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番外編1

6. 正直心の準備もできていない

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もう夜の9時を過ぎようという時間、少しムスッとしているハヤを助手席に乗せ、オレの運転で谷垣家の洋館に向かっていた。

電話を切った頃には、オレはもう秘書モード挟んだからか冷静になっていて、
内容を伝えにバスルームに入ると、ハヤに勢いよく掴みかかられマットレスに押し倒されて、慌てて両手で大きい図体を押し返した。

「手島さんから連絡があって、親父さんハヤとメシ食いたいんだと!」

「………いやだ」

我儘な子供のような返事にちょっと笑ってしまいそうになったが、興奮冷めやらぬハヤをなだめるように言葉をかけた。

「…オレ、もういつでもここに帰って来るんだし。仕事の大事な話かもしれないだろ」

「………」

あからさまに膨れっ面になったハヤだったが、そこからは二人仕方なくシャワーを浴び別のスーツに着替え、現在に至るのだが…。



「仕事の話なら仕事の間にアポ取ってくるだろうし、せっかくのオフなんだから仕事じゃないなら断ってもよかっただろ」

「まーそう言うなよ。
ハヤの親父さん、ただ息子のハヤとご飯を食べたかっただけなんじゃないの?」

とオレはいつもの軽口をたたいたが、実はかなり緊張していた。


ハヤの秘書になると知った誕生日の日から、怒涛のように事が進み目が回るような毎日で、
その間でも何度か手島さん伝いにアポを取っていたが予定が合わず、まだ谷垣さんには挨拶に行けないままとなっていた。
それが突然こんな形で面と向かうことになって、正直心の準備もできていない。

ちゃんとハヤの秘書に採用になってるし、あの手島さんが嘘を言うはずはないのだから、間違いなく谷垣さんはオレを認めてくれているとは思うんだけど…。

あの圧迫感のある谷垣さんのオーラを思い出して身震いする。

すると、隣のハヤがオレの膝に手を置いた。

「嫌なら引き返す。」

「え?」

「ナツにとってあの家はいい思い出はないだろう。」

たしかに、ただただハヤに会いたい一心で連れて行かれて調教なんてもんを受ける羽目になった場所ではあるけど、
でもオレにとって人生の分岐点、覚悟や決意をした場所で、今現実にそれを叶えてあの門をくぐることは誇らしいことでもあった。

「大丈夫」

緊張は気合いで吹き飛ばし、10年ぶりとなるハヤの実家の大きな鉄の門の前まで来た。

何台もの監視カメラがあり、車のナンバーを確認したのか自動で門が動き出す。
アクセルを踏み敷地内に入ると、秋の風で高台にある洋館の庭の木々から枯れ葉が舞った。

長かった。

ここに戻ってくるまで…。

オレの膝の上に置いたままのハヤの手の上からオレは手を重ね握りしめた。















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