【完結】人形騎士への嫁入りが決まりました。<短編>

BBやっこ

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お家訪問

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追い出されるように、
いえ。もう“追い出された”で良いです。


馬車に積める分だけの荷物と、結婚する上で頂いた支度金はどうなったのか。

「パールの首飾りは、私にピッタリよね?」

後妻に収まるつもりの貴族女性が、自慢げに話す。
おそらく、それが支度金で購入したと思われるもの。

私のもののはずなのですが?
そう目で見ても、パールに夢中なご様子。

貴族女性たるもの、視線で会話ができるスキルを持つものですが
あのように自分の世界に行かれると、視線での会話はできないものですね。

「色違いは高価でしたわあ」

横領を暴露するなんてお花畑ね。本当にもう、ブリューセ家の女主人のつもりでしょうか。

「それではご機嫌よう」
礼儀としての挨拶でお別れし、メイドと一緒に馬車に乗る。


メイドは1人。
後から来るとは思わない。そのメイドに尋ねた。

「ケイトリン、他に誰か来るかしら?」

「ミレーナ様、影がついております。」

その答えは、表向きの人数は自分一人という意味だった。


身の回りのことはある程度、自身でできるが令嬢としては由々しき状況だ。
具体的には、ドレスは一人で着る物じゃない。

嫌がらせで、ドレスをひとりで着ろと言われれば
工夫でどうにか着る事はできるけど。

あの女性の嫌がらせの域よね

「なんて名前だったかしら?」

父が連れてきた女性の名前など、いちいち覚えてられない。

そんな些事な事に考えを巡らせていたけど、木々が生い茂る景色に変わった。
馬車の外からして、しばらく緑が楽しめるようだ。

郊外に差し掛かる
馬車が進むのは、城の方向だろうか?


向かう家は、騎士の家、侯爵の位。古くからある家柄だ。

なのに、
『人形騎士』なんて呼ばれる人を調べた書類に目を通す。

・人形のように意識を持たない
・麗しいお顔

・実は王家のどなたかの寵愛を受けている

などなど。

どれが本当で、作られた噂はどれか。
それは、実際に会わなければ判るものではない。


その機会が得られた私は幸運だろうか。
何もいきなり、結婚にまでしなくてもと思うのは
平常な心境だと思うのよね。


「一般的なご令嬢なら泣いてておかしくないわ。」

「お嬢様の精神的図太さなら、問題ないかと。」
メイドまで冷たい。


実家もあのままなら帰りたくないし
身を寄せる場所さえ思いつかない身の上だ。



信仰心より、好奇心。


通り過ぎた教会。その神様に信仰心が薄いのを謝りながら、
何が待ち構えているか楽しみにしている私は


微笑みを浮かべていたらしい。


今後の波乱を予感して。
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