爛漫ろまんす!

平野ポタージュ

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時の一族と実

嵐の前の静けさ

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「はあ?痩せる薬?。んなのある訳ないじゃん、馬鹿!」

「明らかに嘘くさぁ~っ」

「どうして直ぐに信じるんですか貴女は…」

「阿呆に付ける薬無し……」

「キュ?」

白龍パイロン以外のロン達に直球で辛辣な言葉を投げかけられた神美かみは、ほんの少し涙目になる。

「辛辣すぎ!!。ちょっとは信じてみようってならないの!?」

「最近は如何様いかさまが流行っているらしいですからね…、判断力が鈍りかけた老人達や…神美かみさんみたいに信じて疑わない人間が狙われ易いと…」

「だーかーらー、本当だってば!!!」

「じゃあ、証拠となる物があるわけ?」

「だって、山藍シャンラン国に薬師如来やくしにょらいって呼ばれてる尼さんが居るって言ってたもん!。その人が作る薬で伝染病を終息させたって…」

山藍シャンラン国に…?」

急に目の色を変えたのは青龍チーロンだった。

青龍チーロン山藍シャンラン国を守護していたから…国の医者・医官の顔は全員覚えているのではないか?」

「ええ!!そーなの!?」

「こう見えて、皇帝専属の太医を務めておりました。…然し、私が山藍シャンランを直々に守護しにていた時……、その様な方はいらっしゃいませんでしたね…。ましてや尼僧にそうが…薬を作るなんて…初めて聞きました。仮にそれが本当だとしたら…」

「後、その山藍シャンランを含めた色んな国に、人の姿をした妖怪が現れるって…。ちゃんと詳しくは聞けなかったけど、これってもしかして惡神五匹あじんごきょうの事なんじゃないかな?」

「ま、どっちにしても行く当てがなかったんだし~、行ってみても良いんじゃないかな?。…少し、気になる事もあるし」

「気になる事って?」

「薬師の尼さんって……────なんか色っぽいよね」

神妙な面持ちで何を言い出すかと思えば、頬を少し紅潮させて、まだ見ぬ尼の薬師を脳裏に浮かべながら卑猥な妄想を、この変態僧侶は繰り広げていた。

「序にこの馬鹿を仕留める薬でも作って貰えば良いんじゃねぇーの?」

「そうですね……───国を離れてからだいぶ経つので、状況確認も含めて…その尼の薬師を尋ねてみましょう。……個人的に薬草作りには興味もあるので。効果が有る無いは別として」

「よぉし~!じゃあ山藍シャンランを目指すぞ~!!」

こうして───神美かみ五龍ウーロン山藍シャンラン国へと目指す事になった。
ただ、黄龍ファンロンだけは一つ心に引っかかっていた

「……伝染病を終息させた…か」

その薬があれば、もっと違う道があったのではないかと……今は亡き友を思う。

(でも…、どうして後宮の流行病は終息を迎えたんだ…?。治療法は無くて…胸部を切り落として運良く助かる者も居れば死ぬ者だって居た…。現に今の後宮の上流階級の妃達は…数名、乳癌ルーアイにかかった者もいた。でも、全員胸部を切り落とさずに奇跡的に回復していた…)

潤朱ルンシュ白蘭ビャクランも胸はあった。

あの頃は自分の事で手一杯だったが、今思えば不自然な事も沢山出てくる。

(病を……敢えて流行らせたとしたら?)

柘榴シィーリオは病にかかるように他の妃達を肥えさせたり…身体に害のある物を与えていたらしいけど……だったとしても、治療薬がなかったとしたら…ほぼほぼ死んでいても可笑しくない。
あの時の妃達は当時の上流階級以外の妃達は皆……

「…裏に…柘榴シィーリオとはまた別の刺客がいた…?」

どっちにしても考えたくないし、腹が立つ。

黄龍ファンロン、渋い顔をしてどうしたのだ」

「な、なんでもないです!、あ…白龍パイロン──僕が作った餃子を食べて欲しく───」

黄龍ファンロンが作ったこの餃子もーらいっ!!はむはむ~…んーっ!!美味しいっっっ!!」

白龍パイロンの為に作った手作り餃子は、呆気なく神美かみの胃袋へと消えていき、黄龍ファンロンの悲鳴は村全体に響き渡る。

暫しの平和な時───もうすぐ新しい戦いが始まろうとしていた
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