死者の国への帰り方

KeiKou色

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第一話

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 皆様は、ハロウィンというものを聞いてどんなものを思い浮かべるだろうか。みんなで仮装を楽しむもの?お菓子を貰いに行くもの?イタズラするもの?まぁ、きっとそんな所だろう。
 もちろん、現代のハロウィンというものはそう言うものだ。
 昔の人々にとってハロウィン、つまり10月31日は、死者の世界の扉が開き、先祖の魂やその魂にまぎれて、怨霊おんりょう悪戯いたずら好きな精霊がこちらの世界にやって来る日。つまりは、死者の世界と我々の世界が繋がる日と考えられていたのだ。
 何故、こんな話をするのか、それは、今から始まるお話に関係がある。
 今から始まるのは、死者の世界と我々の世界を繋ぐ扉に落ちてしまった、あるお化けのお話だ。

 どうも、皆さん。突然ですが私は今悩んでいます。と言うのも、私はこの世界の住人ではなく、皆さんで言う所の…黄泉の国…もっと簡単に言えば死者の国の住人なのです。おっと、申し遅れました。私の名前は、ジャック・オ・ランタン。そうカボチャをくり抜いて顔を彫ったあれです。まぁ私の場合は、それに身体がくっついているのですが。
 私は、いつもの様に散歩をしていたのですが、突然足元にこちらの世界への扉が開いてしまいまして…こちらの世界に落ちて来てしまったのです。
 そんな訳で帰り方が分からず困っています。せめて人に聞ければ良いのですが、生憎あいにくと私の姿はこちらの世界の人々には見えない様で…途方に暮れているわけなのです。
 こんなことになるなら、もう少しこちらの世界に興味を持っておくべきでした。私も、他の方達の様に、一度くらいはこちらの世界に遊びに来ていれば良かったのでしょうか。そうすれば、何かアイデアが思い浮かんだかもしれません。
 「あの…」
 それにしても、一人くらい私が見える人がいてくれても良いと思うのですが、だってほら、私って相当目立つ格好を…ん?
 「あの!」
 「…もしかして今、私に呼びかけました?」
 「はい、貴方に声をかけました」
 驚きです。私の姿が見える人が自ら話しかけてくれるとは。天はまだ、私を見放してはいなかった。いや、私の場合、見放されたらウィル・オー・ザ・ウィスプになってしまいますので、とても困るんですけどね。
 「何か困っている様子だったので…何かありましたか?」
 「いえ、その…」
 一つ。あなた方に問いたい。ここで馬鹿正直に、黄泉の国への帰り方が分からないと言ったとして、この方は信じてくれるでしょうか。私はどう思うか、ですか?私は…NOだと思います。何故なら、私の姿が怪しすぎます。明らかにこちらの世界の人々からはズレている。少なくとも、今日私が見てきた人の中に、私の様な姿や格好をした人は見当たりませんでした。
 「その…道迷ってしまって…というか、そこに行く道があるのかも不明で…」
 我ながら、何を言っているのかよくわからない。このままでは、せっかく話しかけてくれたこの方にも申し訳無い。
 「えっと…つまり?」
 ほら、この方も困惑している。それはそうですよ。ただでさえ変な格好をしているのに、変なことを言うのです。私の様な人を、こちらの世界ではなんと言えば良いのか。前に聞いたことがあるような気はするのですが、思い出せませんね…こんなことなら、こちらの世界から死者の国へと来た方ともう少し話しをしていれば良かった。
 「まぁ、つまりは帰り方が分からないのです。私のいた所への帰り方が…」
 「…?うーん…すみません、よく分かりませんけど。道に迷っているなら、行き先を教えてくれれば道案内はできるかもしれませんよ?」
 あぁ、この方はなんと心優しい方なのでしょう。こんな方に本当のことを話さなければ、本当に私は天に見放されますね。
 「信じてもらえるかはわかりませんが、実は…私、この世界の住人ではないのです。黄泉の国…もっと簡単に言えば、死者の世界から不意にこちらへやって来てしまいました。突然の事で、帰り方が分からず、途方に暮れていたのです」
 さて、本当のことは話しましたが、信じてくれるでしょうか。
 「それはつまり…この世の者では無いと言うことですか?幽霊とか、そういう系だと?」
 「まぁ、簡単に言えば…」
 「なるほど。残念ながら死者の国への帰り方は存じ上げません。もしよろしければ、一緒に探しましょうか?」
 「…信じてくれるのですか?」
 「はい!」
 何という事だ。私の姿が見えるだけでなく、私の話を信じてくれるだけでなく、一緒に帰り方を探してくれるというのだから。
 「ありがとうございます。とても助かります」
 「私、花咲はなさき優花ゆうかと言います。貴方は?」
 「あぁ、申し遅れました。私はジャック・オ・ランタンと申します」
 「では短い間かもしれませんが、よろしくお願いしますね。ジャックさん」
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