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序奏、運命の狂い
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二年前 廻玉ノ月
昇陽
「陰陽頭・鴨光角、アンタ...帝に怨まれてンぞ?」
かつて桜ニ幕と名乗りヒビ割れた痩男の面に顔を隠した夜潮が陰陽頭たる陰陽師、鴨光角の烏帽子を蹴り抜く。
「はて、それに付けましても斯様な仕打ちをされる覚えなど私にはありませぬな。」
自分の置かれている状況などお構い無し、といった声色で茶を啜るもその眼は一切笑っておらずただ突き刺すように桜ニ幕を見据える。
「喰えねぇ狐野郎だ...まぁ別にそんな話はどうでもいいし俺も不本意だけどさ、ちょっと抹殺させてくれよ。」
「ほうほう、さすれば...」
光角は何かを唱えると予備動作もなしに飛び上がり狩衣の袖をたなびかせながら自身の羽根を5枚、桜ニ幕に向けて払い飛ばす。
「暗器?毒?いや、分からないな。」
桜ニ幕は回し蹴りをして起こした風圧で5枚の羽根を触れずに散らそうとするが羽根はひらりと意思を持つかのように避けて桜ニ幕を囲う五芒星を成して舞い落ちる。
「っ!?陰陽の術式!?冗談じゃねぇ!」
結界、呪縛、封印、多岐に渡る陰陽道を知り尽くした光角の術をまともに受けるのは危険極まりなく絶対に回避しなくてはならない為バックステップを踏んだと同時に光角が小さく囁くように唱える。
「消破塵滅壊却、急急如律令!」
その瞬間、屋敷の床から天井までが囲った五芒星そのままの形の白い光の柱が立ち瞬く間に消え柱が立った跡を見ると天井には青空、床には大地を貫き遥か下に広がる海が見えていた。
「はっはっはっは...まぁ流石に躱しましたな。
ですが、次は絶対に避けられませんぞ?
それでもまだ私を狙うおつもりか?」
桜ニ幕とて一流の暗殺者、日和ったわけではない。
だが彼の脳内に響く声、魂に伝わる己が意思とも呼べるモノが叫ぶ。
"終わりは此処ではない"
"此奴は殺してはならない"
と。
「...アンタには敵わないな、降参だよ。
あー、上には何つっとこうかなぁ。」
その声に従い構えを解くと殺気の消失を感じた光角もその場に座り再び茶を啜る。
「ならば良かった...して、貴殿は夜潮殿ではないか?
私の眼は誤魔化せませぬぞ。」
「げっ!?分かってんのかよ...」
桜ニ幕は面を外し夜潮として素顔を明かす。
「本来なら御法度なんだけどな、バレた以上は隠す必要もないんでね。じゃ、俺はそろそろ...」
「まぁ夜潮殿、善いモノを貴殿に与えたいのだが」
と、夜潮が任務失敗の報告をしに行こうとすると光角はその足を止めさせる。
なんだよ、と振り返ると光角は魔導三味線を札から用意する。
「これは世にも妙なる三味線でしてな...陰陽道ともアディンの魔術とも違う法を用いている魔導具のようなもの。
...なのだが、何故か先程より貴殿に共鳴しているようなのだが戦利品として受け取らぬか?」
「へぇ、いいじゃん。三味線か、実は縁があるし願ったり叶ったりだ!私物にしちゃおうかな~。」
夜潮にとって三味線とは遠からぬ縁を感じる楽器のようでそれを手にした夜潮は光角の屋敷を後にする。
光角の弟子、雷雅がその様子をこっそりと跡をつけ見ているとは知らずに。
御所に続く裏道を歩く夜潮だが何故だか気持ちがソワソワしている。
自身の魂が求めるような声、内心の自分の声、なんとも説明しがたい自身の心が騒ぎ出す。
"三味線を弾き鳴らす旅がしたい"
"帝の私兵など辞めたい"
後者については願ったり叶ったりではあるが前者については三味線を手にしたからだろうか?
過去に引いた事があるならか、説明は付かない。
そして花札御庭番衆しか入れぬ隠し扉を開き御所にある離宮へと足を踏み入れると中で待つ桐ニ鳳凰に声を掛ける。
「大将、悪い。鴨光角の暗殺は成功したと思ったらありゃ式神だったわ。」
肩を落としながらも偽りの報告をしつつ続ける。
「んでさ、コレ!こんな三味線を手に入れちまったんだけど欲しくなったんだわ。貰っていいか?」
明るく笑うように喋っているが夜潮自身の心が何故か自問する。
俺は何故三味線をこうまで欲しがっているのか、と。
それまで無言で聞いていた桐ニ鳳凰が漸く口を開く。
「三味線など好きにせよ。
だが、貴様は任務を失敗した....暗殺の失敗は仕方ない。それよりも...式神という事は貴様の姿、声は見聞きされた筈。
我ら御庭番衆は影にして霧....見られしは罪、知られしは罪....貴様も分かっていよう?
