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第二話
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「ジャックさん。本当に帰る方法に心当たりがないんですか?」
「はい。というのも、私はこちらの世界に来たことが全く無く…行って帰って来た方達はいるので、帰る方法はあると思うのです…」
というか、あってくれないと困るのですが。とはいえ、焦ってはいけませんね。落ち着いていかなければ。それに、せっかく来たのなら少しくらい楽しんでもバチは当たらないでしょう。
「そうですか。では、まずは図書館にでも行きましょう」
「図書館?あぁ、あの本がいっぱい置いてある。死者の国にもありました。行ったことはありませんが」
「はい。そこで何か手掛かりが無いか調べて見ましょう」
そう言って歩き始めた優花さんに着いて行く形で、私は図書館に向かいました。
道中はとても楽しいものでした。私の見た事の無いものが沢山ありました。死者の国には無い食べ物に、天まで届きそうな大きな建物。人が近づいただけで勝手に開く扉。本当に見た事の無いものだらけで退屈しません。
こちらの世界がこんなに面白いものだと知っていたら、私は何回も足を運んでいたというのに。
「…着きました」
「ここが…」
少し疲れた様子でそう言った優花さんは一度足を止めました。目線の先にあるその建物は、高さ的には先程見た塔?に比べて遥かに小さいですが、横に広い。さぞ大量の本が収められているでしょう。
「かなり大きい所の様ですね」
「中央大図書館と言って、この町では一番大きな図書館ですから」
そう言いながら、先程初めて見た勝手に開く扉をくぐり、中に入りました。ちなみに、私は扉が反応してくれないので、すり抜けて入りました。何故、他の人には反応するのに…と不思議に思いましたが、おそらく私がこちらの世界の住人では無いからでしょう。そもそも、すり抜けれるようなので開いても開かなくても大丈夫ですけど。
中には予想通り、大量の本が綺麗に並べられ、種類別に分けられていてとても探しやすい。一つ、難点をあげるとするなら、私はこちらの世界の物に触れられないようなので、自分で持ってきて調べることが出来ない点です。
「優花さんに任せ切りになるのは申し訳無いです…」
「いえ、触れられないのは仕方の無い事ですから」
図書館の中ということや、他の人には見えない私と会話していることによる視線を気にしてか、小さい声でそう返してくれる優花さん。本当に、彼女は優しい方だ。
「それに、何かを調べるのは好きですから」
そう言って、調べ物に戻る優花さん。凄い集中力で色々と調べてくれています。
私の方でも、それらしい本が無いかと見て回って、あればその場所を記憶して、次の本を探す優花さんにお伝えする。
そんな感じで、大体2、3時間くらいは経ったでしょうか。突然優花さんが「ジャックさん、これを見てください」と、声をかけてくれました。
「何か見つかりましたか!?」
私は進展があったことへの喜びと、それまで調べ続けてくれた優花さんへの感謝を抱きながら、書いてある内容を読みました。
それは、ハロウィンという行事のことについて書かれたものでした。それによれば、その時期の夜になると、死者の国とこちらの世界を繋ぐ扉が開き、死した者の魂や、それに紛れて怨霊や精霊などがやって来る日だと信じられていたとのことでした。もし、これが本当なら…
「そのハロウィンの日であれば、死者の国へと通じる扉が、どこかに開くということですね」
「そういえば…今日は10月31日…ちょうどハロウィンですね。今は16時半…大体夜とされるのが18時頃からなので…」
「もうすぐ扉が開く…」
これは大きな情報です。扉がどこで開くかはわかりませんが…その扉を見つければ、それをくぐって死者の国へと帰ることができる。
「ありがとうございます!希望が見えました!」
「まだ、可能性がある。というだけですけど…それに、どこに開くはわかりませんし…
「それでもです!ありがとうございます!」
そう言って、優花さんの手を握ろうとしましたが、すり抜けてしまいました。何だか、少し寂しいです。
「…お役に立てたのなら良かったです」
