黒獅子ですが何か?だから問題でも?

ななせ

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黒い獅子は国家魔導師に拾われたようです

出会い

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さっき起こった事をおさらいしよう。僕は獣化し、一人殺めてそして喰らった。それを見た孤児院の職員は僕を地下牢獄に閉じ込め、老師は僕に完全獣化の魔法をかけた。
僕は自分の体が今は思うように動かない。正確には自制が効かない状態だ。意識は一時は失ったが今はある様だ。牢獄の柵はとても硬いので当然僕には破壊できないはず。だからここに入れば他の人には危害を加える可能性がない事になる。
(良かった…いや、良くはないが皆を傷付けるよりかはまだマシか…。)
あの事件から一週間が経とうとしているが、あれ以来人は来ていない。当然食料もないので僕は一週間も何も食べていない。
最後の食事がまさか人の肉だとは誰も予想はしなかっただろう。僕は極力体力を使わないように静かに寝ていた。そしてよく考えるのだ。僕は今どのような姿なんだろか、僕は何時になったら自由になれるのか。親は僕を何故捨てたのか…。
考え事をしていると誰かが階段を降りる音がしたそして、誰かの話し声も聞こえた。
「いやー!まさか此処に居たとはねー黒獅子が。是非見てみたいものです~!」
「ほ、本当に宜しいのですか?いくら国家魔導師アークヴィザードの貴女だからといってもあれは危険すぎます!」
「大丈夫だ、最悪此奴が駄目でも俺が居る。」
「よっ!流石私の相棒パートナー!」
一人はすぐに分かる、孤児院の職員だ。だが、他の二人が一体何者なのかが全く分からない。
「此処でございます、この獣を一体どうするので?」
「まあ、とりあえずその子をよく観察しないと、それから決めるわ。」
3人は僕が閉じ込められている所の前に立った。
「ガルル…!がハッ…ハァ…ハァ…。」
恐怖心からか自然と威嚇したが、鎖で繋がれているので何も出来ずに終わった。
「…成程ね、大丈夫だよ黒獅子さん。私達は貴方の味方。何も危害は加えないと誓うよ。」
私の前に立った女性はそう静かに言った。
「名は?」
大きな守護職ガーディアンが聞いたが、残念ながら僕には名前が無い。いや、残念かどうかも今では判らなくなっている。実際名前がなくたって今日まで生きていた訳だし。
「名前ですか?こんな獣畜生に名前等ありませんよ。」
孤児院の職員は嘲笑しながら答えた。
「グガァァァア!ガァァァァ!」
それに反応して僕は吼えて攻撃しようとする。すると、鎖が外れたのだ。柵は流石に外れなかったが自分でも鎖が外れるとは思わなかった。
「うわぁ…これが黒獅子の力…凄まじいものですね。」
「俺こんな強靭な力を持っているなんて聞いてないぞ。大丈夫なのか?」
「大丈夫、それと私決めました。この子を引き取ります。」
「はぁ!?お前こんな猛獣どうやって育てるんだよ!」
「職員さん、お金は払うので特上のお肉を買ってきてくれませんか?」
「わ、分かりました。」
職員は駆け足で買いに行った。
「…さて、黒獅子さん少し話をしましょう。まずは私の名前を教えないとですね。私の名はフィーナシア・ランドグール、国家魔導師をしています。気軽にフィーって呼んでね。今回は貴方を保護しに来ましたの。だから怖がらなくたっていいですからね♪あ、ほら!グランも自己紹介して!」
「お、おう。グラン・サラザールだ。国家守護職アークガーディアンをやっている者だ。」
二人は私に自己紹介してきた。だが、それではいそうですかよろしくってなる程私はそんなんじゃない。
「まあ、そのうち慣れていってもらおう。ね、グラン?」
「う、うむ。」
悪い人ではないという事は何となくだが察した。獣の本能だろうか。
「グルルル…!」
「あはは…。あ、武器とか持ってないよ~?ほんとに何もしないって。」
彼女は両手をひらひらさせて何も持ってない事を示した。
僕だって本当は分かってるんだこの人達が本当に悪い人じゃないって事をね。頭ではわかってるんだが…。
そうこうしてたら職員が大量の肉を持って帰ってきた。
「お待たせいました!早くこれを!」
「おー!ありがとうございます~!今すぐにでもあげたいところですが…職員さん、入ってますよこれ。解毒しときますね。」
フィーという女性から笑顔が消えた。
毒よ消え去れポイズンロスト
「フィー、良く分かったな。」
「私を誰だと思ってるのですグラン、私はこれでも国家魔導師の中でも最高ランクですのよ。馬鹿にしないで頂きたいわ。たとえ化物だろうがどんな者でも罪のないものを殺してはいけないということを何故わからないのですかね。」
先程のフワフワとした感じとはガラリと変わり冷徹で何もかも見透かす真の国家魔導師であった。
「で、ですが此奴は孤児院の子供を喰らったのですよ!?それも十分罪ではないですか!」
職員はとても動揺しながら言い訳をした。
「それは彼女のことをその貴方達がが虐めたからでしょう。亜人だからといって差別をする事なんて言語道断です。許されるはずがありません。亜人だろうが何だろうが生きる権利があります。」
「もうよせフィー、後は俺に任せろ。お前はそいつに食べさせてやれ。」
「悪いわねグラン、頭に血が上ってたみたい。」
フィーは冷静になりさっきのフワフワとした感じに戻った。
「よし、早く黒獅子さんにお肉あげないとですね。」
そう言ってフィーは肉を持って僕の柵のそばにまで来た。
正直もう限界だ、空腹でどうにかなりそうだ。ナイフで食べやすいように切ってくれて手に肉を持って僕の前に差し出した。
「はい!出来ましたよ~。お願いですから手は食べないでくださいよ~?」 
僕はよろよろと起き上がり、柵の間から出ている白くて小さな手を食べない様に手の上にある肉を食べた。
「!黒獅子さん!良かったぁ~。」
一時は本当に警戒していたが、愚行だった様だ。この人達だったら大丈夫。そう獣の本能も言っている気がする。
この日から私はフィーナシア・ランドグールとグラン・サラザールに引き取られることになったのだ。
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