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2-会話

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「あの、婚約していただけるそうで」

婚約の進んだ僕達は、学校の喫茶で2人で会っていた。

「うん。よろしくね。」
微笑みで答える。優しそうな顔で、これをすれば角が立たない。


ミアーナは、同級生だったがクラスが違う。
淑女科のようだから、商人科の僕とは接点がないんだね。
前情報通りの様子だ。姿絵って、上位貴族ほど盛りに持って描かれるって聞くけど。

(商人同士だからそんな事はないか。)キツそうな子じゃなくて安心した。

「前年の秋の催事でお見かけした事があります。」
彼女は僕を知っていたようだ。

実家が商売しているらしいけど、僕の家ほどの規模じゃない。細々やっているんだろう。
彼女の服装は、優等生といった感じ。地味な色合いに合っている。

特色のない彼女は、大人しそうな反面、僕に多くを質問してきた。

僕は鷹揚に答え、婚約者の話に相槌を打っていて、

「そろそろお暇しますね?」

「ええ。また会いましょう。」
そう言って別れた。


和やかに過ごせたと思う。僕の中で彼女の印象は良かった。
答え方がハッキリしているけど、節々に配慮を感じる。

婚約を受けて良かったんじゃないかな。

そういえば、店ってどこに出しているんだろう?
いいや。調べればわかるし。


散歩して寮に帰ることにした。



「よお、婚約者ができたってな?」

同級生が、からかいたいとばかりの態度で寮に居た。
まあ、予想はついたけど。


高位貴族ってのは大抵婚約者がいるけど。
他は学生を終え、社交会にデビューしてからだ。

「中途半端な時期だなあ。」
「決め手は?」

良い話題が飛び込んできたと、夕食前の男子寮で顔馴染みが集まる。
「大人しくって、派手じゃないとこ、かな。」

端的に答えたが、そこが大事かな。派手で煩くって、熱苦しい人と一緒に暮らしていきたくはないかな。

「ふーん。従順な子が好みか。」
「まあ、目にも耳にも煩くない子が良いね。」


羨ましいような、婚約者なんて関わりのない世界だって感じで騒いでる。
平民ならだいたい、恋人を探すからね。


手に入るなら、それで良いじゃないか。
騒いでいるのもいっときの事だ。


腹が減った男子学生、その夕食の前にはすぐにたち消える話題だった。

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