10 / 10
10:建設プロジェクト
しおりを挟む
「おっしゃああああ! ロスロコス神殿、建設開始やあああ!」
叫んだのはキケ。彼は頭にタオルを巻き、日曜大工セット(拾いもん)を腰に下げてやる気満々である。気合いだけは一級建築士だ。
舞台は、キケのばあちゃんが昔買った空き地──たった10畳。そのくせ空気がやたら重い。建築資材は、近所からかき集めた廃材、壊れた家電、折れたハンガー、あとはノリ。だがロスロコスにとっては、それが“フル装備”である。
キケを筆頭にばあちゃんの空き地へと入る。
「なんや、懐かしい匂いするで…。これは血の匂いや…」
スンスンとキケが鼻をひくつかせる。
「うおっ、めっちゃいる!!10畳しかないのに、グロ系の幽霊がひしめき合ってるんだけど!?おえーー!」
と、視えるブラスが言う。
「え、ちょっと待って。あいつら、ここは使わせねーよだと??あぁ?ここはキケのばあちゃんの土地だぞ???」
エリーコが目を光らせ、幽霊相手にメンチを切る。気持ちが分かる男は、時に一番怖い。
「……ここ、昔は処刑場だったらしいよ。だから土地代めちゃくちゃ安かったんだと。で、キケのばーちゃんが買ったんだな」
バリシオがアイスを舐めながら、さらっと過去を暴露する。
「……なんやその因縁まみれな由来」
沈黙するロスロコス。と、そのとき。
「ん?あいつ、なんか言いたそうだな……」
ブラスの前に、かつてのストーカー男の幽霊が、すっ……と登場。ジェスチャーで意思を伝え始めた。
「なになに……“キケとバリシオが幽霊の立ってる場所まで行って、頭めがけて廃材でぶん殴れ”……?成仏するらしいよ、だとよ……」
エリーコが読み取り、絶句。
「おっしゃ、案内は任せろ!!」
ブラスが即応。キケとバリシオを先導し、次々と場所を指定していく。
「そこだ!そこのドロドロしたの!あと、足ないやつな!」
ブラスが叫ぶと、バリシオとキケが無言で廃材片手に突進。ガッシャーン!!ドカーン!!!
「成仏ゥゥゥ!!」
なぜか叫びながら、次々と幽霊の溜まり場を破壊していく。
「これ……暴力やない……?」
「でも、だんだん空気軽くなってきてるよ」
「なんや……神殿建設って、こんなに体力使うんやな……」
こうして、ばあちゃんの10畳の空き地に、魂と物理で道を開きながら──
ロスロコスのDIY神殿建設は、静かに幕を開けたのだった。
「おっしゃ、血の匂いもなくなったことやし仕切り直しや!いくでぇ!!」
「とりあえず、鳥居的なものから作るか。幽霊も“入口”っぽいの欲しがってるみたい」
エリーコが通訳しながら指示を出す。
「お、それならこれ使えるかも」
バリシオが差し出したのは、木材2本と壊れたスケボー板数枚。
それを受け取ったキケが、インスタで見た“それっぽい”鳥居を参考に、感覚で建築を始める。
「はぁはぁ……できた。どうやこれ」
「……めっちゃいいじゃん!!」
「過去のビジョンとほぼ同じだ!」
「幽霊びっくりしてる!」
勢いと情熱のなせる業、ものの30分で“鳥居に見えなくもない何か”が完成。
赤スプレーで雑に塗られ、なぜか上にはサングラスが飾られている。
次は神殿本部。材料はミニチュアハウスの組み立てキット。用途は本来インテリア。だがロスロコスはこれを金のスプレーで塗りまくり、台座の上に鎮座させた。
「……めっちゃ神々しくね?」
それを見て、ブラスがポツリ。
幽霊たちもふわっと寄ってきて、うんうんと頷くような動きを見せる。
「……いや、ちょっと待て。なにこのチラシ? なんか幽霊の一人が『フォントがダサい』って訴えてる……」
神殿前に飾った「ようこそロスロコス神殿へ!」の看板、幽霊的にはかなり不評らしい。気づけばキケが耳元で囁かれる。
「……MS明朝って、幽霊的に嫌なんか?」
エリーコも眉をひそめる。「たぶん、筆文字フォントの方が令和っぽいって言ってる。トレンドとか気にするタイプっぽいよ」
「いや、どんだけ美的センスあるねん、幽霊!しかもここ、メキシコやぞ!令和ちゃうねん!!」
その後も──
バリシオが「この配置は風水的にアウトだぞ」といわれ位置を変更
ブラスが「鳥居の角度が陰陽バランス崩してる」と微調整を命じられ
キケは「もっと手間かけろ」と言われ3回やり直し
という、謎の神殿建築フィードバック地獄に突入。
「俺らギャングやろ?なんで今DIYインフルエンサーみたいなことしとんねん……」
そう嘆きながらも、完成したのは――
・鳥居に見えなくもない何か(赤くてサングラスが乗っている)
・ミニチュア神殿(ただし金ピカでLEDが光る)
・お供えピザコーナー
・フォントが改善された看板(「ようこそ!」は筆文字風になり、なんと4カ国語で記載(時代はグローバルだから)していた)
「……なんか、ええやん」
「なぁ、マジで伊勢神宮っぽくなってきたくね?」
「これ、伊勢神宮やない……“謎神宮”や……」
「クオリティはともかく、心はあるからな!!」
「俺はここに、DJブース設置する!」
「俺、神殿本部の下に“お賽銭箱”置こうと思う。ピザの箱だけど」
バカバカしい。でも、真剣。
どこか神聖。けれど、まちがいなくロス・ロコス。
最初は悪ノリだったが、気づけば幽霊たちも嬉しそうに神殿に集まり、静かに佇んでいる。
