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変わった彼

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私の幼い頃の記憶に、彼を初めて見た光景は残っていた。

特に、劇的な何かがあった記憶な訳じゃない。
でも、新しく町に来た子供に興味津々だった。

皆、知り合いで母親同士、父親もみーんな知ってる小さな町に。

知らない子が来るのだ。

「せんせーしょなるなニュースってやつね。」
「どんな子かしら、乱暴じゃないと良いけど。」

勝手な要望を詰め込んでいる。

皆知っているような顔ぶれ、変わり映えのない毎日。
それも、学園に入るまででしょうけど。まだ私達は、柵の中で大人しくしている羊たちだった。


見に行った先には、町長さんに挨拶をしている男女の2人。

「ここで商売の起点にできたらと思ってます。」

にこやかな愛想の良く挨拶する男性と、女性も朗らかだ。
細身で背がすらっと高い。この辺では見ないタイプの感じだ。

「獣人らしいよ」

ボソっと伝わってきた言葉に、お耳はないなと確認した。
兵士さんに、たまに獣の耳を持つ人は見たことがある。

夫婦らしい2人にはその特徴はなかった。体格もほっそりしているくらいで
他に特徴は見られない。

まだ長くなりそうな大人の話を聞いているのもつまらないと思って、
その辺にふらりと足を向けた。


花の蜜をおやつに、ぼーっと咲いた花を眺める。
食べられる花は、味はしないけど見た目が綺麗だ。

お母さんは、食卓に花を添えるのよって言う。
その花を美味しくないって食べるお父さん。毎回やっているのはノロケというらしい。

なんとなく、お友だちとの考えの差が感じられてきた。

“カッコいい旦那様を捕まえよう”
と盛り上がりに、私は同感できなかった。

甘い蜜をはんでも、気持ちの浮上は難しいらしい。


何か、気分転換できる事がないかな。
新しくる人のお店は、どんなものになるのかな。


美味しいものを食べたら元気になる。
確かに夕食の野菜スープは楽しみだけど。


何か刺激が欲しい。

子供でも安全な?

魔物のいる森に出掛けるなんて無謀な事はしない。
そんな私に、何ができるかな。


その鬱鬱とした気分とは真逆に、フルールの花が風に揺れていた。


「誰?」

知らない子供の声。

木陰から、キョトリとこちらを伺う子供。
細くて、この辺では見ない顔。

どこからか来た商人の子とかかしら。
同じ年くらいだと思う。


目にかかる長髪、薄めの色素が陽射しに透かされ綺麗だと。

私は、彼との出会いを覚えている。
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