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第一章 日記
日記(4)
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ベッドの上で日記を閉じると、亜弥は再び天井を見つめた。じっと見つめていると、茶色い木造りの天井が、遠い宇宙の果てに続いているように思えてくる。その天井の木目が織り成す無意味な模様さえ、ひとつひとつ全てに意味があるように思えてくる。いつしか亜弥は、まるで無限と思えるような、大きさも形もない世界へと導かれていった。
その無限の世界で、〝彼〟は〝君〟を捜していた。どんなに捜しても捜しても見つからない〝君〟を、追い求めていた。深い青の空の中。漆黒の闇の森の中。冷たく乾いた大地の中。めまぐるしく変わる景色の中……それは、日記と同じ内容だった。
〝僕はここにいるよ。ずっと君を待っている。ずっと君を捜している。ずっとここで、もう一度君に巡り会えるまで……〟
彼の悲痛な叫び。雲をかき分け、森を切り倒し、大地を揺さぶる。彼は叫び続ける。
〝……! ……! ……!〟
幾度も呼ばれる〝君〟の名前。しかし、はっきりと聴き取る事はできないし、彼の姿も黒い影でしか見えない。亜弥はそんな彼を立ち竦んだままずっと見ていた。泣き叫ぶ彼の姿を、泣きながら見ていた。でも彼は亜弥には気づかない。やがて景色はマーブル状に揺らめき、彼の姿も陽炎のように歪み消え去った。
……もう幾度もみた夢。あの日記を手に入れてから、繰り返しみた夢。もう幾度も……。
午前四時。亜弥は目を覚ました。蛍光灯は煌々と光を放っていたが、光は滲んで部屋の中がよく見えない。夢の中と同じように、涙で何もかもが霞んで見えたのだ。
(どうしてこんな夢ばかりみるの。わたしには何の関係もないのに……)
亜弥は、枕元のタオルで涙を拭った。そしてライトを消すと、軟らかなタオルケットを頭までかぶって目を閉じた。
(何かわたしの記憶と関係あるの? わたしが失くしてしまった半年前の記憶に?)
……そう、亜弥は半年前に記憶を失くしていた。とは言っても、自分がどこの誰かわからなくなる程の記憶ではない。ちょうど半年前の春休み──。彼女は何か大きなショックを受け、〝ある部分に関する記憶〟だけが飛んでしまったのだ。
気を失った亜弥が目覚めたのは、病院の白いベッドの中だった。霧が引いて行くように目覚めた意識の中で最初に見たのは、不安げに自分を見下ろす両親の顔だった。
〝大丈夫、亜弥? どこも痛くない?〟
〝亜弥、父さん達がわかるか?〟
両親や医者から色々訊かれても、どこで何故自分が気を失ったのか、どうやってここまで辿り着いたのか、何も想い出せなかった。断片的に覚えているのは、緑の森の景色と風と灼熱の太陽。ただそれだけだった。
幸い頭も打っておらず、身体中ケガひとつしている様子はなかったが、ぽっかりと空いた記憶。医師は両親と亜弥にふとした瞬間に全てを想い出すかもしれないし、一生このまま想い出さない可能性もあると告げた。枕元の両親に、自分にいったい何があったのか逆に尋ねても、何も知らない、ただお前が近くの森の中で倒れていただけだとしか教えてくれなかった。
数日で退院した亜弥は、一見普段の生活を取り戻したかのように思われたが、失くした記憶を追う内に更に奇妙な事に気づいた。
失ったのは、倒れる直前の記憶だけではなかった。
その更に遡る一年程の間の何かに関わる記憶が、まるで彫刻刀で綺麗に彫り削られたように抜け落ちていたのだ。確かにここに何かあったのに。でも、何があったのかまるで想い出せない。
最初は想い出そうと必死だった。だが、そこまで自分の脳が拒否して消してしまった記憶を、いつの間にか想い出すのが逆に恐くなっていた。両親さえ何も教えてくれないのは、よほど辛い、悲しい記憶なのかもしれないのだから。
事件が起こったのがちょうど春休みで、クラス替えの前だったり、亜弥自身親しい友人もいなかった事から、生徒の誰かが彼女の記憶喪失について知る事はなく、幸い学校生活にも影響はなかった。
そして、想い出す事を諦めた亜弥に、直後から夢は執拗に彼女に迫った。まるで記憶を永遠に葬ろうとする彼女を責めるかのように……。
(こんな夢、もう見たくない。恐い。わたし、どうかしてしまいそうで恐い)
亜弥は、きつく目を閉じた。
(眠りたくない。でも起きてるのも恐い。お願い。夢なんか見ない位深い眠りに連れて行って!)
