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斬撃、麗なる応酬
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雲海ヶ浜。
そこは昇陽と下界を結ぶ門の一つ。
遥かなる雲海の下に広がるのは獣界の真なる大地...だが白い闇そのものたる雲海と乱気流の中を渡る筋力が無ければ下には辿り着けない。
昇陽が"天然の鎖国"と呼ばれる所以である。
だが、命を狙われている夜潮はなりふり構って居られず自身の筋力と飛行能力を信じて浜へと降り立つ。
「...浜には着いたが、雲海まではまた距離があるんだよなぁ。」
と、呟いた矢先に夜潮の頭上を大きな翼影が舞い自身を遮る様に降りてくる。
「嗚呼、悲しいでありんす...」
悲哀を謳い上げる声だがその声にはどこか冷たさを感じる。
大きな翼を折り畳みながらも豪奢な着物を舞わせ女は鉄扇を開き砂地を気にせずに踊る。
「姐さん....アンタが俺を始末する刺客かよ...。」
その言葉に何も言わずにただ舞いながら夜潮を見遣る女。
そして不意にフッと息を吹くと無数の小さな針が夜潮目掛けて飛んで来る。
「...見えてるぜ、姐さん。そんなんじゃ今の俺は死んでやれねぇんだ。」
三味線を弾き鳴らすと音色は真空の刃となり自身に襲い掛かろうとした6本の針を叩き落とし追撃を与えようとするがそれは舞う様な動きで回避されるも着物の一部を裂く。
「まぁ。三味線...残念でありんす。その音色でわちきも舞いたかったでありんすが....叶わぬ夢。
どうか、出来るだけ長く抵抗し音色を奏でて、この紅葉ニ鹿を楽しませてくんなし。」
針を吐いたからか口を開くと間も変わらぬ冷たい視線を夜潮へと送る。
「紅葉ニ鹿....そっか、戦うしかねぇのか。
アンタには良くしてもらったからな...戦いたくはなかったんだが。」
夜潮は三味線を弾き鳴らすと無数の斬撃波を飛ばすがそのどれもが紅葉ニ鹿には当たらず冷笑を浮かべながら全てを回避されどんどん距離を詰めてくる。
「女は蹴らないと決めていたんだがな、アンタが相手なら仕方ない...我慢してくれよ?」
「優しいでありんすなぁ...でも、甘い...それでも花札御庭番衆に名を連ねた忍でありんしょうに。」
紅葉ニ鹿が冷たく応えると夜潮の視界が霞む。
ただ回避して舞っているだけではなく毒の粉を振り撒いている。そして雲海から吹く風は砂浜の方向に向いていた。
即ちそれは夜潮に向かって全ての毒の粉が降りかかるいる事となる。
それに気付いた夜潮は鼻を塞ぎ口を閉じると紅葉ニ鹿の背後に降り三味線を再び弾き鳴らす。
「やべぇ...吸い過ぎたか...」
目眩、吐き気、手の痺れ、視界の霞が同時に襲い掛かってくるも何とか斬撃波を飛ばし再び距離を取る。
「っ!?まだ動けるとは....流石。
それなら....わっちも本気を出さなきゃなりんせん。」
袖かと思う様な大きな翼、否、翼膜を広げると古代種の獣人独特の能力たる巨竜化を早速使いその姿は空を舞う巨大なケツァルコアトルスへと変貌する。
「...ほう...巨竜化ねぇ。」
ケツァルコアトルスとなった紅葉ニ鹿は羽ばたくと翼膜より毒の粉や爆薬を周囲に撒き散らし始める。
「ったく、古代獣人種はマジでずるいんだよなぁ...だけど姐さん、それは今の俺に対しては悪手だぜ?」
ニヤリと笑えば三味線を構えると深く深呼吸をする。
「覇ッッ!!!!」
自ら作り出した静を撃ち砕くかのごとく気合いの籠った声を上げると魂に導かれるがままに撥を取り三味線を弾き鳴らす。
音とは風、音とは振動。
その本質が、力が自らに降り注ぐ毒や爆薬を弾き返す。
まるで音の壁が球体のようになり夜潮自身を取り囲むように。
「破ッッ!!」
そして弾き返された"災"は再び夜潮が放つ声により解放される。
「ッ!?そんな、拙い!
この距離は拙いでありんす...!!
