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王国護りし十三の角
聖剣伝説
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爆破された玉座の間。
蒼天の下に露見するは玉座に座したままの騎士王アルース。
そして彼を守護するように集った2人の騎士。太陽の騎士ウェイン
湖光の騎士ランザス
彼らは空に在る3つの影を睨む。
その影たる者達の名は
紅葉ニ鹿
松ニ鶴
桜ニ幕
昇陽の隠密組織、花札御庭番衆である。
口火を切る形でリーダー格である紅葉ニ鹿が語り始める。
「わっちらは花札御庭番衆。
用がありんすのは其処なる間夫、騎士王アルースただお一人。
武座さん達に用はござりんせん。
どうか、退去しておくんなんし。」
「そうだそうだー!早く逃げないとまた爆発しちゃうぞー!ほら、爆弾まだいっぱいあるんだよ?」
「幕ちゃん、煽らないの。僕達は騎士王を討つだけなんだからね?」
そう語り合う花札御庭番衆に対して円卓の騎士達は静かに睨み沈黙を貫くが彼女らを一瞥する事もなくアルースが重々しく口を開く。
「下賤め、アメンルプトに次いで昇陽か。
このアルース・ブラックフレア・アディンが統べる王国を穢す者達と交わす言葉など無い。
アディンの守護者達よ。剣を抜き共に闘おう。
この王国を護る役目を果たす時だ。」
アルースは玉座から立ち上がり聖剣の鞘で地面を突くと円卓の騎士達が一斉に抜刀する。
「湖光の剣が影を断つ。覚悟は良いな?」
「....王国に仇為す者は我らが敵。我らが王に触れる事能わず!」
殺気を放つ騎士達を他所に翼を持つ暗殺者達は互いを見て頷き先手を打つべく各々が攻撃を繰り出す。
「それ、どっかーん!もっといっぱいどっかーん!!」
何処からか小さな爆弾を指の間に入れたハチドリの獣人である桜ニ幕が幾つも落として爆発による攻撃は勿論、中に仕組まれた火山灰が散り辺りを闇に包み込む。
「残念だな、我が王に仇為す少女よ。
剣は既に貴様を捉えた!!」
正確な位置を視認出来ていたイッカクの獣人、湖の騎士ランザスがその跳躍力を使い低空飛行する桜ニ幕に斬りかかろうと剣を振り上げるも「ほい。炸裂弾♪」とどこか嬉しそうな声で桜ニ幕が炸裂を取り出してランザス自身の判断で距離を取る判断をする。
「あなたが離れれば私は動かなくてもいいんですよー?
ささ、爆弾をどんどん投げて王様もドッカンしちゃおっかなー!」
ランザスは舌打ちをしながらも無言で桜ニ幕の出方をジッと見る。
爆弾を取り出す、物理的な行動である以上はその動きには確実に予備動作がある筈と見た。
その瞬間に袖の奥から転がり込んだ爆弾らしき物を視認すると我先にとランザスは飛び上がり低空に居る桜ニ幕を撃ち落とそうとする。
「そこだ!!!湖光放つ水面に墜ちる時だ、受けるがいい!!幻想黒剣・月映えの湖光(ファンタジック・アロンダイル)!!!!」
だが彼女が取り出したモノ、それは爆弾などではなく苦無だった。
「何言ってんの?爆弾なんて危ない物、袖の中にあるワケないじゃないですか。」
「な、何だと!?」
不意を突かれ鎧の隙間を苦無で腱をガッツリ引き裂かれるも痛みと脚の自由を失う感覚に耐えながらも桜ニ幕の帯、その中に隠された爆弾袋を斬り裂いた。
「........どうだ、これで貴様は無力化した...