亜弥は、誰にともなく願った。願いが叶ったのか、その夜はもうそれ以上夢を見なかった。
翌日亜弥は、眠たげな目のまま家を出た。住宅街に立ち並ぶ自宅から学校までは、バスと徒歩を合わせて三十分程の距離だった。
茶色い革靴でアスファルトを踏み鳴らしながら、通りに面した文房具屋の前にあるバス停に向かう。
九月のまだ暑い風が、亜弥の長めの前髪を泳がせていた。そしてバス停に向かう並木道に立ち並ぶ、立派な木々の青い葉を。
空気はぽかぽかして気持ちの良い陽気なのに、学校に向かうのは気が重かった。
理由のひとつは、青木が苦手だったという事。何故か青木は亜弥に対して他の生徒とは違う目を向けてくる。他の生徒もそれに気づいているようで、〝青木は葉月さんに気がある〟などと、下らない噂の元にもなっていた。そんな噂にはさらさら興味がなかったが、実際青木の視線には参っていた。
それは噂通り〝好意〟を持たれている目では決してなく、〝忠告〟あるいは〝疑い〟そういったものが含まれているような気がしてならなかった。とにかく青木は、いつも何か言いたげな目で亜弥を見ている。しかし、たまに視線が合っても彼は不自然に目を逸らし、まともに会話をしようとはしないのだ。それは青木が担任になってからずっと続いている事だった。
あの日記を手に入れて以来、現実の世界で起こった変わった事と言えば、その青木の態度位だった。
亜弥が協調性のないクラスの問題児だから、単純に担任として気に掛けているのだろうかとも考えたが、真実はわからない。
あまりにも担任の視線が気になるので、夏休みが終わり新学期が始まると同時に、亜弥は登校拒否を起こしていた。また彼の視線に耐えなくてはならないのかと思うと、途端に体調を崩し、五日間休んでしまったのもそれが原因だった。しかも、やっと出席した途端に嵌められたように押し付けられたクラス委員。興味なさそうに振る舞ってはいたが、実際彼女にとって頭の痛い仕打ちだった。だが、拒否する勇気もまたなかったのだ。
バス停まで後数メートルというところで、亜弥は呆然と立ち竦んだ。
二列に並ぶ同じ高校の生徒や一般市民に紛れ、郁の姿を見たからだ。彼は亜弥の姿を捉えると、嬉しそうに微笑んで片手を上げた。
「何してるの、こんな所で……」
昨日確か郁は、三つ手前のバス停で降りて帰ったはずだった。朝このバス停にいるのは、どうしても不自然だとしか思えない。
「おはよ。どうしたの。目、赤いよ」
郁は、すかさず亜弥の寝不足を見抜いたような口振りだ。
「別に。それより、何でここに?」
亜弥は、つっけんどんに重ねて訊いた。
「確かこのバス停で降りるって昨日言ってただろ。一緒に登校しようと思って」
「もう……何でわたしなんかに付きまとう訳?」
亜弥は、迷惑そうに郁を斜めに見た。
「何でって。さぁ何でかな。インスピレーションって言ったら信じる?」
そう言って郁は片目をつぶって見せた。
「ばかばかしい。そんな事、誰も信じないわ」
心底ばかにしたように言い放つ。
「いいよ。信じなくても。でも、本当の事だからさ」
さらりと言う郁の横顔に、再び既視感を覚えた。それと同時に、昨夜の夢とあの日途切れた記憶が重なる。緑の森の景色と風と灼熱の太陽……。
亜弥は右手で額を押さえた。
(もしかして、この人……)
「ねぇ、あなたもしかして、以前にわたしと会った事ある?」
思わず言ってしまってから後悔した。郁が奇妙に目を細めたからだ。変な女だと思われたに違いない。だが、彼はにっと笑った。
「やっと想い出した?」
その無限の世界で、〝彼〟は〝君〟を捜していた。どんなに捜しても捜しても見つからない〝君〟を、追い求めていた。深い青の空の中。漆黒の闇の森の中。冷たく乾いた大地の中。めまぐるしく変わる景色の中……それは、日記と同じ内容だった。
