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おまけ

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「暇なのか?」
その声の方に僕は向かった。
同級生が怒っていたのとは一転、うちひしがれているところに来た僕、セリム・ブレーメン。

犬獣人のこの男、忙しい時に声をかけてしまうと怒り出すクセがあった。
そして、それを後から反省するというのがセット。


「暇なのか?羨ましいことだ。全くお前のようなやつが!」
に続くのは、“本当に羨ましい、休みたい。”という気持ち。

まだ資料が届いていない所為で、終われない可哀想な状態で

「忙しいのに、煩わせてっ下級貴族が。」

これは、先程子爵の彼より上の爵位の男の子が、横暴だったうえに
憎たらしい事言って彼を不機嫌にさせたせいだ。

その女の子、凄く間が悪い。
普段の彼なら、愛想は良くないが少しの小言くらいで帰されたのに。

(言いすぎたのを反省している姿は、可愛い犬みたいなんだけど)と僕は思ってる。
気合入れて吠えてたんだけど、煩いって怒られた時にソックリ!

そう言うと、「お前、俺を犬と勘違いしていないか?」と怒りを溜めて言われるので
思うだけにしていた。


しょうがない。後からフォローする役目を担いましょうか。
普段、頼りになる男だ。こういう穏やかに持っていくのは僕が向いている。

彼は糾弾する役で、飴と鞭なんて呼ばれてるのを知っている。

僕としては、家の牧羊犬に似てる。そう考えているとまた怒らせそうなので移動しよう。
間が悪く、怒られてしまった女の子にフォローを入れるべく後を追った。


場所は食堂に近い中庭

そこには、知る人ぞ知るアイドルがいた。
愛嬌を振りまく明るい笑顔。

ボスコという犬。

戯れている女学生がいた。
犬好きに悪い子はいないと思う。


あの子がさっき手紙を渡しに来た女子学生?茶髪で2年生だと確かめた。
犬に、慰められている。


ペロリと目元を舐められて、笑顔になった女の子にホッと一安心。

意気揚々ときたけど
僕が女の子を慰めるなんて、無茶すぎる。冷静になると挙動不審になるよ。

令嬢って動物は触らないものと思ったけど。
(探せば動物好きの子って結構いるにのかも。)

指をペロペロしだした犬

それね、お腹がすいた!美味しいもの食べたいっていう癖なんだよね。
笑う彼女には悪いけど食べられているその指。

ひとしきり撫でたあと、彼女は立ち去った。


戻った僕が
よくよく手紙の話を聞くと
手紙を書いた子と、渡して来た子は違うらしい。

爵位が上の子に頼まれたかな?

「手紙を書いたのはアリサ。
渡しに来たのは、グレイテスという子らしい。」

2人とも男爵令嬢で上下関係?
同じ爵位でも、強気で来られると頷いちゃうとかあるしね。


「今度、言葉を交わす時があったら謝る。」

このライアンは人の名前と顔を覚えるのが得意だ

鼻がきくと揶揄われるが、優秀だと思う。
短気な性格だけど。


「アリサは明るい茶系、2学年でいた名前だな。その隣の組グレイテスって男爵令嬢がいたと思う。」
相変わらず、記憶力の良い。


その時は、
間が悪くて可哀想だったいえど、良い子だなで終わった話だった。
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