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V 舗装された道
方針会議
しおりを挟むセリが不安定になったのを見て、ロードに任せ
とりあえずお茶会は、お開きになった。
静かに敵がいること認めたロードの沈黙が恐いが
セリがいるのでしっかり漏れない冷気には安心した。
余裕がある証拠だ。“まだ”とつくが。
(こっちも憤慨しそう。)
シュルトは大声を出しそうなのをぐっと堪える。
セリを驚かせてしまうという自制だった。
心が冷える。
子供への仕打ちは許せない。自分の矜持だと思う。
心の整理に努めた。
カナンの方は、(まあ予想どおり)と冷静に現状を見る。
今は、セリに集中しているロードだが、
番の敵を認識した。殲滅する前にどうするか決めておきたい。
手回しするから、その後で消してくれ。
ターゲットが誰か、
影響はどこまで広がるか?
相手への配慮というより、まとめてポイっと始末したい。
例え、漏れがあっても追跡できるように。
シュルトの沈黙の怒りに、
(おー怖っ)と思いながら、ロードを観察する。
直感的だが、無闇矢鱈と突撃するタイプじゃない。
敵を前にした残忍とも言える冷徹さは知っているが。
番には配慮できるくらい、冷静だと良いが。
“今は”大丈夫だ。
番を害した相手を許せない。
過去だろうが未来だろうと関係なく。
オレがすることは、それにフォローすること。
ま、変わりばえない役回りだ。
少し落ち着いた様子のシュルトと、会議のために移動を促した。
ロードは、セリを離さない。
セリは、抱きつかれる事に
照れもあるが居心地の良さを感じていた。
顔を上げたくなるまで、このままでいるつもりでいる。
セリの人との関わりは、そうない。
子供時代も、教会の子になってからも
逃ることを年頭に、生きてきた。
脅威から逃げる、誰にも災禍に巻き込まないように。
孤児院で子ども達相手に抱っこや、抱きしめることはした。
歳上の男なら全くない
されたことがないに等しいのだ。
挨拶程度の短いものはあったかと接点の温もりに
夢見心地に近い状態だった。
拒否されないのを良いことに、堪能する
キースはそのままお茶を飲み
グスタフは思考の海に潜っている。これが竜の翼の通常運転だと分かる。
力みのない、排除されることのない居場所に
ひと時癒されていた。
その頃、
こそりとカナンとシュルトが合流した。「寝室にどうぞ」と案内された一室で
話し合う。
「やっぱ…まともな環境じゃなかったな?」カナンの感想は
主に、まともな大人がいない状況が予想通りだったと告げた。
シュルトの関心は、
「セリに、復讐心はあるカシラ?」
セリの怒りにロードが反応したら。悲惨な事になりそう。
それをセリ自身が悔やむほどにはしたくないと思った。
復讐の相手のことなどどうでもいい。
カナンの見解は、
「怒り狂ってるっていうより傷ついてるほうじゃねーの?」
崩れそうな子どもに、思わず接吻して慰めちまった。
…後でロードの睨み(=声なき批判)が煩いかもなー。
酒で誤魔化そうと考えている。
「感情の爆発は怖いわね」
セリは温厚な性格だ。メンバーと慣れてきて素が出ても良い子だと思える。
鬱憤は溜まっているようだが、仕方ないだろう。
子供の頃の悔しさをすぐに忘れることなんてできない。
非力だと感じる度に、傷が痛み、疼く。
「しっかり調べておこう」カナンの言葉に応える。
「精霊石が出たところ、新兵を受け入れる場所、
後継者の交代があって、古い家柄。
なんとか絞り込めそうネ」
シュルトの算段は立っているらしい。
「先行して下調べを頼もうそれには、
ヴァルトに頼むか。」
「お酒はある?」報酬の確認だ
「貿易街で買ったやつ。
あとツマミ。」
2人は夕食の時間まで
細かい打ち合わせを続けたのだった。
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