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祈り

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辺鄙な場所の教会に、訪れる者は少ない。

私の仕事は、この教会の手入れと聖魔法と呼ばれる治療を人々に施す事。

教会から給料をもらう形なので、日々の暮らしには困らない。

少々暇、長閑なのが難点か。

「何という贅沢。お許しください。」

懺悔し。祈る。


そうした日々を過ごし、ある時旅人の訪れがあった。

おや、珍しい。

近所のご老人達が来ることはあっても、若い人というのは稀だ。
この辺は年寄りばかりが住むよくある辺鄙な田舎だからだ。

ここまで来る用事があるなら、どなたかの親族だろうか?


すぐ祈る旅人の邪魔にならぬよう、見守る。
熱心だ、その祈りの姿は敬虔な心を体現しているようだ。


「あれを壊したのは私じゃありません。
確かに投げたのは私で、でもまさか崩れるなんて…」


懺悔でしょうか。

「魔物も横取りではないんです。投げた石が偶然。
何個も一気に飛ばしたのが原因です。」


旅とあれば色々あるのでしょうね。


「ですけど、魔物の巣に落ちるのは勘弁してほしいです。

助けた商人達が、盗賊だったのも…私、何か悪い事でもしたのでしょうか?
運が悪すぎです。

悪いところは改めますから!」


必死ですね。

長い祈りが終わり、彼女(女性でしたか)は私の方に接近してきました。


「お祓いってやってもらえますか?!」

「…当、教会ではやっておりません」

と返してしまいました。




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