翼が駆ける獣界譚

黒焔

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海賊の海

海の風は蒸気に霞む

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「見えた!!」
インフェルノの力を内包する桃がアンフィスバエナの攻撃を回避する際に2つの頭の根本に光るインフェルノの力の源を見つける事が出来た。
「桃、ナイス!」
頭の根本を飛び回りながら刀の光で弱点である力の源を教えるとイヨは息を深く吸い始めその直後
「Ah~....♪」
と、歌うように特殊な音波を放ちアンフィスバエナの2つの頭の動きを鈍らせた後に四丁式蒸気銃に弾を装填、そして構えを取ると一点に集中させて攻撃を放つ。
「月涙ノ独唱歌(ティアドロップ・アリア)!!」
一点に集中した無数の銃弾が根本を針のように突き刺すと同時に穿ち抜く。
「今だ、桃!!渾身の一撃を叩き込んでやるといい!」
「任せて!!
師匠、稽古では上手く出来なかったけど...何か今なら出来そうな気がする!
天閃!!!!」
黒紫の霧の魔力が弱まり本来の素早さを取り戻せた桃は鬼姫状態でも使い熟すのが困難であった剣術・天閃を見事にアンフィスバエナの弱点に喰らわせることに成功した。

「...やった!!インフェルノを倒せた!!それも、天閃を成功させて!」

崩れ行くインフェルノ・アンフィスバエナの姿を見て歓喜の声を上げる。
そして巨竜の怪異は気を失い倒れた2人の海賊へと姿を変えて彼らを支配していた2体のインフェルノの影は片方は蜂の巣のようにボロボロになって消え、もう片方も去ろうとするが気付かない内に真っ二つになり消滅したのを確認すると街に降りてイヨに声を掛ける。

「イヨ...ありがとう。」
「別にいいよ。僕はフラッペ屋が潰されたのがムカついただけ。
あそこのマスカットクリームフラッペ、美味しかったんだよ?」
それを聞くと桃も何だか気になるようで話に乗ってくる。
「えっ!?何それ!?名前だけでめちゃくちゃ美味しそう!!」
「フフ、美味しそうじゃない、美味しいんだよ。」
敵対関係でなければ仲間になれた、そんな感じの会話ではあるが不意にその幕は降りる事となる。

「でもごめん、桃。君を捉えなくちゃならないんだ。」

イヨが悲しそうな声で桃の手を握るとその両手にスチームナイト鉱石という金属で出来た手錠を嵌めるとそこから漏れ出る電磁波が翼の機能を低下させる。

「え...?嘘っ...どういう事...?まさか私を騙した!?」

この状況が理解できずに困惑の表情が出てきて本来湧いてくるはずの怒りが遅れてやってくる。

「よくやったじゃねぇか、イヨ。」
またもや桃にとっては聞き覚えのある声。
ジークヴァルド・プレジオス。
無明黒鷹丸を執拗に狙い続ける大海賊、イヨが所属する海賊団の首魁である。
「ジークヴァルド!!またお前か!この手錠を外して!!」
その声を聞き入れる事なく容易く無明黒鷹丸を手にしたジークヴァルドは高笑いをした後に無言で首を横に振ると桃を無視するように歩き始める。
「ハハハハハハハハハハ!!!!手に入れた!!手に入れぞイヨ!!
昇陽の名工でも鍛造する事が不可能とされる神宝、無明黒鷹丸だ!!
ヒナギリ、スティング!撤退だ!!
後はガンヴェルクの軍隊にでも任せて、今宵は宴をしようじゃねぇか!晴布のやつも今日は好きにさせてやれ!ハハハハハ!!」


「...待って...待ってよ...その刀を返せ...!
私の師匠がくれたお宝であり、護身の刀...汚い手で触れるな、海賊!!」
去り行くジークヴァルドに魂の底から吐き出すような怒号をぶつけるがそれも虚しく高笑いと共にジークヴァルドは声すら聞こえぬ距離へと歩み行く。
「桃、無駄だよ。船長はあの刀は絶対手放さない。
だから、諦めてガンヴェルクに行ってきなよ?」
そう言い残すとイヨもまたジークヴァルドに付いて行き姿をくらましてしまう。

「返せ....海賊...!」

桃は自暴自棄になりつつその場に座り込むと軍靴を鳴らす足音が聞こえて見上げるとそこには漆黒の軍服を身に纏いガスマスクのようなものをつけクワガタの顎に似た角を生やした昆虫系の獣人が現れ声を掛ける。
「貴様がジークヴァルドの言っていた桃という少女だな?
罪人としてガンヴェルク公国の監獄「アリジゴク」へと連行する。抵抗せず付いてくるが良い。」
そして抵抗出来ないまま、桃は護送飛空艇へと乗せられガンヴェルクへと連行されるのだった。


その頃、船長達が倒れ伏した気配を察知した海賊達は散り散りとなり砂浜や街への道から逃げ去っていく。
「お嬢、無事か!?」
夜潮が街へと向かおうとした時、空を護送飛空艇が飛び去る。
「助けて!!夜潮、トフェニス!!」
そこから一瞬だけ聞こえた声に雷雅は気付き夜潮を呼び止める。
「夜潮、桃様だ...あの船から桃様の声がした!!」

時を同じくして戦闘後と思しきトフェニスが現れる。
「大変です!!多分、今の飛空艇に桃殿が乗ってる!
恐らく海竜海賊団とガンヴェルク公国軍の罠に嵌められました!!」

「クソ、ガンヴェルクか...お嬢、もう少しの辛抱だ。助けてやる!」
まだ手はある、夜潮はガルーマ式の連絡機を取り出すと連絡先の相手に大声で助けを乞う。

「アサギ!!力を貸してくれ!!」

夜潮のこの行動が一行の命運を分ける事となるのだった。
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