彼女はそう言って、少し微笑んでくれました。寂しい気持ちが、少しだけ和らいだ気がします。
「はい。というのも、私はこちらの世界に来たことが全く無く…行って帰って来た方達はいるので、帰る方法はあると思うのです…」
というか、あってくれないと困るのですが。とはいえ、焦ってはいけませんね。落ち着いていかなければ。それに、せっかく来たのなら少しくらい楽しんでもバチは当たらないでしょう。
「そうですか。では、まずは図書館にでも行きましょう」
「図書館?あぁ、あの本がいっぱい置いてある。死者の国にもありました。行ったことはありませんが」
「はい。そこで何か手掛かりが無いか調べて見ましょう」
そう言って歩き始めた優花さんに着いて行く形で、私は図書館に向かいました。
道中はとても楽しいものでした。私の見た事の無いものが沢山ありました。死者の国には無い食べ物に、天まで届きそうな大きな建物。人が近づいただけで勝手に開く扉。本当に見た事の無いものだらけで退屈しません。
こちらの世界がこんなに面白いものだと知っていたら、私は何回も足を運んでいたというのに。
「…着きました」
「ここが…」
少し疲れた様子でそう言った優花さんは一度足を止めました。目線の先にあるその建物は、高さ的には先程見た塔?に比べて遥かに小さいですが、横に広い。さぞ大量の本が収められているでしょう。
「かなり大きい所の様ですね」
「中央大図書館と言って、この町では一番大きな図書館ですから」
そう言いながら、先程初めて見た勝手に開く扉をくぐり、中に入りました。ちなみに、私は扉が反応してくれないので、すり抜けて入りました。何故、他の人には反応するのに…と不思議に思いましたが、おそらく私がこちらの世界の住人では無いからでしょう。そもそも、すり抜けれるようなので開いても開かなくても大丈夫ですけど。
中には予想通り、大量の本が綺麗に並べられ、種類別に分けられていてとても探しやすい。一つ、難点をあげるとするなら、私はこちらの世界の物に触れられないようなので、自分で持ってきて調べることが出来ない点です。
「優花さんに任せ切りになるのは申し訳無いです…」
「いえ、触れられないのは仕方の無い事ですから」
図書館の中ということや、他の人には見えない私と会話していることによる視線を気にしてか、小さい声でそう返してくれる優花さん。本当に、彼女は優しい方だ。
「それに、何かを調べるのは好きですから」
そう言って、調べ物に戻る優花さん。凄い集中力で色々と調べてくれています。
私の方でも、それらしい本が無いかと見て回って、あればその場所を記憶して、次の本を探す優花さんにお伝えする。
そんな感じで、大体2、3時間くらいは経ったでしょうか。突然優花さんが「ジャックさん、これを見てください」と、声をかけてくれました。
「何か見つかりましたか!?」
私は進展があったことへの喜びと、それまで調べ続けてくれた優花さんへの感謝を抱きながら、書いてある内容を読みました。
それは、ハロウィンという行事のことについて書かれたものでした。それによれば、その時期の夜になると、死者の国とこちらの世界を繋ぐ扉が開き、死した者の魂や、それに紛れて怨霊や精霊などがやって来る日だと信じられていたとのことでした。もし、これが本当なら…
「そのハロウィンの日であれば、死者の国へと通じる扉が、どこかに開くということですね」
「そういえば…今日は10月31日…ちょうどハロウィンですね。今は16時半…大体夜とされるのが18時頃からなので…」
「もうすぐ扉が開く…」
これは大きな情報です。扉がどこで開くかはわかりませんが…その扉を見つければ、それをくぐって死者の国へと帰ることができる。
「ありがとうございます!希望が見えました!」
「まだ、可能性がある。というだけですけど…それに、どこに開くはわかりませんし…
「それでもです!ありがとうございます!」
そう言って、優花さんの手を握ろうとしましたが、すり抜けてしまいました。何だか、少し寂しいです。
「…お役に立てたのなら良かったです」
彼女はそう言って、少し微笑んでくれました。寂しい気持ちが、少しだけ和らいだ気がします。
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