でも、わっちの任は果たしたでありんす...鶴の翁、後は。」
紅葉ニ鹿も流石に焦り口を塞ぎ毒だけ最低限の防御をすると夜潮の弾き鳴らす撥の摩擦で起爆を起こし不利と判断した紅葉ニ鹿は爆風を利用してその場を立ち去る。不穏な言葉を残して。
「...ふぅ、良かった~!!姐さんも退散してくれたぜ...」
そう言って雲海の方へと歩を進める夜潮だったが不意に爆破が起こした向こうから気配を感じた。
何か嫌な気配を。
「太夫も派手にやったもんだな...」
微かに聴こえた声に夜潮はすぐに身を構える。
「おい...冗談キツいって!」
不意の襲撃に反応が遅れる。
夜潮は声の主を視認しようとするがその姿は無く代わりに瞬時に現れた様に懐に入った傘に翁面、青い着流しを着た老爺の姿を眼にする。
「若ぇのが命を散らすなんざ、無常だなァ。
昇陽流剣術・天閃 羊雲ノ型。」
完全に反応が遅れた夜潮は腹部を大きく裂かれる。
しかしギリギリで敵を視認していた夜潮は腹筋を全力で固めて何とか命を繋ぐ。
猛禽類系獣人の特性である筋力を活かしたリスクの高い力業ではあるが。
「鶴じい...!アンタまで来んのかよ...!?」
「無論だろう...任務だ。頼むから抵抗なんざしてくれるな?」
夜潮が反撃の蹴りを着流しの老爺、松ニ鶴に放つと刀を鞘に入れて防ぎながらもそれを受ける。
「っ、やれやれな威力よ...幕の坊、下に行きたいなら行かせてやる...死体としてなァ。
昇陽流剣術・天閃 鱗雲ノ型!!」
そう飄々と呟けば瞬時に抜刀、視認出来ない剣裁きで夜潮の眼で見るに恐らくは何十何百もの刺突の剣波動を飛ばしてきたのだろう。
それは大風となり夜潮を後退させ肉を引き裂きながら砂浜の際、そして無抵抗なままで雲海へと突き落とす。
「ふぅ、逝ったな。
まぁ常識的に生きてはおらんだろ。」
そう静かに言い残すと松ニ鶴は刀を納め誰も居なくなった雲海ヶ浜を去る。
そこは昇陽と下界を結ぶ門の一つ。
遥かなる雲海の下に広がるのは獣界の真なる大地...だが白い闇そのものたる雲海と乱気流の中を渡る筋力が無ければ下には辿り着けない。
昇陽が"天然の鎖国"と呼ばれる所以である。
だが、命を狙われている夜潮はなりふり構って居られず自身の筋力と飛行能力を信じて浜へと降り立つ。
「...浜には着いたが、雲海まではまた距離があるんだよなぁ。」
と、呟いた矢先に夜潮の頭上を大きな翼影が舞い自身を遮る様に降りてくる。
「嗚呼、悲しいでありんす...」
悲哀を謳い上げる声だがその声にはどこか冷たさを感じる。
大きな翼を折り畳みながらも豪奢な着物を舞わせ女は鉄扇を開き砂地を気にせずに踊る。
「姐さん....アンタが俺を始末する刺客かよ...。」
その言葉に何も言わずにただ舞いながら夜潮を見遣る女。
そして不意にフッと息を吹くと無数の小さな針が夜潮目掛けて飛んで来る。
「...見えてるぜ、姐さん。そんなんじゃ今の俺は死んでやれねぇんだ。」
三味線を弾き鳴らすと音色は真空の刃となり自身に襲い掛かろうとした6本の針を叩き落とし追撃を与えようとするがそれは舞う様な動きで回避されるも着物の一部を裂く。
「まぁ。三味線...残念でありんす。その音色でわちきも舞いたかったでありんすが....叶わぬ夢。
どうか、出来るだけ長く抵抗し音色を奏でて、この紅葉ニ鹿を楽しませてくんなし。」
針を吐いたからか口を開くと間も変わらぬ冷たい視線を夜潮へと送る。
「紅葉ニ鹿....そっか、戦うしかねぇのか。
アンタには良くしてもらったからな...戦いたくはなかったんだが。」
夜潮は三味線を弾き鳴らすと無数の斬撃波を飛ばすがそのどれもが紅葉ニ鹿には当たらず冷笑を浮かべながら全てを回避されどんどん距離を詰めてくる。
