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本編 〜レイ視点〜
髪紐と不安と
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「じゃあロイは、私がいなくなってもいいっていうの!?私の夢は薬屋になることだけど、いつかはお嫁にいかなきゃなんだから!!」
「そうは言ってないよ……」
今日も今日とて森でロイと遊んでいたレイは、声を荒げてロイに詰め寄った。
「レイは可愛いし一人じゃないんだから、僕がいなくなったも……少し会えないくらい、どうってことないでしょう?だいたい、もしもの話なんだから」
「そ、れは……」
ロイは知らない。普段こんなにも明るく恵まれていると有名なレイが、影で実は家族や周りに虐げられているということを。
今日だって、ここに来る前に鞭で叩かれたばかりだし、つい昨日までの数日間は地下にある窓もない暗い地下室に閉じ込められていたのだ。
でも、ロイはそれを知らない。当たり前だ。レイがそれを知らせていないから。
ロイはレイにとっての唯一の光、生きる理由なのだから。そんなロイに心配かけるわけにはいかない。
「……っ、あったり前じゃない!!ロイがいないくらい、わけないわ!!」
だからレイは、嘘を吐いた。
ロイがいなくなったら、生きていけない。ロイと会える一週間に一度のこの時間だけが、レイの心の支え。はっきり言って、これが一度でもなくなるだけで、かなり辛い。身が引き裂かれるようだ。
しかし、レイはその想いを必死に隠し、唯一の特技と言っても良い作り笑いを浮かべて強気に胸を張った。
「……なら、別に僕がいなくても……」
ふいにロイがボソリと零した言葉。とても小さかったが、確かに耳に届いたその言葉に、レイは意味がよく分からず首を傾げた。
「?何か言った?」
「…ううん、なんでもないよ。
あ、そうだ!!今日はレイに渡したいものがあるんだ!!」
露骨に反らした話題に疑問に思いながらも、レイはロイを見つめた。
「これなんだけど……」
そう言って取り出したそれは、細めの髪紐だった。
深い藍色をしたそれは、先の方に宝石で出来た小花が咲いている。真ん中のゾイサイトを、黒翡翠の花びらが五つ囲んでできていた。
ロイの瞳と髪の色とそっくりだ。
糸も宝石も普通より上等なものを使っていて、これならつけていても家族に怒られることもないだろう。
庶民の中でも裕福にあたるレイの家にとってだから、ロイが用意するのは大変だっただろうけど、でもロイからのものだからと、レイはありがたく受け取ることにした。
「可愛い!!」
「僕の手作りなんだけど、気に入ってくれた?」
「うん、もちろん!!
実はね、私も贈り物があるんだー」
んふふふ、と笑うと、ロイが驚いた顔をした。
「はい、これ!!」
ゴソゴソ鞄から取り出したのは、可愛くラッピングされた何か。
「開けて良い?」
「うん!!」
ラッピングヲ解いて中のものを取り出すと、またもやロイは目を見開いた。
「これって」
「ロイがくれたアンバーだよ。本に組紐の作り方がのってたから、作ってみたの」
焦げ茶の組紐で作られた、丸いアンバーのペンダント。もちろんレイが用意して作ったものだから、少し不格好だけど上等なものだ。
「いいの?これ、レイにあげたものだよ?」
「私にはこの髪紐があるからいいの!!それにこのペンダント、自分で言うのもあれだけど私の色に似てるでしょ?だから会えないときとか、これ見て思い出してくれたら、なぁ……って。だめ?」
自分で言いながら少し恥ずかしくなったレイは、少しモジモジしながらロイを見た。
レイに見られたロイは、もらったペンダントをきゅっと握りしめ、いつも以上に、今までで一番の笑顔でお礼を言った。
「ありがとう、レイ!!」
「どういたしまして」
時間はあっという間に過ぎていく。
気づくと、もう帰る時間が迫っていた。
「じゃあね、レイ」
「うん、またね、ロイ!!」
時間がないため、今日は先に帰らせてもらうことにしたレイは、ロイと別れの挨拶を済ませる。次に会えるのは一週間後。これからまた、家での生活が待っている。
(でも、大丈夫。一週間の我慢だもん。一週間我慢すれば、またロイと会える……。
それに今日はこれをもらったし)
早速髪に結んだ髪紐を触る。
レイの口元は、ロイのことを思い、自然と緩んでいた。
(……でも、なんか今日のロイ、変だったな。どうしたんだろう?)
帰り道、ふとロイが零した言葉を思い出す。
『……なら、別に僕がいなくても……』
(ねえ、ロイ……あれは、どういう意味なの?)
何か、嫌な感じがするのは気のせいか。レイは少し顔を翳らせた。
「……」
(来週、少し早めに行ってみよう)
そう不安を振り切り、また来週が訪れるのをレイは静かに待っていた。
そして数日後。奇しくも、その不安は現実のものとなった。
ロイが、あの森、あの二人だけの秘密の場所に手紙、遺書だけを残し、自殺した。
「そうは言ってないよ……」
今日も今日とて森でロイと遊んでいたレイは、声を荒げてロイに詰め寄った。
「レイは可愛いし一人じゃないんだから、僕がいなくなったも……少し会えないくらい、どうってことないでしょう?だいたい、もしもの話なんだから」
「そ、れは……」
ロイは知らない。普段こんなにも明るく恵まれていると有名なレイが、影で実は家族や周りに虐げられているということを。
今日だって、ここに来る前に鞭で叩かれたばかりだし、つい昨日までの数日間は地下にある窓もない暗い地下室に閉じ込められていたのだ。
でも、ロイはそれを知らない。当たり前だ。レイがそれを知らせていないから。
ロイはレイにとっての唯一の光、生きる理由なのだから。そんなロイに心配かけるわけにはいかない。
「……っ、あったり前じゃない!!ロイがいないくらい、わけないわ!!」
だからレイは、嘘を吐いた。
ロイがいなくなったら、生きていけない。ロイと会える一週間に一度のこの時間だけが、レイの心の支え。はっきり言って、これが一度でもなくなるだけで、かなり辛い。身が引き裂かれるようだ。
しかし、レイはその想いを必死に隠し、唯一の特技と言っても良い作り笑いを浮かべて強気に胸を張った。
「……なら、別に僕がいなくても……」
ふいにロイがボソリと零した言葉。とても小さかったが、確かに耳に届いたその言葉に、レイは意味がよく分からず首を傾げた。
「?何か言った?」
「…ううん、なんでもないよ。
あ、そうだ!!今日はレイに渡したいものがあるんだ!!」
露骨に反らした話題に疑問に思いながらも、レイはロイを見つめた。
「これなんだけど……」
そう言って取り出したそれは、細めの髪紐だった。
深い藍色をしたそれは、先の方に宝石で出来た小花が咲いている。真ん中のゾイサイトを、黒翡翠の花びらが五つ囲んでできていた。
ロイの瞳と髪の色とそっくりだ。
糸も宝石も普通より上等なものを使っていて、これならつけていても家族に怒られることもないだろう。
庶民の中でも裕福にあたるレイの家にとってだから、ロイが用意するのは大変だっただろうけど、でもロイからのものだからと、レイはありがたく受け取ることにした。
「可愛い!!」
「僕の手作りなんだけど、気に入ってくれた?」
「うん、もちろん!!
実はね、私も贈り物があるんだー」
んふふふ、と笑うと、ロイが驚いた顔をした。
「はい、これ!!」
ゴソゴソ鞄から取り出したのは、可愛くラッピングされた何か。
「開けて良い?」
「うん!!」
ラッピングヲ解いて中のものを取り出すと、またもやロイは目を見開いた。
「これって」
「ロイがくれたアンバーだよ。本に組紐の作り方がのってたから、作ってみたの」
焦げ茶の組紐で作られた、丸いアンバーのペンダント。もちろんレイが用意して作ったものだから、少し不格好だけど上等なものだ。
「いいの?これ、レイにあげたものだよ?」
「私にはこの髪紐があるからいいの!!それにこのペンダント、自分で言うのもあれだけど私の色に似てるでしょ?だから会えないときとか、これ見て思い出してくれたら、なぁ……って。だめ?」
自分で言いながら少し恥ずかしくなったレイは、少しモジモジしながらロイを見た。
レイに見られたロイは、もらったペンダントをきゅっと握りしめ、いつも以上に、今までで一番の笑顔でお礼を言った。
「ありがとう、レイ!!」
「どういたしまして」
時間はあっという間に過ぎていく。
気づくと、もう帰る時間が迫っていた。
「じゃあね、レイ」
「うん、またね、ロイ!!」
時間がないため、今日は先に帰らせてもらうことにしたレイは、ロイと別れの挨拶を済ませる。次に会えるのは一週間後。これからまた、家での生活が待っている。
(でも、大丈夫。一週間の我慢だもん。一週間我慢すれば、またロイと会える……。
それに今日はこれをもらったし)
早速髪に結んだ髪紐を触る。
レイの口元は、ロイのことを思い、自然と緩んでいた。
(……でも、なんか今日のロイ、変だったな。どうしたんだろう?)
帰り道、ふとロイが零した言葉を思い出す。
『……なら、別に僕がいなくても……』
(ねえ、ロイ……あれは、どういう意味なの?)
何か、嫌な感じがするのは気のせいか。レイは少し顔を翳らせた。
「……」
(来週、少し早めに行ってみよう)
そう不安を振り切り、また来週が訪れるのをレイは静かに待っていた。
そして数日後。奇しくも、その不安は現実のものとなった。
ロイが、あの森、あの二人だけの秘密の場所に手紙、遺書だけを残し、自殺した。
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