故に...さらばだ。」
夜潮は深々と溜め息を吐く。
「そうだよねぇ、やっぱりそうなるよねぇ...」
桐ニ鳳凰は分身体だったのか不意に姿を煙に変えて消滅する。
恐らくは暗殺命令を出しに行ったのだろう。
何にせよ早くに昇陽を出るしか自らが助かる道はないと判断した夜潮はすぐに御所を飛び出して翼を広げ直近の昇陽の脱出ルートである雲海ヶ浜を目指し飛び立った。
昇陽
「陰陽頭・鴨光角、アンタ...帝に怨まれてンぞ?」
かつて桜ニ幕と名乗りヒビ割れた痩男の面に顔を隠した夜潮が陰陽頭たる陰陽師、鴨光角の烏帽子を蹴り抜く。
「はて、それに付けましても斯様な仕打ちをされる覚えなど私にはありませぬな。」
自分の置かれている状況などお構い無し、といった声色で茶を啜るもその眼は一切笑っておらずただ突き刺すように桜ニ幕を見据える。
「喰えねぇ狐野郎だ...まぁ別にそんな話はどうでもいいし俺も不本意だけどさ、ちょっと抹殺させてくれよ。」
「ほうほう、さすれば...」
光角は何かを唱えると予備動作もなしに飛び上がり狩衣の袖をたなびかせながら自身の羽根を5枚、桜ニ幕に向けて払い飛ばす。
「暗器?毒?いや、分からないな。」
桜ニ幕は回し蹴りをして起こした風圧で5枚の羽根を触れずに散らそうとするが羽根はひらりと意思を持つかのように避けて桜ニ幕を囲う五芒星を成して舞い落ちる。
「っ!?陰陽の術式!?冗談じゃねぇ!」
結界、呪縛、封印、多岐に渡る陰陽道を知り尽くした光角の術をまともに受けるのは危険極まりなく絶対に回避しなくてはならない為バックステップを踏んだと同時に光角が小さく囁くように唱える。
「消破塵滅壊却、急急如律令!」
その瞬間、屋敷の床から天井までが囲った五芒星そのままの形の白い光の柱が立ち瞬く間に消え柱が立った跡を見ると天井には青空、床には大地を貫き遥か下に広がる海が見えていた。
「はっはっはっは...まぁ流石に躱しましたな。
ですが、次は絶対に避けられませんぞ?
それでもまだ私を狙うおつもりか?」
桜ニ幕とて一流の暗殺者、日和ったわけではない。
だが彼の脳内に響く声、魂に伝わる己が意思とも呼べるモノが叫ぶ。
"終わりは此処ではない"
"此奴は殺してはならない"
と。
「...アンタには敵わないな、降参だよ。
あー、上には何つっとこうかなぁ。」
その声に従い構えを解くと殺気の消失を感じた光角もその場に座り再び茶を啜る。
「ならば良かった...して、貴殿は夜潮殿ではないか?
私の眼は誤魔化せませぬぞ。」
「げっ!?分かってんのかよ...」
桜ニ幕は面を外し夜潮として素顔を明かす。
「本来なら御法度なんだけどな、バレた以上は隠す必要もないんでね。じゃ、俺はそろそろ...」
「まぁ夜潮殿、善いモノを貴殿に与えたいのだが」
と、夜潮が任務失敗の報告をしに行こうとすると光角はその足を止めさせる。
なんだよ、と振り返ると光角は魔導三味線を札から用意する。
「これは世にも妙なる三味線でしてな...陰陽道ともアディンの魔術とも違う法を用いている魔導具のようなもの。
...なのだが、何故か先程より貴殿に共鳴しているようなのだが戦利品として受け取らぬか?」
「へぇ、いいじゃん。三味線か、実は縁があるし願ったり叶ったりだ!私物にしちゃおうかな~。」
夜潮にとって三味線とは遠からぬ縁を感じる楽器のようでそれを手にした夜潮は光角の屋敷を後にする。
光角の弟子、雷雅がその様子をこっそりと跡をつけ見ているとは知らずに。
御所に続く裏道を歩く夜潮だが何故だか気持ちがソワソワしている。
自身の魂が求めるような声、内心の自分の声、なんとも説明しがたい自身の心が騒ぎ出す。
"三味線を弾き鳴らす旅がしたい"
"帝の私兵など辞めたい"
後者については願ったり叶ったりではあるが前者については三味線を手にしたからだろうか?
過去に引いた事があるならか、説明は付かない。
そして花札御庭番衆しか入れぬ隠し扉を開き御所にある離宮へと足を踏み入れると中で待つ桐ニ鳳凰に声を掛ける。
「大将、悪い。鴨光角の暗殺は成功したと思ったらありゃ式神だったわ。」
肩を落としながらも偽りの報告をしつつ続ける。
「んでさ、コレ!こんな三味線を手に入れちまったんだけど欲しくなったんだわ。貰っていいか?」
明るく笑うように喋っているが夜潮自身の心が何故か自問する。
俺は何故三味線をこうまで欲しがっているのか、と。
それまで無言で聞いていた桐ニ鳳凰が漸く口を開く。
「三味線など好きにせよ。
だが、貴様は任務を失敗した....暗殺の失敗は仕方ない。それよりも...式神という事は貴様の姿、声は見聞きされた筈。
我ら御庭番衆は影にして霧....見られしは罪、知られしは罪....貴様も分かっていよう?
故に...さらばだ。」
夜潮は深々と溜め息を吐く。
「そうだよねぇ、やっぱりそうなるよねぇ...」
桐ニ鳳凰は分身体だったのか不意に姿を煙に変えて消滅する。
恐らくは暗殺命令を出しに行ったのだろう。
何にせよ早くに昇陽を出るしか自らが助かる道はないと判断した夜潮はすぐに御所を飛び出して翼を広げ直近の昇陽の脱出ルートである雲海ヶ浜を目指し飛び立った。
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