今この場で退くならば命は取らない。私も王も、少女の命を無闇に奪うつもりはない。
退きなさい!!」
「....ぐぅぅ....!」
悔しげに顔を歪める桜ニ幕を見遣りながらウェインと刃を交える松ニ鶴が声を上げる。
「幕ちゃん!!逃げて!あとは僕と姐さんがやるから!!」
「おや?戦闘中に仲間を心配とは。
貴女方も血の通った獣人だな....で、あれば。
我がアディンに弓を引くのはやめて頂きたいものだ。」
燃え盛る剛剣をいなしてウェインの身体に斬撃を浴びせながら松ニ鶴は悪態をつく。
「お前みたいな筋肉ダルマなんかには分からないよ。
僕達、昇陽には昇陽の考えややり方があるんだ!」
松ニ鶴の仮面に火が燃え移るとその仮面を投げ飛ばしてウェインのマントに引火させようとするが拳で防がれ仮面は破壊され松ニ鶴の素顔が露わになる。
「僕の顔を知ってしまったなら僕かお前、どちらかが死ぬしかないね。掟なんだ、花札御庭番衆のね。」
松ニ鶴が露わにした素顔からは先程までの少女らしい表情は消え太陽の騎士と称されるウェインですら背筋に寒気が走る。
「何だ...あの少女は...?」
次の瞬間、松ニ鶴はウェインから離れるように空へと飛び上がり空中で黒い煙玉を上空で炸裂させる。
上空は分厚い雲のような黒煙が覆い太陽の光が遮断され辺りは薄暗くなる。
そしてその影響は桜ニ幕、ウェインの両者に顕著に現れるのだった。
「鶴さんありがとう!!」
桜ニ幕は桜色の着物を脱ぎ捨てると黒い忍び装束へと変わり辺りに「えいや!」と同じ黒煙玉を投げると気配が消える。
一方でウェインは太陽の光が遮られた事によりツノや髪から熱を吸収できなくなりその力が大幅に低下する。
「ほう...私の弱点を読んでいたとは。お見事!
だが速いだけではこのウェイン、墜す事など不可能と知るがいい!!」
すっかり炎が消えた剣を構えながらも上空から見下ろす松ニ鶴に向かい咆哮すると全力で剣を横薙ぎにするとその剣圧が衝撃波となり黒煙を掻き飛ばしながら松ニ鶴に向かって一直線に飛んで行く。
「....何かと思えば力技か。そんな物で勝ててきたなんて余程の無能としか戦って来なかったんだね。
陽は翳り 夜風に吹かれ 雪雲の
降らす雪にて 散るは剣」
自身に向けて吼えるウェインの一撃を難なく回避する。
その次の瞬間には既に松ニ鶴はウェインの背後を取っており氷雪のような白刃にて鎧の隙間を確実に避けてウェインの身体を貫いていた。
「っ、いつの間に....っ!?
王よ....どうか...」
ウェインは気配に気付かず、彼の耳には松ニ鶴が放った手向けの歌がただ谺するのみで遂には意識を手離しその場に倒れ伏した。
「ウェイン...よくやった。
ランザスよ、退がるがいい...。」
アルースが深く息を吐きながら玉座から立ち上がった次の瞬間には倒れ伏したウェインの側で聖剣を手にしている。
そしてランザスは「はっ!」とだけアルースの言葉に返事をするとウェインを抱えてその場を後にする。
状況は1対3。
その様は圧倒的な不利に見えるがアルースは冷めた視線で空中を舞う天空の忍を突き刺すように睨み付ける。
その様子を機と見た桜ニ幕は喜び勇んで松ニ鶴の前に出てアルースに向かい爆弾をチラつかせて挑発する。
「騎士王サマ、私達を舐めてな~い?
私達は昇陽の最高戦力なんだよ~?
そんな重そうな剣で3人を相手取ろうなんて....浅はか過ぎて爆破させちゃいたいな。
喰らえ!爆散祭り・六尺玉!!!」
アルースに向かって放たれた無数の大型の爆弾を回避する事なくアルースは聖剣の鞘を構えたまま立ち尽くす。
「無駄だ...私は聖剣の加護を受けている。
そんな攻撃は通用しない。」
爆風はアルース、否、聖剣を避けるように消え去りアルースの身体は無傷そのもの。
自身の自慢の爆弾を受けながらも立ち尽くすその様子に怒りと焦りを露わにし桜ニ幕は更にガサゴソと巾着の中を探り大小様々な爆弾を手に取る。
「えぇぇぇぃ!!もう怒った、ブチギレた!!
城ごと全部吹き飛ばしてやる!!!」
「ちょ、幕ちゃん!?ダメだよ、僕達の忍務は騎士王の抹殺であって無差別破壊なんかじゃない!!」
「...まぁ鶴ちゃん、落ち着きなんし。
幕ちゃんも考え無しな様子じゃありんせん...わっちは幕ちゃんを信じて拝見するでありんす。」
「鹿姐さん...分かった、じゃあ僕は僕で援護しようかな。」
松ニ鶴はそう言って爆風が届かない距離に移動しつつも鋭い眼でアルースを睨み刀を構える。
「えへへ、期待されてるなら嬉しいなぁ!
