アイツは性格が最悪な奴でさ……───正直、なんであんな奴が人間なのかが理解出来ないよ。偽善者ぶって、自分が犯した罪は人に擦り付け……──持ち前のあざとさと育ちの良さで、周りの人間は騙されて落とし穴にはまる……」
「絵に書いたような……悪女!!」
「ねえ、そんな奴に陛下が盗られても良いの!?───僕は嫌だッ!!!」
「そ……そんなこと言われたって……」
「悔しいけど……、僕は神美とだったら…………陛下は幸せになれるんじゃないかって……思ってた。」
その言葉は神美にとって、悲しくも…嬉しくもあった。然し、今更どうやって白龍に自分の気持ちを伝えて良いのかが分からない。
「……幸せは……その人自身が決めるものだから」
「君って、案外素直じゃないんだね…───本当は、好きなんじゃないの?。陛下……───白龍の事……」
好きなんて言ってしまえば、きっと……泣いてしまう。
深い意味が無いと言われたあの時────
じゃあどうして、"お前の生きる意味にはならないのか"と、言ってくれたのか……。
死のうとした自分を何故叱って、救ってくれたのか
「思えば思う程……────だんだんムカついてきた!!!」
「え……?」
「黄龍───あたし、白虎宮に行く!。んで、明日の面会…止めてくる!。あたし、小龍に……聞きたいことあったの思い出したから」
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