おにぎりと酒が導いた社畜の異世界転生 ~落ち武者守護霊の力を添えて~

浅沼

文字の大きさ
6 / 15
転生後

6.元社畜エンジニア  名前が決まる

しおりを挟む
「私の可愛いBabyちゃん。あなたの名前はシキ、メネル・シキよ。」
 赤子用ベッドに横たわる私に向かって、母親が微笑みながら言った。どうやら今世での私の名前は「メネル・シキ」らしい。異世界にも苗字と名前という概念はあるのだろうか?おそらく「メネル」が苗字で、「シキ」が名前ではないだろうか。前世と変わらない名前に少し驚きつつも、混乱せずに済むのはありがたい。

「シキ、今日も可愛いなぁ~」
 父親がそう言いながら、私をふわっと抱き上げる。

「そういえば、どうして『シキ』なんて名前にしたの? 私、もっと今っぽい流行りの名前がいいと思ったのに。」
 母が疑問を口にする。

「いや、それがさ、俺も最初は全然考えてなかったんだよ。」
「え?どういうこと?」

「夢に出てきたんだよ。変な甲冑を着たおじさんが『名前はシキがいいだろう』とか言ってきてさ。でも俺たちの子なんだから、最初は断ったんだ。『俺たちで決めることだから』ってね。でもさ、夢から覚めても、毎日1回は声が聞こえるんだよ。同じ声で『シキがよい』って。」
「それ、ちょっと怖いわね…。」

「そうだろう?3日間ずっとそれが続いてさ、思ったんだ。もしかしてあのおじさんは神様なんじゃないかって。神様がわざわざ決めてくれた名前なら、それも悪くないかなって思うようになってきたんだよ。それにさ、シキって響きがカッコよくないか?」

(いやいや、子供の名前は親が決めるってスタンス、最後まで貫けよ…。)
 私はツッコミたい気持ちを抑え、心の中で突っ込んだ。

 驚愕の命名理由に戸惑いつつも、気になるのは“変な甲冑を着たおじさん”というフレーズだ。まさかあの落ち武者じゃないだろうな…。いや、それはそれで神様だとかいう父の発想もすごいけれど。まあ、正直なところ、流行りの名前には興味がないし、前世と同じ名前なら混乱することもない。父の流されやすさというか、多少の不安はあれど、ありがたく受け取ることにしておこうと思う。

「まぁでも、神様が名前を選んでくれたなんて、ちょっと特別感があるじゃない。」
 母はそう言って笑い、私を父の腕から受け取る。

「それにしても、シキがこんなに可愛いなんて思ってもみなかったわ。ねぇ、シキ、これからどんな子になるのかしら?」
 母が私の顔をのぞき込みながら、優しく微笑む。
「君の美貌と魔力、俺の屈強な肉体が受け継がれた子だ。絶対に強く美しく聡明に育つさ!」
 父が力強い声で答える。その様子に母はくすっと笑いながら言った。
「まあ、貴方ったら♡」
 親たちの溺愛ぶりをよそに、私は思わず引っかかった言葉に意識を向けた。
(魔力…?)
 聞き慣れない単語に驚く。いや、正確には前世で読んだ小説やアニメでは頻繁に出てきたが、日常会話で使われるものではなかった。もしかして、この世界では「魔力」という概念が本当に存在しているのか?そうだとしたら、私が今いる場所は――。
(異世界転生、やっぱりそういうやつか…。)

 だとしたら今は情報がほしい。だが、問題は“赤子”であるということ。周囲の情報を集めたくても、今の私にはできることが限られている。目を凝らして視界を巡らせるものの、赤子の目に映る世界はぼんやりしている。唯一、母の顔だけがかろうじて認識できる程度だった。
(ダメだ…。やっぱり視力が未熟すぎる。前世で当たり前だった感覚が、こんなに不便になるとは…。)
 そんなふうに考えていると、だんだん頭がぼんやりしてきた。赤子の体は、前世の思考スピードについてこれないらしい。
(そういえば、「赤子は寝るのが仕事」って言われてたっけ…。脳の発達には睡眠が必要って話もあったな。今は無理せず成長を優先するしかないか。)

 そう自分に言い聞かせながら、私は静かに目を閉じた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

異世界転生してしまった。どうせ死ぬのに。

あんど もあ
ファンタジー
好きな人と結婚して初めてのクリスマスに事故で亡くなった私。異世界に転生したけど、どうせ死ぬなら幸せになんてなりたくない。そう思って生きてきたのだけど……。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。 死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。

処理中です...