じゃあ騎士王サマ、塵芥になってね?
「爆散祭り・爆踊り」!!!!」
桜ニ幕が手にした大小様々な爆弾、其れらを見事な盆踊りをするかのような手捌きで着火しハチドリの獣人らしいホバリングで瞬間移動するかのようにタイミングよく爆弾を投げ付けては爆発音が太鼓を奏でるように音頭を刻みそれに合わせて桜ニ幕が踊り無数の爆弾を延々と投げ続ける。
「.....我が城を爆破、か。
アディンに手を出すべからず....お前達、昇陽はその禁を破り攻撃を仕掛けてきた。
大方、帝の意思...そしてインフェルノの導きだろう。
ならば、聖剣よ....粛清の刻だ。」
数多の爆発を浴びながらもその爆風や火炎は聖剣の鞘が放つ加護によりアルースを護り抜いており爆破のリズムを読みながらアルースは聖剣を鞘から抜く。
そしてその異様な気配を松ニ鶴は察したようで桜ニ幕に叫ぶ。
「幕ちゃん!!危ない!!早く其処から...」
「え...?」
その声が桜ニ幕の最期の声となった。
抜刀した聖剣は眩い聖なる光を放ち、その剣の一振りをアルースが振り下ろす。
剣の軌道は光の鞭とも光線とも取れる異常な熱を放ちながら桜ニ幕を瞬時に姿も形も残らぬ僅かな灰燼に変えて尚も突き進む。
一瞬反応が遅れた松ニ鶴の翼にも光の端が当たり悲痛な叫び声を上げると翼の先端は消失しておりバランスを崩し落下しそうになるが紅葉ニ鹿が必死な表情で松ニ鶴を抱えて救助する。
そんなやり取りさえも歯牙に掛ける事なく聖剣の光はただただ真っ直ぐに進みやがて遠方から何かが崩れるような音が聞こえる。
そしてその方向に目を遣った紅葉ニ鹿が呟く。
「まさか.....昇陽...都を斬ったでありんすか....!?」
光は収束しやがて消える。
裁きの刻は一瞬にして桜ニ幕をはじめあらゆる生命を奪い去った。
アディンに手を触れるべからず、その意味を昇陽は今、思い知った。
「無論だとも。2割ほどの力だがな。
それよりも、だ....貴様が今、相対しているのはアディン聖獣王国 国王、アルース・ブラックフレア・アディンなるぞ。
騎士を統べる王、その力の前に平伏せよ。」
国を撃ち抜く聖剣を構えたアルースが放つ異様な圧に耐えられる筈もなく紅葉ニ鹿はその場を後にする。
自らの命だけでなく痛みで気を失った松ニ鶴、そして何より帝はもちろん自身の身内も無事かどうか定かでは無い聖剣の斬撃をモロに受けた昇陽へと急ぎ飛び去って行った。
「うむ.....やはり内通者が居るな。
シルワ・ソルシエール....裏切りの魔女め。
気配が無いともなれば逃げたか、忌々しく逃げ足が速い....。」
昇陽 都
「な、何だ...何が起きたというのじゃ?
桐!!」
アルースが放った聖剣の斬撃は間一髪、気配を察知した桐ニ鳳凰が白雪を突き飛ばし何とか一命を取り留めていた。
「た、大変ご無礼を致しました、帝....。
お怪我はありませんか...?」
桐ニ鳳凰もギリギリで回避出来たらしく無傷ではいるが帝を突き飛ばしてしまった非礼を詫びる。
そして帝の周りには都を這うように迫ってきた聖剣の斬撃を受けて命を落とした花札御庭番衆が倒れ伏し彼らはいずれも体の一部が灰燼となって消失していた。
「...こ、頭を上げよ桐!!