〝僕はここにいるよ。ずっと君を待っている。ずっと君を捜している。ずっとここで、もう一度君に巡り会えるまで……〟
彼の悲痛な叫び。雲をかき分け、森を切り倒し、大地を揺さぶる。彼は叫び続ける。
〝……! ……! ……!〟
幾度も呼ばれる〝君〟の名前。しかし、はっきりと聴き取る事はできないし、彼の姿も黒い影でしか見えない。亜弥はそんな彼を立ち竦んだままずっと見ていた。泣き叫ぶ彼の姿を、泣きながら見ていた。でも彼は亜弥には気づかない。やがて景色はマーブル状に揺らめき、彼の姿も陽炎のように歪み消え去った。
……もう幾度もみた夢。あの日記を手に入れてから、繰り返しみた夢。もう幾度も……。
午前四時。亜弥は目を覚ました。蛍光灯は煌々と光を放っていたが、光は滲んで部屋の中がよく見えない。夢の中と同じように、涙で何もかもが霞んで見えたのだ。
(どうしてこんな夢ばかりみるの。わたしには何の関係もないのに……)
亜弥は、枕元のタオルで涙を拭った。そしてライトを消すと、軟らかなタオルケットを頭までかぶって目を閉じた。
(何かわたしの記憶と関係あるの? わたしが失くしてしまった半年前の記憶に?)
……そう、亜弥は半年前に記憶を失くしていた。とは言っても、自分がどこの誰かわからなくなる程の記憶ではない。ちょうど半年前の春休み──。彼女は何か大きなショックを受け、〝ある部分に関する記憶〟だけが飛んでしまったのだ。
気を失った亜弥が目覚めたのは、病院の白いベッドの中だった。霧が引いて行くように目覚めた意識の中で最初に見たのは、不安げに自分を見下ろす両親の顔だった。
〝大丈夫、亜弥? どこも痛くない?〟
〝亜弥、父さん達がわかるか?〟
両親や医者から色々訊かれても、どこで何故自分が気を失ったのか、どうやってここまで辿り着いたのか、何も想い出せなかった。断片的に覚えているのは、緑の森の景色と風と灼熱の太陽。ただそれだけだった。
幸い頭も打っておらず、身体中ケガひとつしている様子はなかったが、ぽっかりと空いた記憶。医師は両親と亜弥にふとした瞬間に全てを想い出すかもしれないし、一生このまま想い出さない可能性もあると告げた。枕元の両親に、自分にいったい何があったのか逆に尋ねても、何も知らない、ただお前が近くの森の中で倒れていただけだとしか教えてくれなかった。
数日で退院した亜弥は、一見普段の生活を取り戻したかのように思われたが、失くした記憶を追う内に更に奇妙な事に気づいた。
失ったのは、倒れる直前の記憶だけではなかった。
その更に遡る一年程の間の何かに関わる記憶が、まるで彫刻刀で綺麗に彫り削られたように抜け落ちていたのだ。確かにここに何かあったのに。でも、何があったのかまるで想い出せない。
最初は想い出そうと必死だった。だが、そこまで自分の脳が拒否して消してしまった記憶を、いつの間にか想い出すのが逆に恐くなっていた。両親さえ何も教えてくれないのは、よほど辛い、悲しい記憶なのかもしれないのだから。
事件が起こったのがちょうど春休みで、クラス替えの前だったり、亜弥自身親しい友人もいなかった事から、生徒の誰かが彼女の記憶喪失について知る事はなく、幸い学校生活にも影響はなかった。
そして、想い出す事を諦めた亜弥に、直後から夢は執拗に彼女に迫った。まるで記憶を永遠に葬ろうとする彼女を責めるかのように……。
(こんな夢、もう見たくない。恐い。わたし、どうかしてしまいそうで恐い)
亜弥は、きつく目を閉じた。
(眠りたくない。でも起きてるのも恐い。お願い。夢なんか見ない位深い眠りに連れて行って!)
