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第一章 始まりの村
第6話 約束
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気が付いたらベッドの上で寝かされていた。
ランタンの淡い光だけが照らす木組みの室内。
いつも寝起きしている自分の部屋のそれとは明らかに違う。
「どうしてこんなところにいるんだ……」
記憶を辿る。
そういえば、アリスに錬金術を教えてもらっていたんだ。
それで、失敗して吹っ飛ばされた。
幸い、身体の痛みは無かった。
「ユウトさん!!」
突然、何者かに抱きしめられた。
それが誰なのか、なんとなく匂いで理解した。
「ルミカさん、そんなに強く抱きしめられたら痛いです……」
それと、興奮を抑えられなくなる。
元々女の子に免疫が無いんだから。
耳元で、「良かった……本当に良かった……!」と、何度も何度も呟かれるから、次第に緊張はほぐれていった。
「まったく、だから失敗するって言ったのよ。魔力の量は半端ないみたいだけど、錬金術にはまるで向いてないわ」
アリスはやっぱりムスッとしていた。
それと、ヒラヒラしていた服がところどころボロボロになっていて、顔とか腕とかにも小さな傷ができていた。
未だ抱きしめてくるルミカさんの腕にも、傷が出来ていた。
来ていた服もだいぶボロボロ。
「それにしても、ルミカを守ったっていうのにどうしてあんたはほとんど無傷なのよ……才能は無いのに幸運だけはあるのね」
と言ったアリスは、少しだけ安堵しているように見えた。
着ていたジャージはもうボロボロになっていたけど、身体はほとんど無傷。
確かに、幸運だけはあるみたいだ。
頭を打ち付けたのに痛みは引いてるし、筋肉痛も消えていた。
「あの、ルミカさんそろそろ離れてくれると嬉しいんですけど……」
と言ったら、顔を真っ赤にして勢いよく離れた。
こういうところはやっぱり子供っぽい。
「ごめんなさい……」
「いや、いいですよ。心配させてすみません」
間接的だけど二人を傷つけてしまったのは俺なんだから、本当に申し訳ない。
下手をしたら死んでいたかもしれない。
「もう絶対に錬金術は使わないこと!わかった?」
「わかりました……」
少々強い語気で言われ、思わず敬語になってしまった。
✳✳✳✳
村の外れで錬金術を使って本当によかったと思えた。
もし、村の中心部やアリスの薬屋で錬金術を使っていたら、目も当てられないような惨状になっていたに違い無い。
「これって、かなりヤバいよな……」
もう一度村の外れに来てみると、錬成陣を書いたところを中心に、周りの木々が全て吹っ飛ばされていた。
まるで、ミステリーサークルが出来たかのような更地。
「ユウトさん」
振り向くと、新しい綺麗な服に袖を通したルミカさんが立っていた。白色を基調としたワンピースのような服。割れたメガネも直してもらったようだ。
「すいません、ルミカさん……」
「いえ、私も取り乱しちゃってすいません」
少し頬を染めた。
きっと、さっきのことを思い出しているのだろう。
まだ、ほんのりとルミカさんの匂いを覚えていた。
「言いそびれちゃってすいません。爆発した時に助けていただいて、本当にありがとうございます」
と言ったあと、深々と頭を下げてきた。
少しだけたじろぐ。
「元々俺が失敗したからこうなったんですから! お礼なんてとんでもないです!」
それに、ほとんど無意識のうちに行動してたんだから。
ルミカさんはクスリと笑う。
「優しいんですね」
「八方美人なだけですよ」
人と触れ合うことがあまりなかったから、誰に対しても優しく接してしまう。
自分の悪いところだと思っていても、治すことは出来ていなかった。
だから、アリスがちょっとだけ羨ましかったりする。
あんなに裏表無く話せるのは、やっぱり一種の魅力だ。
「もう、錬金術は使わないでくださいね?」
念を押される。
それが、俺のことを気遣ってくれての発言なんだとすぐにわかった。
「もう死にかけるのはこりごりなんで、絶対に使いません」
そう言うと、ルミカさんはゆっくりと俺に近付いてきた。
ドキドキしていると、右手の小指を差し出してくる。
「私が子どもの頃に教えてもらったおまじないのようなものなんですけど、ユウトさんの住んでいた国だと一般的じゃ無いかもしれません」
少しだけ躊躇ったけど、俺も小指を差し出してルミカさんに絡めた。
「約束、ですよね。俺の国にもそんなおまじないがありました」
数度二人の指を振り合って、どちらからともなく離した。
