【完結済み】番(つがい)と言われましたが、冒険者として精進してます。

BBやっこ

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II-c 馬車の旅

村の冒険者

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お尻は無事だ。
助かった。あれだけ荒ぶっていた馬車でも立ちあがれる。

自分以外はと言うと、平然としている。
グスタフと、もちろんロード。

体力さがわかるね。足がプルプルする。


シュルトとキースも馬車を降りているのが見える。
キースは少しよろついているけど、シュルトは慣れているようで
さっさと歩き出した。

慣れない馬車は、尻がやられる。
今回は、足が。…ちょっと動けそうにない。

「おーうお疲れー、水飲むか~?」
入り口を守っている冒険者とは別に、男が近づいてきた。

目にかかるほど長い前髪、鉢巻きをして、小柄だがけどガッチリした体。
動きが軽く、無駄な動作を感じなかった。腕に長い切り傷の跡が複数。

「ハルト!」
「おーセリ!元気だったか?」

冒険者ギルドで世話になった人物だった。
Dランクの”ブラック“認定した審査員。

「誰だ?」と警戒の様子で、ロードがギュッと身を引き寄せる。


「コンチは!ハルトって言います。セリの先輩?だな」
明るい声で言いつつ、そちらは?と促されたので答える。

つがいって言われた。『竜の翼』のリーダーで、ロード。」
ハルトが、頭を撫でようとしていた手を止める。

「番!?」バッと音がするように首を動かしてロードを見て、
「すんません!」

ロードに謝った。
90°な感じで失礼しました!とばかりに。



「……まあ。いい。」ロードの溜飲は下がったようで、
(ロードが)受け取った果実水でほのかにハーブの味がして、スッキリした。

ハルトが言い辛いんだけど…と前置きして、
「オレのメンバー、番を見つけて解散したんだわ。」

女関係での揉め事。
番との体の相性にハマって、抜け出せなくなり冒険者としても
やっていけなくなって。…と続けようとして、

ピタっと止める。
子供の前で話すことじゃないよな?と思い至ったからだ。

荷物はさっさと下ろされたので、ここからは待機。
解散理由は誤魔化して“冒険者ギルドの出張所”と名付けられた小屋に案内した。



話し合いができるよう、ソファと机、お茶を淹れるセットがある。

シュルトとキースもやって来たので、紅茶を淹れて出した。

「ねえ、この紅茶って何したの?」
ニッコリと笑うキースが胡散臭かった。


「セリ、あれの話してないのか?」
ハルトが気を利かせて空気を和らげる。

そんな大したことじゃないんだがと説明をする。

「“妖精の悪戯”をされている。」

・・???

何それ?と思うのも無理ない。

料理や薬を作るときに、
効果が現れる時がある。それを“妖精の悪戯”と言われることがあるが

一般的には少し美味しくなったとか、隠し味を入れたことを
表現する時に使う言葉だ。

「薬屋の婆さんも言ってたが、珍しいんだぞ?」
と大袈裟に言うハルトは、経験者だ。

効果の少し上がった魔法薬。(効果が一定じゃないので売れなかったけど)
買っていったのだ。

ちょとお茶が美味しくなるのが怪しいのか。

話し込む前に、
ギルナスが戻ってきて座って早々、
「盗賊の目撃情報があったそうだな?」

と始めた。
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