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庭の男の子

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今、お気に入りの花は、どんな調子かしら。

花びらは、染色ができる。
種はいくつできるのか。植物事典の通りか確かめたい。

庭師に簡単な挨拶をして、花の前に座る。
この時、スカートを汚さないように気をつけること。お姉様の言葉を思い出して
慎重に座った。


「それ、植えたのか?」

「そう。」

「やるよ、花。」

庭師の子供らしき男の子が、花を向ける。

「それ、勝手にとったらダメよ。」
「王女なんだろ?これくらい良いだろ」

「王女でも、これはこの庭のものだからだめよ。」

「ケチ王女!」

そう言って行ってしまった。わたしがケチなら…
「分からずや平民かしら。」

隣に来ていた、警護の男に視線を送る。
喋った姿を見たことのない彼は、肯定の意味で頷いた。

そして仕事に戻るため、隠れる。

ご苦労様と思いながら、また花の観察をして図書館に向かった。


その途中、面倒な貴族に捕まる。
面倒じゃない貴族はいないから、貴族とあるだけ面倒くさい。

「おや妹姫様にお会いできるとは、そんなお姿ではせっかくのドレスが
汚れてしまいますね。」


泥だらけの庭で王女らしくない、はやく消えろって意味かな。
貴族は口と態度で読み解くちぇお兄様が言ってた。

これにちゃんと返すのが正しい礼儀だって。

「ゴーウィンさま、あなたほど汚くないですわ。」

「何を、無礼な。」

「不正でできたお金で、もう一個屋敷が買えるでしょう?
そっちは、他の家族に住まわせているから税金は誤魔化しているのよね。」


通りすがった文官が面白い顔になっている。
視界の淵にとらえながら、相手から目線は外さないのがマナー。


「それって汚いでしょ?」

わたしはお風呂に入れば良いけど、貴族が汚いのはどうすれば良いのかな。
今度、オジ様に聞いてみよう。

「馬鹿なことを言う子供だ!」

「いいえ、馬鹿はあなたよ。」

「お姉様!」
ここは城の廊下だから、うやうやしく礼で迎える。
スカートも汚れていない。手は少し土がついているけど隠せている。


「私の可愛いアイリーンに、なんてことを言ってくれるのかしら?」

国を出て行くとはいえ、隣国の王妃になる方だ。
貴族が真っ赤な顔だ。


「あなたの今日の予定は、全部騎士とのおしゃべりね。」
そう言うと、騎士たちが貴族を連れて行ってしまった。

お姉様は綺麗で、強い。
「アイリーン、図書館に行くところ?」

「はい、そのつもりです。」

邪魔な人に声をかけられてしまったけど
忙しいお姉様と一緒に行けるんだから、今日はラッキーね。



その後ろで、貴族が捕まり文官が証言しているけど。
そんなのどうでも良い。

勝手なことばかり言うから、わたしも勝手にやり返す。







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