小指は熱を帯びて、しっかりと約束が刻まれたのがわかる。
レンズ越しに見た俺の頬は、きっと赤く染まっているに違いない。
ランタンの淡い光だけが照らす木組みの室内。
いつも寝起きしている自分の部屋のそれとは明らかに違う。
「どうしてこんなところにいるんだ……」
記憶を辿る。
そういえば、アリスに錬金術を教えてもらっていたんだ。
それで、失敗して吹っ飛ばされた。
幸い、身体の痛みは無かった。
「ユウトさん!!」
突然、何者かに抱きしめられた。
それが誰なのか、なんとなく匂いで理解した。
「ルミカさん、そんなに強く抱きしめられたら痛いです……」
それと、興奮を抑えられなくなる。
元々女の子に免疫が無いんだから。
耳元で、「良かった……本当に良かった……!」と、何度も何度も呟かれるから、次第に緊張はほぐれていった。
「まったく、だから失敗するって言ったのよ。魔力の量は半端ないみたいだけど、錬金術にはまるで向いてないわ」
アリスはやっぱりムスッとしていた。
それと、ヒラヒラしていた服がところどころボロボロになっていて、顔とか腕とかにも小さな傷ができていた。
未だ抱きしめてくるルミカさんの腕にも、傷が出来ていた。
来ていた服もだいぶボロボロ。
「それにしても、ルミカを守ったっていうのにどうしてあんたはほとんど無傷なのよ……才能は無いのに幸運だけはあるのね」
と言ったアリスは、少しだけ安堵しているように見えた。
着ていたジャージはもうボロボロになっていたけど、身体はほとんど無傷。
確かに、幸運だけはあるみたいだ。
頭を打ち付けたのに痛みは引いてるし、筋肉痛も消えていた。
「あの、ルミカさんそろそろ離れてくれると嬉しいんですけど……」
と言ったら、顔を真っ赤にして勢いよく離れた。
こういうところはやっぱり子供っぽい。
「ごめんなさい……」
「いや、いいですよ。心配させてすみません」
間接的だけど二人を傷つけてしまったのは俺なんだから、本当に申し訳ない。
下手をしたら死んでいたかもしれない。
「もう絶対に錬金術は使わないこと!わかった?」
「わかりました……」
少々強い語気で言われ、思わず敬語になってしまった。
✳✳✳✳
村の外れで錬金術を使って本当によかったと思えた。
もし、村の中心部やアリスの薬屋で錬金術を使っていたら、目も当てられないような惨状になっていたに違い無い。
「これって、かなりヤバいよな……」
もう一度村の外れに来てみると、錬成陣を書いたところを中心に、周りの木々が全て吹っ飛ばされていた。
まるで、ミステリーサークルが出来たかのような更地。
「ユウトさん」
振り向くと、新しい綺麗な服に袖を通したルミカさんが立っていた。白色を基調としたワンピースのような服。割れたメガネも直してもらったようだ。
「すいません、ルミカさん……」
「いえ、私も取り乱しちゃってすいません」
少し頬を染めた。
きっと、さっきのことを思い出しているのだろう。
まだ、ほんのりとルミカさんの匂いを覚えていた。
「言いそびれちゃってすいません。爆発した時に助けていただいて、本当にありがとうございます」
と言ったあと、深々と頭を下げてきた。
少しだけたじろぐ。
「元々俺が失敗したからこうなったんですから! お礼なんてとんでもないです!」
それに、ほとんど無意識のうちに行動してたんだから。
ルミカさんはクスリと笑う。
「優しいんですね」
「八方美人なだけですよ」
人と触れ合うことがあまりなかったから、誰に対しても優しく接してしまう。
自分の悪いところだと思っていても、治すことは出来ていなかった。
だから、アリスがちょっとだけ羨ましかったりする。
あんなに裏表無く話せるのは、やっぱり一種の魅力だ。
「もう、錬金術は使わないでくださいね?」
念を押される。
それが、俺のことを気遣ってくれての発言なんだとすぐにわかった。
「もう死にかけるのはこりごりなんで、絶対に使いません」
そう言うと、ルミカさんはゆっくりと俺に近付いてきた。
ドキドキしていると、右手の小指を差し出してくる。
「私が子どもの頃に教えてもらったおまじないのようなものなんですけど、ユウトさんの住んでいた国だと一般的じゃ無いかもしれません」
少しだけ躊躇ったけど、俺も小指を差し出してルミカさんに絡めた。
「約束、ですよね。俺の国にもそんなおまじないがありました」
数度二人の指を振り合って、どちらからともなく離した。
小指は熱を帯びて、しっかりと約束が刻まれたのがわかる。
レンズ越しに見た俺の頬は、きっと赤く染まっているに違いない。
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