『舐められている。物理で！』〜馬を世話して、犬を愛でて猫をかぶる。鶏にコケにされてなるものか！〜

ご勘弁を

「話は聞いた。この後、生徒会室で沙汰を下そう。皆、解散してくれ。」

王子様、兼生徒会長の言葉で『男爵令嬢の断罪』という舞台は終わり。

飛び入り参加、いえわたしの巻き込まれた男爵令嬢の役も終わりになる。


1人の男爵令嬢は、接近禁止の警告を受けた。


もう1人は、舞台から降りて、ため息をつき
足がふらふらになっているのを、友人リンリーに支えられたのでした。


それで終わりで良かったのに。


「君には迷惑をかけたね。」
生徒会長としてと謝って下さる王子様。

(やめてください。)わたしの心臓のために。
わけがわからなすぎて、アップテンポの音楽が頭の中で駆け巡る。


「男爵令嬢という噂だけで、君に迷惑がかかっただろう
本意ではなかった。」


お心遣いありがとうございます。帰らせてください！)
淑女の微笑ってこういう時に使うんですね？先生。

今の心情を顔に出したら、無礼でしょうから。

嗚呼。故郷よ。

馬が荷物を運び
猟犬が狩りに付き添う
飼い猫はたまに実家に来てえ餌を渡すかわりに撫でさせてくれる

いつもの
鶏ニワトリに起こされる平凡なわたしの日常に


(帰らせてくださいー。)


「今後も君に迷惑がいったら生徒会が助けに入るよ。」
「私も気にかけておきますわ。」

そう言ったミシェル様は来年から生徒会に入るらしい。

「ありがとうございます。」と素直にお礼を言えた。

男爵令嬢に縁のない、生徒会のお招きを受けたわたし。
皆様揃い踏み。高位の貴族方達ばかりと気づき、再び硬直した。

綺羅KIRA☆しいかたたいばかりだわっ！
落ち着けない。世界がちがう。

そう、もっと穏やかな…わたしの日常にあるものをっ？

コンコン「失礼します」
知った声、犬獣人の先輩だ。

「ライアン。どうだった？」
「大人しく帰りました。先生方にも話しましたら冬休み前に
手伝いにかりだされるそうです。ちょっとした奉仕活動ですね。」

男爵令嬢の冬休みはまだ遠いらしい。


「そうか。」

ライアンさんというのか。子爵家の方だった。爵位が上！
王子様が席を外し先輩がこちらを向いて
「ご苦労だったな。」と労ってくれた。
手がを渡した時の不機嫌さは影もなく。優秀な人なんだろうなあ。


「ありがとうございます」と素直に言う。

やりすぎた感はある。けど、わたしの精一杯だった。
これで平穏に学生生活に戻れば良いけど。

「グレイテス嬢、帰ってもらって構わないよ。」

帰寮の許可を得て、嬉々と返事をして
帰るところ。

「失礼します」

素朴な男性が入室してきた。
目が合うとニコリと穏やかに微笑まれる。

あ。落ち着く優しそうな人。
「資料をお持ちしました。」
声まで穏やかだ。ついじっと見てしまう。

「セリム、彼女を寮まで送り届けてくれ。」
「え？」間抜けな声を上げたわたしに。


「セリム・ブレーメンです。僕でよろしければ。」

その穏やかな男性は、素朴で朗らかに手を差し出してきました。

まだ花が芽吹く季節ではなくとも、
冬休みを終えてから、花開くかもしれません。


そんな予感を思わせた出会いでした。