此度は不問とする!!よくぞわえを助けた、寧ろ褒めて遣わす...。」
「は、有難き御言葉。
...ですが花札御庭番衆の大半が...」
「だな。
だがなりふり構ってられぬ。
五光、猪鹿蝶、雨四光を召集せよ....騎士王も明確に敵となった今、あの小娘も早急にどうにかせねばならぬ。
早よぅ、桐ニ鳳凰...。」
「...畏まりました、白雪帝。」
蒼天の下に露見するは玉座に座したままの騎士王アルース。
そして彼を守護するように集った2人の騎士。太陽の騎士ウェイン
湖光の騎士ランザス
彼らは空に在る3つの影を睨む。
その影たる者達の名は
紅葉ニ鹿
松ニ鶴
桜ニ幕
昇陽の隠密組織、花札御庭番衆である。
口火を切る形でリーダー格である紅葉ニ鹿が語り始める。
「わっちらは花札御庭番衆。
用がありんすのは其処なる間夫、騎士王アルースただお一人。
武座さん達に用はござりんせん。
どうか、退去しておくんなんし。」
「そうだそうだー!早く逃げないとまた爆発しちゃうぞー!ほら、爆弾まだいっぱいあるんだよ?」
「幕ちゃん、煽らないの。僕達は騎士王を討つだけなんだからね?」
そう語り合う花札御庭番衆に対して円卓の騎士達は静かに睨み沈黙を貫くが彼女らを一瞥する事もなくアルースが重々しく口を開く。
「下賤め、アメンルプトに次いで昇陽か。
このアルース・ブラックフレア・アディンが統べる王国を穢す者達と交わす言葉など無い。
アディンの守護者達よ。剣を抜き共に闘おう。
この王国を護る役目を果たす時だ。」
アルースは玉座から立ち上がり聖剣の鞘で地面を突くと円卓の騎士達が一斉に抜刀する。
「湖光の剣が影を断つ。覚悟は良いな?」
「....王国に仇為す者は我らが敵。我らが王に触れる事能わず!」
殺気を放つ騎士達を他所に翼を持つ暗殺者達は互いを見て頷き先手を打つべく各々が攻撃を繰り出す。
「それ、どっかーん!もっといっぱいどっかーん!!」
何処からか小さな爆弾を指の間に入れたハチドリの獣人である桜ニ幕が幾つも落として爆発による攻撃は勿論、中に仕組まれた火山灰が散り辺りを闇に包み込む。
「残念だな、我が王に仇為す少女よ。
剣は既に貴様を捉えた!!」
正確な位置を視認出来ていたイッカクの獣人、湖の騎士ランザスがその跳躍力を使い低空飛行する桜ニ幕に斬りかかろうと剣を振り上げるも「ほい。炸裂弾♪」とどこか嬉しそうな声で桜ニ幕が炸裂を取り出してランザス自身の判断で距離を取る判断をする。
「あなたが離れれば私は動かなくてもいいんですよー?
ささ、爆弾をどんどん投げて王様もドッカンしちゃおっかなー!」
ランザスは舌打ちをしながらも無言で桜ニ幕の出方をジッと見る。
爆弾を取り出す、物理的な行動である以上はその動きには確実に予備動作がある筈と見た。
その瞬間に袖の奥から転がり込んだ爆弾らしき物を視認すると我先にとランザスは飛び上がり低空に居る桜ニ幕を撃ち落とそうとする。
「そこだ!!!湖光放つ水面に墜ちる時だ、受けるがいい!!幻想黒剣・月映えの湖光(ファンタジック・アロンダイル)!!!!」
だが彼女が取り出したモノ、それは爆弾などではなく苦無だった。
「何言ってんの?爆弾なんて危ない物、袖の中にあるワケないじゃないですか。」
「な、何だと!?」
不意を突かれ鎧の隙間を苦無で腱をガッツリ引き裂かれるも痛みと脚の自由を失う感覚に耐えながらも桜ニ幕の帯、その中に隠された爆弾袋を斬り裂いた。
「........どうだ、これで貴様は無力化した...
