【完結】人形騎士への嫁入りが決まりました。<短編>

麗しい

「こちらミレーナ・ブリューセ様です。」

「初めまして」

執事の紹介を受け旦那様に挨拶をします。
対面の驚きを飲み込むようにお辞儀をして誤魔化した。

男性の賛辞には使わない言葉だろうけど“ビスクドール”を思わせる
その麗しさ。

男性だと確認したくなる美しいを具現化したようだ。

この方の隣に立つの女は、苦労するだろう。
比較をされたくないと言う意味合いで。

細身に見えるものの、筋肉も感じられるの騎士様ゆえだろうけど

(何か違和感も感じる動き？)

席につき
お茶を飲まれる姿さえ美しいのですが


(あら？腕輪をなさっているのかしら？)
金属の反射光が見えた。

珍しいとは感じる。騎士の方は装飾品を好まれない方が多いと聞いたからだ。

特に指輪は武器を使うのに邪魔だそうで常にはしない。
それに、武器として魔力のある装飾品を持つとなると腕輪が人気だ。


じっと見られる旦那様からの視線にあまり温度は感じない。
それが、余計に人形のようだと言われる所以だと思う。



「合格でしょうか？」

私の反応を伺っている様子の騎士侯爵様に問いかける。

「君は帰らない？」

帰って欲しいのか、そうじゃないのかわからない質問に
どう答えたものか。

高めの声が
少年のような高さだと思った。表情は微動だにしない。
一拍置いて問いに答える

「ええ、できればば置いていただきたいわ。」

その一言で私の滞在が決まった。
執事に客間に案内される。


客人という扱いからはいるようだ。

正直、結婚が決まったとあの貴族女性から言われて
妻としてきたが、その役目は家によって違うだろう。

あちらも急な話なはず。
滞在のお許しは得たのだから、話し合いをできれば良いのですけど。

荷解きしてもらいながら
今後のすることをまとめる。

ここに置いておいてもらえる間に目指すのは、
「女主人？」

騎士侯爵というお家柄、奥向きの事を支えるのが役目かな
「使用人への情報収集から始めましょう。」

頷く、ケイトリンに
「たぶん、押しかけてきたと思われているわ。」

弱音を吐くと
「お嬢様の堂々とした態度に恐れ慄く事でしょう」

貶めているのかもしれない言葉をもらった


“その前に信頼関係を築けないか？”

まずは、滞在に成功だ。

「失敗だった場合
宿を探す必要があったから良かったわ。」

この辺りは避暑地にも使われる場所が近い。
つまり宿がない。

とりあえず家を追い出された身から、
客人に成り上がった。


「騎士侯爵様は、私をどうするのかしらね？」

「ミレーナ様。もしや騎士侯爵様のお名前を、ご存知ない？」


メイドの鋭い指摘に、私は視線を逸らしたのだった。