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黒い獅子は国家魔導師に拾われたようです

始まり

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とてつもなく唐突だが、僕は半獣だ。そして、僕という一人称的に男かと思った人も多いいだろうが、残念だが、。いわゆるボクっ娘ってやつだ。まずは僕の生い立ちから話そうか。僕は物心ついた時には既に孤児だった。孤児院で幼少期を過ごし、一般的な社会人として世間様に迷惑かけない様な大人になるつもりで今日まで生きてきた。だが、僕は孤児院の職員に忌み嫌われていた。
理由は簡単、僕が半獣だから。当時世間は半獣や、竜人といった亜人を忌み嫌う習慣があったらしい。普段人間と区別がつかない僕は半獣だとバレるまで普通に生活していた。だがある日─
「おいお前!お前半獣なんだろ!」
「……は?何を言ってんだよ。」
「半獣はな!偏った食生活をしているんだぞ、現にお前も肉しか食ってないじゃないか!」
─朝食時に孤児院で餓鬼大将ポディションの奴が大声で僕を半獣だと言ったのだ。確かに、半獣は肉食系のと草食系で分かれる。僕の場合は肉食。野菜は食べようとしたが、たべたら戻してしまうので食べようにも食べれない。肉以外も同様だ。それを見てたのだろう。だが、ここで本当の事を言ってしまったら孤児院を追い出される可能性がある。
「確かに僕は肉しか食べていない、だからといって偏食だって可能性も無きにしも非ずだよ。何でもかんでも半獣と決めつけるのは良くないんじゃないか?」
「いんや!お前半獣だ!半獣!半獣!」
「「半獣!半獣!半獣!半獣!」」
(五月蝿い…!黙れ!)
「うるせぇんだよ!」
突然僕の中で何かが弾けた 。それと同時に僕は公の場で獣化してしまったのだ。足元が突然凍り、僕の手足が獣のそれへと変わっていく、耳も元の耳の場所の物はなくなり、新たに黒い獣耳が生えた。そして特徴的な黒い尾まで生えてきた。
「ひっ…!や、やっぱり半獣じゃないか!」
「ガルルゥ…!」
僕の後ろ手には孤児院の職員が麻酔銃を構えている。撃たれるんだろうな。孤児院に半獣がいると世間に知られたら大変なことだし。
「グガァァァア!」
「うわあああ!来るな化け物!」
やはり獣になると自制があまり効かない。僕は思わず子供を1人引っ掻いてしまった。少し引っ掻いただけのつもりだったが出血多量で死んでしまった。そしてもっと恐ろしいのはこれからだ。僕はその血を見て唐突にその子供にかぶりついたのだ。死んだと本能で判断したのであろう。普通だったら考えられない。そして僕は子供を一人殺め、そして喰らったのだ。当然孤児院の職員は麻酔銃の引き金を引いた。麻酔弾が僕の胸に当たり、僕は意識を失った。
─目が覚めた時には僕は孤児院の地下牢獄に入れられていた。当たりは上の孤児院とは比べ物にならない位酷いものだった。手足は鎖で繋がれていて身動きが取れないので何もすることが出来ない。
コツコツコツ…
誰か来る、しかも数人で。来た所で何されるか見当がつかないので少し怖い。
「老師様、此奴で御座います。この獣畜生をどう処分致しましょうか。」
「うむ…流石にこの姿では職員の人々もやりずらいだろう、一層の事獣にしてしまおう。」
「流石でございます老師様。」
半獣よ、真の姿に戻れアインズトルペーゼ
何が起きてるんだ…身体が思うように動かない…意識が遠のいていく…やだ…。
僕の意識はそこで一時的に終わった。
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