今この場で退くならば命は取らない。私も王も、少女の命を無闇に奪うつもりはない。
退きなさい!!」
「....ぐぅぅ....!」
悔しげに顔を歪める桜ニ幕を見遣りながらウェインと刃を交える松ニ鶴が声を上げる。
「幕ちゃん!!逃げて!あとは僕と姐さんがやるから!!」
「おや?戦闘中に仲間を心配とは。
貴女方も血の通った獣人だな....で、あれば。
我がアディンに弓を引くのはやめて頂きたいものだ。」
燃え盛る剛剣をいなしてウェインの身体に斬撃を浴びせながら松ニ鶴は悪態をつく。
「お前みたいな筋肉ダルマなんかには分からないよ。
僕達、昇陽には昇陽の考えややり方があるんだ!」
松ニ鶴の仮面に火が燃え移るとその仮面を投げ飛ばしてウェインのマントに引火させようとするが拳で防がれ仮面は破壊され松ニ鶴の素顔が露わになる。
「僕の顔を知ってしまったなら僕かお前、どちらかが死ぬしかないね。掟なんだ、花札御庭番衆のね。」
松ニ鶴が露わにした素顔からは先程までの少女らしい表情は消え太陽の騎士と称されるウェインですら背筋に寒気が走る。
「何だ...あの少女は...?」
次の瞬間、松ニ鶴はウェインから離れるように空へと飛び上がり空中で黒い煙玉を上空で炸裂させる。
上空は分厚い雲のような黒煙が覆い太陽の光が遮断され辺りは薄暗くなる。
そしてその影響は桜ニ幕、ウェインの両者に顕著に現れるのだった。
「鶴さんありがとう!!」
桜ニ幕は桜色の着物を脱ぎ捨てると黒い忍び装束へと変わり辺りに「えいや!」と同じ黒煙玉を投げると気配が消える。
一方でウェインは太陽の光が遮られた事によりツノや髪から熱を吸収できなくなりその力が大幅に低下する。
「ほう...私の弱点を読んでいたとは。お見事!
だが速いだけではこのウェイン、墜す事など不可能と知るがいい!!」
すっかり炎が消えた剣を構えながらも上空から見下ろす松ニ鶴に向かい咆哮すると全力で剣を横薙ぎにするとその剣圧が衝撃波となり黒煙を掻き飛ばしながら松ニ鶴に向かって一直線に飛んで行く。
「....何かと思えば力技か。そんな物で勝ててきたなんて余程の無能としか戦って来なかったんだね。
陽は翳り 夜風に吹かれ 雪雲の
降らす雪にて 散るは剣」
自身に向けて吼えるウェインの一撃を難なく回避する。
その次の瞬間には既に松ニ鶴はウェインの背後を取っており氷雪のような白刃にて鎧の隙間を確実に避けてウェインの身体を貫いていた。
「っ、いつの間に....っ!?
王よ....どうか...」
ウェインは気配に気付かず、彼の耳には松ニ鶴が放った手向けの歌がただ谺するのみで遂には意識を手離しその場に倒れ伏した。
「ウェイン...よくやった。
ランザスよ、退がるがいい...。」
アルースが深く息を吐きながら玉座から立ち上がった次の瞬間には倒れ伏したウェインの側で聖剣を手にしている。
そしてランザスは「はっ!」とだけアルースの言葉に返事をするとウェインを抱えてその場を後にする。
状況は1対3。
その様は圧倒的な不利に見えるがアルースは冷めた視線で空中を舞う天空の忍を突き刺すように睨み付ける。
その様子を機と見た桜ニ幕は喜び勇んで松ニ鶴の前に出てアルースに向かい爆弾をチラつかせて挑発する。
「騎士王サマ、私達を舐めてな~い?
私達は昇陽の最高戦力なんだよ~?
そんな重そうな剣で3人を相手取ろうなんて....浅はか過ぎて爆破させちゃいたいな。
喰らえ!爆散祭り・六尺玉!!!」
アルースに向かって放たれた無数の大型の爆弾を回避する事なくアルースは聖剣の鞘を構えたまま立ち尽くす。
「無駄だ...私は聖剣の加護を受けている。
そんな攻撃は通用しない。」
爆風はアルース、否、聖剣を避けるように消え去りアルースの身体は無傷そのもの。
自身の自慢の爆弾を受けながらも立ち尽くすその様子に怒りと焦りを露わにし桜ニ幕は更にガサゴソと巾着の中を探り大小様々な爆弾を手に取る。
「えぇぇぇぃ!!もう怒った、ブチギレた!!
城ごと全部吹き飛ばしてやる!!!」
「ちょ、幕ちゃん!?ダメだよ、僕達の忍務は騎士王の抹殺であって無差別破壊なんかじゃない!!」
「...まぁ鶴ちゃん、落ち着きなんし。
幕ちゃんも考え無しな様子じゃありんせん...わっちは幕ちゃんを信じて拝見するでありんす。」
「鹿姐さん...分かった、じゃあ僕は僕で援護しようかな。」
松ニ鶴はそう言って爆風が届かない距離に移動しつつも鋭い眼でアルースを睨み刀を構える。
「えへへ、期待されてるなら嬉しいなぁ!