叫んだのはキケ。彼は頭にタオルを巻き、日曜大工セット(拾いもん)を腰に下げてやる気満々である。気合いだけは一級建築士だ。
舞台は、キケのばあちゃんが昔買った空き地──たった10畳。そのくせ空気がやたら重い。建築資材は、近所からかき集めた廃材、壊れた家電、折れたハンガー、あとはノリ。だがロスロコスにとっては、それが“フル装備”である。
キケを筆頭にばあちゃんの空き地へと入る。
「なんや、懐かしい匂いするで…。これは血の匂いや…」
スンスンとキケが鼻をひくつかせる。
「うおっ、めっちゃいる!!10畳しかないのに、グロ系の幽霊がひしめき合ってるんだけど!?おえーー!」
と、視えるブラスが言う。
「え、ちょっと待って。あいつら、ここは使わせねーよだと??あぁ?ここはキケのばあちゃんの土地だぞ???」
エリーコが目を光らせ、幽霊相手にメンチを切る。気持ちが分かる男は、時に一番怖い。
「……ここ、昔は処刑場だったらしいよ。だから土地代めちゃくちゃ安かったんだと。で、キケのばーちゃんが買ったんだな」
バリシオがアイスを舐めながら、さらっと過去を暴露する。
「……なんやその因縁まみれな由来」
沈黙するロスロコス。と、そのとき。
「ん?あいつ、なんか言いたそうだな……」
ブラスの前に、かつてのストーカー男の幽霊が、すっ……と登場。ジェスチャーで意思を伝え始めた。
「なになに……“キケとバリシオが幽霊の立ってる場所まで行って、頭めがけて廃材でぶん殴れ”……?成仏するらしいよ、だとよ……」
エリーコが読み取り、絶句。
「おっしゃ、案内は任せろ!!」
ブラスが即応。キケとバリシオを先導し、次々と場所を指定していく。
「そこだ!そこのドロドロしたの!あと、足ないやつな!」
ブラスが叫ぶと、バリシオとキケが無言で廃材片手に突進。ガッシャーン!!ドカーン!!!
「成仏ゥゥゥ!!」
なぜか叫びながら、次々と幽霊の溜まり場を破壊していく。
「これ……暴力やない……?」
「でも、だんだん空気軽くなってきてるよ」
「なんや……神殿建設って、こんなに体力使うんやな……」
こうして、ばあちゃんの10畳の空き地に、魂と物理で道を開きながら──
ロスロコスのDIY神殿建設は、静かに幕を開けたのだった。
「おっしゃ、血の匂いもなくなったことやし仕切り直しや!いくでぇ!!」
「とりあえず、鳥居的なものから作るか。幽霊も“入口”っぽいの欲しがってるみたい」
エリーコが通訳しながら指示を出す。
「お、それならこれ使えるかも」
バリシオが差し出したのは、木材2本と壊れたスケボー板数枚。
それを受け取ったキケが、インスタで見た“それっぽい”鳥居を参考に、感覚で建築を始める。
「はぁはぁ……できた。どうやこれ」
「……めっちゃいいじゃん!!」
「過去のビジョンとほぼ同じだ!」
「幽霊びっくりしてる!」
勢いと情熱のなせる業、ものの30分で“鳥居に見えなくもない何か”が完成。
赤スプレーで雑に塗られ、なぜか上にはサングラスが飾られている。
次は神殿本部。材料はミニチュアハウスの組み立てキット。用途は本来インテリア。だがロスロコスはこれを金のスプレーで塗りまくり、台座の上に鎮座させた。
「……めっちゃ神々しくね?」
それを見て、ブラスがポツリ。
幽霊たちもふわっと寄ってきて、うんうんと頷くような動きを見せる。
「……いや、ちょっと待て。なにこのチラシ? なんか幽霊の一人が『フォントがダサい』って訴えてる……」
神殿前に飾った「ようこそロスロコス神殿へ!」の看板、幽霊的にはかなり不評らしい。気づけばキケが耳元で囁かれる。
「……MS明朝って、幽霊的に嫌なんか?」
エリーコも眉をひそめる。「たぶん、筆文字フォントの方が令和っぽいって言ってる。トレンドとか気にするタイプっぽいよ」
「いや、どんだけ美的センスあるねん、幽霊!しかもここ、メキシコやぞ!令和ちゃうねん!!」
その後も──
バリシオが「この配置は風水的にアウトだぞ」といわれ位置を変更
ブラスが「鳥居の角度が陰陽バランス崩してる」と微調整を命じられ
キケは「もっと手間かけろ」と言われ3回やり直し
という、謎の神殿建築フィードバック地獄に突入。
「俺らギャングやろ?なんで今DIYインフルエンサーみたいなことしとんねん……」
そう嘆きながらも、完成したのは――
・鳥居に見えなくもない何か(赤くてサングラスが乗っている)
・ミニチュア神殿(ただし金ピカでLEDが光る)
・お供えピザコーナー
・フォントが改善された看板(「ようこそ!」は筆文字風になり、なんと4カ国語で記載(時代はグローバルだから)していた)
「……なんか、ええやん」
「なぁ、マジで伊勢神宮っぽくなってきたくね?」
「これ、伊勢神宮やない……“謎神宮”や……」
「クオリティはともかく、心はあるからな!!」
「俺はここに、DJブース設置する!」
「俺、神殿本部の下に“お賽銭箱”置こうと思う。ピザの箱だけど」
バカバカしい。でも、真剣。
どこか神聖。けれど、まちがいなくロス・ロコス。
最初は悪ノリだったが、気づけば幽霊たちも嬉しそうに神殿に集まり、静かに佇んでいる。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる