テンプレ勇者にあこがれて

昼神誠

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結社崩壊編Ⅰ

リゲル②

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「みんな集まったわね。それじゃ、始めましょうか」

 食堂でシリウスを中心に計画を立ててゆく。
 僕が口を挟むのは今ではない。
 計画がある程度固まった時、僕は軽く微笑みながらみんなに疑問を投げかけるんだ。
 そうしたら、みんなが僕を見て叫ぶだろう。
 気が付かなかった! 
 リゲルさん、流石だと……。
 ふふっ、みんなが僕に注目している時に僕の立てた完璧な計画を話すことで彼女達は思い知るだろう。
 僕こそがお義母様に最も近い娘であることを!
 
「という訳で今回も待機班と強襲班、先行調査班に分かれるわ。作戦開始は明朝0300時! 解散!」

 えっ……ちょ、ちょっと待って!
 まだ、僕が意見してない。
 …………あぁぁぁ、チャンスを逃してしまったぁぁぁ!
 い、今からでもみんなに目立つように大きな声で叫べば……。
 
「待つでありんす」

 カペラがみんなの前で意見を出しただとっ!?
 だが、これは僕に残された最後のチャンス。
 カペラの発言が終わった後に僕も意見を出させてもらうとしよう。

「カペラ、どうしたの? 作戦でみんなに知らせたいことでもあるのかしら?」

「シリウスの立てた作戦のこともありんすが……この国で悪魔を退治して、それが日本のためになるでありんすか? 拙らが追うべき者は同族の面汚しである尼僧とその背後にある悪魔教。日本人少女を攫い海外に送り出している根幹を叩くべきでは?」

 カペラの意見にみんなが黙り込んでしまった。
 確かにエゲレスを悪魔から解放したところで僕達の祖国が安全になるわけではない。
 ふふっ、お義母様の勅命によってこの国に送り出されたカペラしか思い至らないことだろう。
 だが、その話を通すわけにはいかない。
 僕の考えたパァフェクトゥな計画をみんなに自慢……じゃなかった。
 みんなに提案し僕の評価を急上昇させるほうが重要だからだ。

「確かに……尼僧が生きているとなれば、日本人少女を拉致し何処かにある牧場で飼われるのは必須でござるな」

「わたくし達のような不幸をこれ以上、増やすわけにはいかないでございますです!」

「今、この時も攫われ出荷されているかもしれないでありんすね」

「カペラ!」

「めっ! カペラ、今のは言っちゃ駄目。ほら、みんなに謝る」

「アンセル、それにみんな、拙の失言でありんした。謝罪させていただくでありんす」

 なんてことだ、カペラの失言でみんなが不安を感じている。
 これはみんなに不安を煽るためわざと言った?
 カペラめ、小賢しい真似を思いつくじゃないか。

「シリウス、拙者はベルゼブブより尼僧を追うべきだと思うでござる」

「わちも! カペラが言ったからじゃないよ。悪魔より尼僧の方が怖く無さそうだから……」

「わたくしも……あの外道だけは生かしておいてはならないと思いますです」

 マズい、このままでは尼僧を探すことを優先する方向へ持っていかれてしまう。
 考えろ、考えるんだ。

「リゲル、さっきから黙っているけれど貴女はどう思う?」

「えっ? そ、そうだな……僕は……」

 ハッ!

 食堂に集まるみんなが僕を見ている。
 や、ヤバい……ここで回答を違えば、みんなから見放されてしまう。
 プロキオンとベガ、アンセルは尼僧を探したいようだし、その他の隊員も半数以上が賛同している。
 多数決では既に尼僧を探す方向で決定だろう。

「リゲル?」

「ふふっ、カペラも僕と同じ考えだったようだね。マスターや同胞が暮らす日本を悪魔の手から守るため倒すべきは尼僧と悪魔教……だろ?」

 これじゃ駄目だ。
 何も目立つ発言をしていない。
 僕の承認欲求が満たされないじゃないか!
 
「リゲルもこう言っているでありんす。ベルゼブブは悪魔教を崩壊させた後にでも十分でありんしえ」

「シリウス」

「シリウスさん」

 みんながシリウスに回答を迫る今、僕は脳内を高速回転させる。
 多数決で屈してしまったが尼僧を探す計画を僕が発案し、この場で提案する。
 それでみんなが僕を褒め称え、承認欲求が満たさ……んほぉ、良い!
 
「瑠流の敵を討てていないことがみんなの足枷となっているなら優先すべき事項ね」

「シリウス……」

「シリウスさん、ありがとうございますです!」

「そうなると情報を一から始める必要があるでござるな」

 来た!
 ここで僕の出番!

「尼僧の居場所……」

「尼僧の居場所ならすでに目当ては付いているでありんす」

 !!!
 カペラと言葉が重なってしまった!?
 僕の承認欲求を満たすチャンスだったのに……って、見当が付いているって!?
 ……ふっ、最弱のカペラに先を譲るのが強者の貫禄というものだ。
 きっと、出任せに決まっている。
 カペラも自身が最弱が故にみんなからの評価を上げるために一杯一杯なのだろう。

「カペラ、もしかして……尼僧の居場所を把握していたから提案したの?」

「それで奴は何処に居るでござるか?」

「隣のフニャンス、もしくはロセアのどちらかでありんす」

 海外だって?
 ふっ、そんなの話にならない。
 そもそも、海外に出たところでお金がなければ滞在することさえ不可能だ。
 やはり、ここは僕がパァフェクトな計画で尼僧を追い詰めるべきだろう。

「海外でござるか……それは……」

「待って。エゲレス、フニャンス、ロセアって……まさか!」

 ???
 シリウスは何か気付いたようだけど僕はフニャンスとロセアなんて調べたことも無い。
 少なくともこの国の情勢だけはしっかりと捉えているけどね。
 しかし、カペラって無能なはずなのに今日はやけに張り切っているじゃないか。

「三国協商の影で悪魔そのものが動いている……と昨晩リゲルから聞いたでありんす」

 ふぁっ!?
 僕はそんな話をしたつもりは……そうか、カペラも見栄を張って話を盛ったは良いが流石に脳内で整理がしきれず僕に話を投げ渡したんだ。
 ふふっ、僕も経験があるから分かるよカペラ。
 だからって僕も勉強しきれていない内容で話を作れるか……いや、ここで話を通せば僕の承認欲求は鰻登りだ。
 やり遂げてやる!
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