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育った街へ

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セリの育った街からっほど近くの森には、ダンジョンがある。
南方から王都に行く際に通る事もある、大きい街だった。


冒険者ギルドと商業ギルドの関係が仲良く。
森のダンジョンで手に入る薬草から、腕の良い薬師も住んでいる。

その長閑さで、ちょっとした観光地でもある。

季節の美味しいきのこスープを出すお店
王都や異国から仕入れた物が紛れ込むマーケット

星降る丘と言われる、男女が一緒に見ると幸せになる場所も有名だ。

そこの奥深くに位置する“森のダンジョン”とひねりのない場所。
初心の冒険者が、ダンジョンの経験を積むのに向いたところ。

ソロで冒険者業をするには、森でに採取やダンジョンの道案内など
依頼は尽きなかった。

セリは薬師に弟子入りしていたため、ポーション作りで生活をする腕もある。
しかし、店を出すなどの選択はしなかった。

“できなかった”に近いかもしれない。

出生に関わる事だった。
セリは、孤児院が生家だと言うが

産まれは貴族だ。辺境の森を討伐することが義務だった。
それを小さな子供が担っていた。母親の顔は知らず、父親も会話があったかどうか記憶にない。

館に居たのは、親戚の叔父夫婦とその子ども。
義務的に仕事をこなす使用人だった。



“その子は死んだ”

貴族の義務と魔物の討伐に出ていたその子は、
魔物によって命を散らしたのではなく、家でのパーティが開かれた際に
毒によって死んだのだ。

運命神の教会で“埋葬された”。
その後、孤児院で新しく始めた生活に、“セリ”の名前で15歳で仮が取れて、冒険者になった。

「元の生活に心残りはないし、清々してる」本心からの言葉だった。

冒険者を選択した理由のひとつは、その貴族からの干渉を受けたくなかった。
連れ戻されるのも、害されるのも嫌だ。

食事の肉の調達が急務だったからと言うのもある。
孤児院というのは、だいたいが金欠状態だ。

また追手が出た場合、逃れるのに冒険者ならどこに行ってもなんとかなるだろう。
という打算だった。

街に居付く仕事は選べない。
誰も貴族に睨まれたくはない。

平民でも結婚を意識する年齢で、
面倒な貴族に目をつけられるまでは、地道に過ごしていた。

元々の水魔法の適性と、魔物の討伐をしていた経験も生きた。

慎重なの性格から、安定した冒険者になった。
“討伐もダンジョンアタックもしない腰抜け”

とバカにされがちだが、しっかり依頼を受け品質も良い冒険者は重宝された。


ソロの活動をし続けたのも、貴族の視界に入らないようやって行くため。
貴族の力を使われても、逃げ切れる力はついていると思っていた。

住みやすかった自分の街。
別れの時間も十分んとれないまま出る事になっても
優しかった。


まあ今回、戻ってみようかという状況になったけど。


ロードという番を得て、
『竜の翼』に入った。子爵より高位の貴族が支援しているので強くは出てこない。

強行されても守ってもらえる布陣だ。

旅行の前に顔を出すくらいに軽い調子で帰れるとは
セリも思っていなかった。

軽い足取りで、帰路につけるようだった。
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