亜弥は、誰にともなく願った。願いが叶ったのか、その夜はもうそれ以上夢を見なかった。
翌日亜弥は、眠たげな目のまま家を出た。住宅街に立ち並ぶ自宅から学校までは、バスと徒歩を合わせて三十分程の距離だった。
茶色い革靴でアスファルトを踏み鳴らしながら、通りに面した文房具屋の前にあるバス停に向かう。
九月のまだ暑い風が、亜弥の長めの前髪を泳がせていた。そしてバス停に向かう並木道に立ち並ぶ、立派な木々の青い葉を。
空気はぽかぽかして気持ちの良い陽気なのに、学校に向かうのは気が重かった。
理由のひとつは、青木が苦手だったという事。何故か青木は亜弥に対して他の生徒とは違う目を向けてくる。他の生徒もそれに気づいているようで、〝青木は葉月さんに気がある〟などと、下らない噂の元にもなっていた。そんな噂にはさらさら興味がなかったが、実際青木の視線には参っていた。
それは噂通り〝好意〟を持たれている目では決してなく、〝忠告〟あるいは〝疑い〟そういったものが含まれているような気がしてならなかった。とにかく青木は、いつも何か言いたげな目で亜弥を見ている。しかし、たまに視線が合っても彼は不自然に目を逸らし、まともに会話をしようとはしないのだ。それは青木が担任になってからずっと続いている事だった。
あの日記を手に入れて以来、現実の世界で起こった変わった事と言えば、その青木の態度位だった。
亜弥が協調性のないクラスの問題児だから、単純に担任として気に掛けているのだろうかとも考えたが、真実はわからない。
あまりにも担任の視線が気になるので、夏休みが終わり新学期が始まると同時に、亜弥は登校拒否を起こしていた。また彼の視線に耐えなくてはならないのかと思うと、途端に体調を崩し、五日間休んでしまったのもそれが原因だった。しかも、やっと出席した途端に嵌められたように押し付けられたクラス委員。興味なさそうに振る舞ってはいたが、実際彼女にとって頭の痛い仕打ちだった。だが、拒否する勇気もまたなかったのだ。
バス停まで後数メートルというところで、亜弥は呆然と立ち竦んだ。
二列に並ぶ同じ高校の生徒や一般市民に紛れ、郁の姿を見たからだ。彼は亜弥の姿を捉えると、嬉しそうに微笑んで片手を上げた。
「何してるの、こんな所で……」
昨日確か郁は、三つ手前のバス停で降りて帰ったはずだった。朝このバス停にいるのは、どうしても不自然だとしか思えない。
「おはよ。どうしたの。目、赤いよ」
郁は、すかさず亜弥の寝不足を見抜いたような口振りだ。
「別に。それより、何でここに?」
亜弥は、つっけんどんに重ねて訊いた。
「確かこのバス停で降りるって昨日言ってただろ。一緒に登校しようと思って」
「もう……何でわたしなんかに付きまとう訳?」
亜弥は、迷惑そうに郁を斜めに見た。
「何でって。さぁ何でかな。インスピレーションって言ったら信じる?」
そう言って郁は片目をつぶって見せた。
「ばかばかしい。そんな事、誰も信じないわ」
心底ばかにしたように言い放つ。
「いいよ。信じなくても。でも、本当の事だからさ」
さらりと言う郁の横顔に、再び既視感を覚えた。それと同時に、昨夜の夢とあの日途切れた記憶が重なる。緑の森の景色と風と灼熱の太陽……。
亜弥は右手で額を押さえた。
(もしかして、この人……)
「ねぇ、あなたもしかして、以前にわたしと会った事ある?」
思わず言ってしまってから後悔した。郁が奇妙に目を細めたからだ。変な女だと思われたに違いない。だが、彼はにっと笑った。
「やっと想い出した?」
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