じゃあ騎士王サマ、塵芥になってね?
「爆散祭り・爆踊り」!!!!」
桜ニ幕が手にした大小様々な爆弾、其れらを見事な盆踊りをするかのような手捌きで着火しハチドリの獣人らしいホバリングで瞬間移動するかのようにタイミングよく爆弾を投げ付けては爆発音が太鼓を奏でるように音頭を刻みそれに合わせて桜ニ幕が踊り無数の爆弾を延々と投げ続ける。
「.....我が城を爆破、か。
アディンに手を出すべからず....お前達、昇陽はその禁を破り攻撃を仕掛けてきた。
大方、帝の意思...そしてインフェルノの導きだろう。
ならば、聖剣よ....粛清の刻だ。」
数多の爆発を浴びながらもその爆風や火炎は聖剣の鞘が放つ加護によりアルースを護り抜いており爆破のリズムを読みながらアルースは聖剣を鞘から抜く。
そしてその異様な気配を松ニ鶴は察したようで桜ニ幕に叫ぶ。
「幕ちゃん!!危ない!!早く其処から...」
「え...?」
その声が桜ニ幕の最期の声となった。
抜刀した聖剣は眩い聖なる光を放ち、その剣の一振りをアルースが振り下ろす。
剣の軌道は光の鞭とも光線とも取れる異常な熱を放ちながら桜ニ幕を瞬時に姿も形も残らぬ僅かな灰燼に変えて尚も突き進む。
一瞬反応が遅れた松ニ鶴の翼にも光の端が当たり悲痛な叫び声を上げると翼の先端は消失しておりバランスを崩し落下しそうになるが紅葉ニ鹿が必死な表情で松ニ鶴を抱えて救助する。
そんなやり取りさえも歯牙に掛ける事なく聖剣の光はただただ真っ直ぐに進みやがて遠方から何かが崩れるような音が聞こえる。
そしてその方向に目を遣った紅葉ニ鹿が呟く。
「まさか.....昇陽...都を斬ったでありんすか....!?」
光は収束しやがて消える。
裁きの刻は一瞬にして桜ニ幕をはじめあらゆる生命を奪い去った。
アディンに手を触れるべからず、その意味を昇陽は今、思い知った。
「無論だとも。2割ほどの力だがな。
それよりも、だ....貴様が今、相対しているのはアディン聖獣王国 国王、アルース・ブラックフレア・アディンなるぞ。
騎士を統べる王、その力の前に平伏せよ。」
国を撃ち抜く聖剣を構えたアルースが放つ異様な圧に耐えられる筈もなく紅葉ニ鹿はその場を後にする。
自らの命だけでなく痛みで気を失った松ニ鶴、そして何より帝はもちろん自身の身内も無事かどうか定かでは無い聖剣の斬撃をモロに受けた昇陽へと急ぎ飛び去って行った。
「うむ.....やはり内通者が居るな。
シルワ・ソルシエール....裏切りの魔女め。
気配が無いともなれば逃げたか、忌々しく逃げ足が速い....。」
昇陽 都
「な、何だ...何が起きたというのじゃ?
桐!!」
アルースが放った聖剣の斬撃は間一髪、気配を察知した桐ニ鳳凰が白雪を突き飛ばし何とか一命を取り留めていた。
「た、大変ご無礼を致しました、帝....。
お怪我はありませんか...?」
桐ニ鳳凰もギリギリで回避出来たらしく無傷ではいるが帝を突き飛ばしてしまった非礼を詫びる。
そして帝の周りには都を這うように迫ってきた聖剣の斬撃を受けて命を落とした花札御庭番衆が倒れ伏し彼らはいずれも体の一部が灰燼となって消失していた。
「...こ、頭を上げよ桐!!
此度は不問とする!!よくぞわえを助けた、寧ろ褒めて遣わす...。」
「は、有難き御言葉。
...ですが花札御庭番衆の大半が...」
「だな。
だがなりふり構ってられぬ。
五光、猪鹿蝶、雨四光を召集せよ....騎士王も明確に敵となった今、あの小娘も早急にどうにかせねばならぬ。
早よぅ、桐ニ鳳凰...。」
「...畏まりました、白雪帝。」
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正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
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