「女は蹴らないと決めていたんだがな、アンタが相手なら仕方ない...我慢してくれよ?」
「優しいでありんすなぁ...でも、甘い...それでも花札御庭番衆に名を連ねた忍でありんしょうに。」
紅葉ニ鹿が冷たく応えると夜潮の視界が霞む。
ただ回避して舞っているだけではなく毒の粉を振り撒いている。そして雲海から吹く風は砂浜の方向に向いていた。
即ちそれは夜潮に向かって全ての毒の粉が降りかかるいる事となる。
それに気付いた夜潮は鼻を塞ぎ口を閉じると紅葉ニ鹿の背後に降り三味線を再び弾き鳴らす。
「やべぇ...吸い過ぎたか...」
目眩、吐き気、手の痺れ、視界の霞が同時に襲い掛かってくるも何とか斬撃波を飛ばし再び距離を取る。
「っ!?まだ動けるとは....流石。
それなら....わっちも本気を出さなきゃなりんせん。」
袖かと思う様な大きな翼、否、翼膜を広げると古代種の獣人独特の能力たる巨竜化を早速使いその姿は空を舞う巨大なケツァルコアトルスへと変貌する。
「...ほう...巨竜化ねぇ。」
ケツァルコアトルスとなった紅葉ニ鹿は羽ばたくと翼膜より毒の粉や爆薬を周囲に撒き散らし始める。
「ったく、古代獣人種はマジでずるいんだよなぁ...だけど姐さん、それは今の俺に対しては悪手だぜ?」
ニヤリと笑えば三味線を構えると深く深呼吸をする。
「覇ッッ!!!!」
自ら作り出した静を撃ち砕くかのごとく気合いの籠った声を上げると魂に導かれるがままに撥を取り三味線を弾き鳴らす。
音とは風、音とは振動。
その本質が、力が自らに降り注ぐ毒や爆薬を弾き返す。
まるで音の壁が球体のようになり夜潮自身を取り囲むように。
「破ッッ!!」
そして弾き返された"災"は再び夜潮が放つ声により解放される。
「ッ!?そんな、拙い!
この距離は拙いでありんす...!!
でも、わっちの任は果たしたでありんす...鶴の翁、後は。」
紅葉ニ鹿も流石に焦り口を塞ぎ毒だけ最低限の防御をすると夜潮の弾き鳴らす撥の摩擦で起爆を起こし不利と判断した紅葉ニ鹿は爆風を利用してその場を立ち去る。不穏な言葉を残して。
「...ふぅ、良かった~!!姐さんも退散してくれたぜ...」
そう言って雲海の方へと歩を進める夜潮だったが不意に爆破が起こした向こうから気配を感じた。
何か嫌な気配を。
「太夫も派手にやったもんだな...」
微かに聴こえた声に夜潮はすぐに身を構える。
「おい...冗談キツいって!」
不意の襲撃に反応が遅れる。
夜潮は声の主を視認しようとするがその姿は無く代わりに瞬時に現れた様に懐に入った傘に翁面、青い着流しを着た老爺の姿を眼にする。
「若ぇのが命を散らすなんざ、無常だなァ。
昇陽流剣術・天閃 羊雲ノ型。」
完全に反応が遅れた夜潮は腹部を大きく裂かれる。
しかしギリギリで敵を視認していた夜潮は腹筋を全力で固めて何とか命を繋ぐ。
猛禽類系獣人の特性である筋力を活かしたリスクの高い力業ではあるが。
「鶴じい...!アンタまで来んのかよ...!?」
「無論だろう...任務だ。頼むから抵抗なんざしてくれるな?」
夜潮が反撃の蹴りを着流しの老爺、松ニ鶴に放つと刀を鞘に入れて防ぎながらもそれを受ける。
「っ、やれやれな威力よ...幕の坊、下に行きたいなら行かせてやる...死体としてなァ。
昇陽流剣術・天閃 鱗雲ノ型!!」
そう飄々と呟けば瞬時に抜刀、視認出来ない剣裁きで夜潮の眼で見るに恐らくは何十何百もの刺突の剣波動を飛ばしてきたのだろう。
それは大風となり夜潮を後退させ肉を引き裂きながら砂浜の際、そして無抵抗なままで雲海へと突き落とす。
「ふぅ、逝ったな。
まぁ常識的に生きてはおらんだろ。」
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